女子の高校生数十人に聞いてみた。100%が自分のことを「うち」と言う。東京都内にある、富裕階層、高偏差値の生徒が通う女子高校だ。数人は、親に「わたし、といいなさい」と直されるという。多くは、「わたし」とか「わたくし」は、なんかいや、絶対言わない、普通言わない、あり得ない、という感想を述べる。他に言い方がないから「うち」が一番いい。言いやすいし。「自分」と言っていたが、違和感があった。「うち」がいい。これが主な理由だ。


ここから先は確証のない与太話。


女子の一人称を何というかというのは結構面白い。若い女子でない俺が考えると、「わたし」「あたし」「わたくし」・・・。このくらいしかない。使われるているのを聞いたことがある一人称は「自分」「僕」「俺」「あてし(と聞こえる)」「あてくし(と聞こえる)」「うてくし(と聞こえる)」「あっし(と聞こえる)」など。


自分の名前を一人称に使うことも多いが、特に親しい間柄や家族の間でだけであろう。社会では使えない。使っている男や女は、場所をわきまえない甘ったれて未熟で馬鹿な人物という印象を与えてしまう。


これに対し、男子は「俺」「自分」「僕」。社会人語としての「わたし」「わたくし」。そのほか「拙者」「みども」「やつがれ」「我輩」「おら」「小生」など。


女子は、社会人に要求される丁寧とされる言葉使いしか一般に使うことが認められていない。そのため、自分を「わたし」と言うと、しっくりこない照れを感じるような気分があるのだろう。「社会語」ではない、自分のありのままを示す言葉が、通常容認されてきた言葉にはない。


親しい間柄で使える一人称が、「わたし」か、自分の名前だけというのは不便だ。そこで、おそらく関西弁経由か、ヤンキー言葉の「うちら」から自然に流用されて、「うち」が定着してきた理由だと思われる。


俺の独自調査にようると、「うち」の使用限界は23歳ぐらいにある感じがする。それより上の女子はあまり使わないのでは?今大学4年の女子より下から使う率が高いように感じる。単に社会人になると使わない、というだけかも知れないが。俺のガール・フレンドたちが調査対象だ。ごく狭い範囲での調査です(w


下は、4歳児も使っている。これには愕然とする。小学生も中学生も使っている。もう、東京圏で、あっという間に女子の一人称として定着するだろう。


言葉の経済原則にも合致している。同じ意味内容を示す頻繁に使われる語は、短いものの方がより使われる、ということだ。「わたし」「あたし」より「うち」のほうが短い。音の意味としても、内側の「内(うち)」、家庭を示す「家(うち」にも通じ、使っている気持ちにぴったりしているように思う。


関西弁の東京弁への流入をことさら言挙げして非難する一部の人々もいるが、俺はそのようなことを言いたいわけではない。俺、拙者、みども、我輩、小生、やつがれとしては、自覚して使おうと思う。だから関西弁起源の「ど真ん中」はつかわない。東京言葉の「まん真ん中」という言葉の方が柔らかくて好きだから、意識して愛用する。そういうことだ。