エターナル・サンシャイン | 綿菓子屋映画雑記帳

エターナル・サンシャイン

ハピネット・ピクチャーズ
エターナル・サンシャイン

 

 

原題   Eternal Sunshine of the Spotless Mind
公開年  2004年
邦題   エターナル・サンシャイン
ジャンル Romance / Drama / Comedy

監督   Michel Gondry
脚本   Charlie Kaufman
配役          役名            役柄
Jim Carrey      Joel Barish        会社員・イラストレーター(?)
Kate Winslet     Clementine Kruczynski 書店店員
Tom Wilkinson    Dr. Howard Mierzwiak  Lacuna inc.代表
Kirsten Dunst    Mary             Lacuna inc.受付嬢
Mark Ruffalo     Stan             Lacuna inc.専任技師
Elijah Wood      Patrick           Lacuna inc.助手
David Cross     Rob             Joelの友人
Jane Adams     Carrie            Robの妻
Thomas Jay Ryan  Frank           Joelの隣人
Deirdre O'Connell  Hollis            Howardの妻

評価  5

感想

愛さずにはいられない真実の愛に感動できました。

相手を忘れても、忘れてもその相手を愛してしまうなんて考えられません。かなり図太い鉄製の赤い糸です。

本当にそんな愛があるとは思えない(経験したことはない)でのすが、だからこそ、最高のファンタジー映画だと思いました。

 
映画館では早くから予約していたので中央の座席で観ていました。

上映が終わって明るくなると、前の席にいたカップルが眠そうな顔で半分自嘲気味に後ろを振り返っていました。
きっと映画のペースに巻き込まれて訳がわからなくなって物語について行けなくなったんだろうと思います。ふたりは他の観客の表情を探るような目つきで見回していました。自分たちと同じように宙に浮いたまま梯子を外され退屈してしまった観客を捜しているかのようでした。
パンフレットは図解して説明しているものの内容は中途半端で理解の助けになるとは思えません。
あのカップルにはこの映画について懇切丁寧に時間をかけて教えてあげたいと思ったのですが、そんな差し出がましいことは、映画館で、ましてや見ず知らずの他人には出来ません。

ただ自信たっぷりで彼らの視線に応えるだけ。もちろん視線を合わせてはもらえませんでしたが。

 
そこでここに書き連ねることにしました。

以前は Movie scribble  で映画の記録をつけていたのですが、容量の関係かデータをアップできなくなり、一年以上休んでいました。
これを機会にボチボチこのブログを充実させたいと思っています。

あらすじ (時間軸に沿って再構築)

6JoelがClementineと初めて会ったのはRobの友人たちのピーチ・パーティだった。場所はロング・アイランド島北端の夏のリゾート地Montaukの砂浜。
29パーティを楽しめないJoelは砂浜に降りる階段に座って一人でバーベキューを食べていた。Clementineもパーティに馴染めず波打ち際で佇んでいる。赤い服が目立った。
ClementineからJoelに話しかける。その場ですっかり意気投合した二人はみんなが帰ってからも日の暮れる砂浜で遊び続けた。
Clementine : What do we do?
Joel : Enjoy it.
海の別荘は季節外れで誰も住んでいない。Clementineは別荘に無断で入り冷蔵庫やワインセラーなどを勝手に物色する。Joelは制止しながらも渋々付き合う。
段々にエスカレートして二階に登っていったClementineの奔放さに怖じ気づいたJoelは彼女を置いて先に家に帰った。



27Joelはナオミと同棲していたのだが、Clementineを忘れられなかった。JoelはClementineの勤め先の書店に行って一人で帰ったことを謝り、改めてやり直そうと交際を申し込む。
内気なJoelと気まぐれで活発なClementineの同棲生活が始まる。



15二人でボストンにあるチャールズ川の氷面に寝転んで眺める夜空の星。
19ドライブインシアター。
23雪のMontauk。
25ニューヨークをパレードするサーカスの象の行列。
10ボストンの蚤の市。

やがて倦怠期を迎える。子供を生みたいClementineに対し、Joelは消極的で、小さな諍いのタネが生まれる。

12二人の間の亀裂は徐々に広がる。Clementineには心を開かないJoelがもどかしい。
対話のない食事。Clementineは一人で夜の街を徘徊するようになる。

8夜中の3時に帰り、車をぶつけても無責任なClementineをあばずれとなじるJoelに、Clementineはついに切れて家を出て行く。
Clementine : I'm fucking crawling out of my skin. I should've left you at the flea market.



4数日後、バレンタインディ3日前、Joelが連絡しようにもClementineは直ぐに電話番号を変えていた。Joelはプレゼントを買い求めて謝りに書店へ行くが、JoelはClementineに完全に無視される。Clementineはすでに若い恋人を作っていた。ClementaineはJoelを全く知らない風を装う。
Joelは途方に暮れてRobに相談するが、Robから恐ろしい事実を教えられる。Lacuna inc.からの手紙を読まされる。
2ClementineはJoelの記憶を消し去っていた。ClementineはJoelを忘れた。自分を知らない。抹消された自分。泣き崩れるJoel。



5翌朝、JoelはLacuna inc.を訪ね説明を求める。Howard医師から直接Clementineが記憶の消去を望んだと聞かされる。信じられないが記憶の除去は実際に行われていた。


悩んだ末、Joelは同じように自分からClementineの記憶を消してくれと頼む。
記憶の消去は順番待ちなほど盛況だがHoward博士はJoelの特例を認めてすぐに許可する。
JoelはClementineとの思い出の品をすべてゴミ袋に入れてLacuna inc.へ持って行く。写真、服、贈り物、思い出の品・・・。「すべてを忘れて新しい人生を始める」ために。


Joelは博士にClementineとの出会いから別れまですべてを話す。それはテープに録音される。
Lacuna inc.では思い出の品を一つずつを取り出してJoelの脳内の反応を写し出し、Clementineの記憶箇所を辿って関連性を地図に描いていく。



3その夜、バレンタインディ前夜、Joelの部屋で記憶除去の施術が行われる。8時半にJoelは睡眠薬を飲んで深い眠りにつく。近くで待機していたStanとPatrickは直ぐにJoelの部屋に機器を設置して記憶の除去作業を始める。

7Joelの記憶が逆回転で映し出される。Joelは過去の自分を見ることになる。
夢の中でJoelは半分覚醒していた。Joelは現れては消えていくClementineとの愛の記憶を見せつけられる。それはけっして失いたくない貴重な宝物だったと思い知るがもう遅い。記憶の除去はひとつずつ進行していく。喪失していく。
9夢の中でJoelは家を出て行ったClementineを追いかけるがすぐに見失う。
眠っているJoelだがStanとPatrickの会話は聞こえていた。PatrickはClementineの記憶除去施術も手伝っていて、眠っているClementineに一目惚れし、内緒でClementineのパンティを盗んでいた。

11Joelの記憶除去作業は自動消去モードで単調に進む。
StanはMaryを呼び出す。MaryはPatrickを無視する。Patrickは女性にもてないのが悩みだった。
13PatrickはClementineに電話する。Clementineの新しい若い恋人とはPatrickだった。
PatrickはClementineをTangerineと呼ぶ。それはJoelとClementineの二人だけの愛称だった。Joelは秘密を知っているPatrickに嫉妬するがどうしようもない。Joelは眠っていた。



厭な思い出でしかないからJoelの記憶を消したはずなのにClementineは満たされない日々を送っていた。黒い雲のように溢れ出る不安のその理由がわからなかった。Clementineは半ばパニック状態になっていた。Clementineは折良く電話してきたPatrickに助けを求める。



14ベッドの中でClementineは子供の頃ブスだと劣等感を抱いていたとJoelに話す。大切なClementineの記憶。
Clementine : Joely, don't ever leave me.
Joel : You're pretty... you're pretty... pretty...
Joelは記憶除去作業を中止させたいが外の人間に伝える術はなかった。
Joel : Mierzwiak! Please let me keep this memory, just this one.
Clementineの記憶が消えて行く。自分から望んだこととは言え一大事だった。何とかClementineの記憶を守らなければ。失いたくない。しかし、Joelがどんなに大声で叫んでも外の人間に聞こえない。Joelは眠っていた。


16Joelは夢の中でClementineにすがりつく。一緒に逃げ出す。駅、友人の家、どこへ行っても二人でいた記憶は消えていく。空白が広がる。Lacuna inc.の博士に中止してくれと頼むが博士には聞こえない。



PatrickはJoelが捨て去った思い出の品を頼りにClementineの気をひこうと懸命に頑張るのだが、Clementineの心を得ることはできなかった。Clementineの欠けた心を満たすことはPatrickには不可能だった。
ClementineはPatrickをチャールズ川に誘い一緒に氷面に寝ころぶが、Patrickが相手ではClementineが望んでいた夜空を見ることはできなかった。
ClementineにはJoelと氷面で星空を見た覚えはない。記憶は抹消されていた。それでもClementineの見たいのはあのJoelと一緒に見た冬の氷の上のでたらめな星座の浮かぶ星空以外にあり得ないとClementineは感じ取っていた。
Clementineの心は彷徨っていた。キーワードは、Montauk、チャールズ川・・・。
Clementineは忘れた何かを探すために一人でMontaukに向かうだろう。季節外れの誰もいない何もないMontaukこそClementineの大切な場所。そこへ行ってもClementineにその場所の意味はわからい。それでも行かなくては。



17夢の中では、JoelはClementineの提案で、Joelの子供の頃の記憶の領域にClementineを埋め込もうとする。母親にべったりくっついて離れない甘えん坊のJoelの子守としてClementineが登場する。幼児に還ってClementineを誰だかわからなくなるJoelだがClementineとの結びつきをなんとか幼児の記憶に縫いつける。

18自動モードの記憶除去作業が突然中断した。Joelは予め作成した記憶の地図から逸脱していた。Joelが地図から忽然と消えた。Maryと楽しんでいたStanは焦る。Stanの技術ではJoelの痕跡を脳の記憶域に発見することが出来ない。
StanはMaryの提案でHoward博士を呼び出す。

Howard : He's gone off the map!
Joelは必死にClementineの思い出を地図の域外に隠そうとするのだが、急いで駆けつけたHoward博士は巧みにJoelをあぶり出す。Clementineと楽しくキッチンのシンクで湯浴みしていたJoelは見つけ出され、元の記憶除去作業に連れ戻される。

20記憶の消えるスピードが増す。Joelは博士に中断してくれと頼みたいがLacuna inc.の博士の記憶も薄れつつあった。夢の中で再び訪れた博士の顔は歪んでいた。
21Joelは屈辱の記憶を慌てて思い出す。
22Joelはいじめられっ子だった子供の頃の記憶に辿り着く。Joelを守ってくれた女の子はClementine。虚しいJoelの抵抗は続く。二人だけの時間が現れては崩壊していく。
Howard博士は逃さなかった。コンサートのピアニストのような鮮やかな手つきでHoward博士はJoelを引きずり出す。Joelに隠れる術は残されていなかった。



24そんなHoward博士を優しい眼差しで見つめ続けるMaryは博士に恋をしていた。Stanは気を遣って外に出る。
26思わず博士に口づけするMaryを博士はやさしく戒める。
夜中に急に飛び出した博士を追って怪しんだ妻のHollisが飛んでくる。
Maryと抱き合う姿をHollisに目撃され博士は必死に弁解する。Maryは「誘ったのは私」と博士をかばう。
Hollisの口からは意外な言葉が飛び出す。「Howardはあなたのものだったのよ」、Maryが自分の記憶を消すまでは・・。
茫然自失のMaryは立ち去る。博士とStanはJoelの記憶除去作業を続ける。


28会社に戻ったMaryは博士の机の引き出しの奥深くから自分の告白テープを見つけ出して事実を確認した。



30JoelがClementineと初めて出会ったMontaukの砂浜。砂に埋まる記憶。あの日、Clementineを置き去りにした誰もいない海の別荘。あの時のようにClementineは勝手に別荘に入っていく。Clementineは別荘を物色する。Clementineを必死に追いかけるJoelだが、Joelの記憶の中の別荘はもろくも崩れ去ろうとしていた。二階に上がったClementineをまたも残して立ち去ろうとするJoelにClementineは「今度は行かないで」と声をかける。「最初で最後だから、さよならと言って」
Clementine : Joely? What if you stay this time?
Joel : I walked out the door. There's no memory left.
Clementine : Come back and make up a goodbye at least, let's pretend we had one... Goodbye, Joel.
どんなにClementineが愛おしくてもJoelにそこにとどまるだけの力は残っていなかった。Joelに言えるのは、
Joel : ...I love you...
だけ。

ClementineはそんなJoelにそっと声をかける。
Joelの記憶に最後に残ったのは、そのひとつの言葉だけだった。
Clementine : ...Meet me in Montauk...



31Joelの記憶除去施術は夜明けまでに無事完了した。博士とStanは急いで機器を撤去する。博士は自宅に帰り、Stanは機器を会社に返す。
先に戻っていたMaryは会社から自分の手荷物を持ち帰ろうとしていた。MaryはStanに別れを告げる。同じ過ちを再び繰り返してはいけない。苦しんだ過去を忘れたことをMaryは後悔していた。忘却はいつも前進に繋がるとは限らない。罪を忘れれば再び同じ罪を繰り返す。コマを双六の振り出しに戻してもサイコロの目は以前と同じ。
Maryは今まで記憶除去施術を行った患者のテープも同時に会社から持ち出していた。




1記憶除去施術から目覚めたJoelは気分がすぐれなかった。その理由は自分では思い当たらない。昨日と同じ朝だと思いこんでいるJoelに記憶をなくした記憶はない。いつもと同じ退屈な日々の繰り返しのはずが特に今朝は落ち着かない。自動車のドアが酷く傷ついている。Joelの記憶からドアの傷が欠落していた。隣の自動車がぶつけたのか?

Joelには今日がバレンタインディーであることが余計に忌々しく思える。会社へ出勤する電車を待っていたのだが、Joelは急に心変わりしてMontauk行きに飛び乗る。まるで心の奥底の叫び声に突き動かされるように。



季節外れの2月のMontauk。誰もいない砂浜。Joelは日記帳を取り出すが、2年分のページが破り捨てられていた。Joelは小石の小さな粒の積もり重なった砂浜の砂を掘る。海辺の別荘には誰もいない。知らない女性が波打ち際を歩いている。内気なJoelは声をかけられない。
海辺の寂れたレストランでもその女性と出会うが初対面同士で会話はない。好きになりそうな予感はするがいつものことで珍しくはない。
帰りの駅でおどけたその女性を見かけた時には軽い挨拶程度にやっと手を振るが、Joelには見知らぬ女性は近くても遠い存在だった。
電車の中でJoelは日記にその女性を描いていた。その女性は少し離れた座席に座っていた。
女性が声をかけてくる。Clementineだと自己紹介。JoelはClementineの名前で誰もが連想する歌さえ思い出さない。Clementineで思い浮かべるすべてをJoelは忘れ去っていた。Clementineは勤め先の書店や髪の毛の話などしてくるがJoelには鬱陶しい。Clementineもどこか苛ついている。二人とも心の奥深くに鋭い傷の痛みを感じているがその訳は知るよしもなかった。
日記の絵の続きを描きたいからとJoelはClementineを避ける。

駅から一人で歩いて帰るClementineをJoelは家まで送る。JoelにはそのつもりはなかったがClementineに誘われるまま部屋に上がり込んで酒を飲む。親密さは増すがまだJoelは深入りするつもりがない。落ち着かないJoelは早々に家に帰る。

部屋に戻ってしばらく悩んでJoelは約束通りClementineに電話する。



二人はボストンのチャールズ川の氷面に寝転んで星空を眺める。二人が醸し出すつかの間の満たされた時間を一緒に過ごす。

朝になってニューヨークに戻る。Joelの部屋へ行く前にClementineは一旦歯ブラシを取りに自分の部屋に戻る
32ClementineのポストにMaryから「記憶を取り戻して」と添え書きされたテープが届いていた。そのテープをClementineはJoelの車で一緒に聞く。記憶を消す前にClementineが告白したテープ。Clementineは延々とJoelの悪口を言い、二人の間の嫌な思い出を語る。
悪し様に悪態をつかれ怒ったJoelはClementineを車から追い出す。

家に帰っても落ち着かないClementineは意を決してJoelの部屋に行く。部屋の隅でJoelも送られてきた自分の告白テープを聴いて落ち込んでいた。
好きだったのにすれ違う二人。テープのJoelはClementineの悪口を言い続けている。

Clementineは思わず部屋から逃げ出す。追いかけるJoel。

「もう一度やり直そう」
Clementine : Okay.
Joel : Okay.

まだお互いを知らない二人だが愛する心はそのままに消えてはいない。