しばらく更新していなかったので、短いですが続きをあげます^^;
この回にはありませんが、この先ソーシャル版・ソウシルートのネタバレがありますので、ご注意ください。
強さと弱さ3
さっそくユエは、大きな通りで聞き込みを開始した。道行く人に手当たり次第に尋ね、情報を探してゆく。どう見ても普通の町娘にしか見えないユエが、異国で宝さがしをしているのが珍しいらしく、尋ねられた人は少し驚いたような顔をする。
「もうそんなの探している人はいないし、たぶん見つからないよ」
「そう、ですか…」
「あなた、まだ信じてるの?その話は嘘だったって、もうみんな知ってるわよ」
「その話なら、あきらめた方がいいな。…それよりも、金が欲しいんなら、うちで働いていかないかい?」
「あはは、ありがとうございました―!」
どの人に聞いても、返ってくるのは似たような答えばかりで、情報らしい情報は手に入らない。しまいには、変な勧誘をされそうになり、ユエはあわてて礼を言うとそそくさと道の端に逃げた。
本当に、宝なんてないのかもしれない。そう思いかけたが、すぐにいけない、と首を振った。
(あきらめちゃだめだ、みんなだって、まだ探してるはず!)
そう思うと、もうひと頑張りしようと気力がわいてくる。場所を変えてみようと、近くの横道に入ろうとした時。背後から、大きな声が聞こえてきた。
何だろうと思いみてみると、大通りをはさんで向こうの店の前に、3人の人影が見えた。どうやら喧嘩をしているらしく、2人の長身の男が誰かに詰め寄っている。
(嫌だなぁ)
こんな往来でやめてほしいと思いながら、巻き込まれるのも嫌なのでそのまま離れてしまおうと思った。しかし、ちらりと男の影から見えたあいての顔を見て、ユエは驚き固まってしまう。
(え、まだ子供!?)
詰め寄られていたのは、どう見ても、まだ12,3歳くらいにしか見えない、子供だった。それを大の大人が、二人がかりで脅している。ユエにはそうとしか思えなかった。
そして、これが彼女の長所であり短所だと、のちのソウシをさんざん悩ませることになるのだが、彼らを見てほうっておけユエではなかった。
気がつくと、少年と男の間に立ちはだかっていた。
「あなたたち、こんな子供に何してるんですか!」
「ああ!?関係ないだろ、ひっこんでろ!!」
間髪いれず、怒鳴り返される。目の前にいる自分よりずっと背の高い男たちに、そしてその声の大きさにひるみそうになるが、男の子のためにも逃げるわけにはいかない。
ぐっともてるだけの勇気をかき集めて、負けじと力強く言いかえした。
「そうはいきません!あなたたちこそ、こんな子供相手に大人げないんじゃないですか?」
「なんだと?」
ユエの言葉に鼻白むが、もう一人の男が突然にやにやとした表情で、
「じゃあ、お前が変わりに払うのか?だったら、そのガキは見逃してやるぜ」
「払う?」
何のことかといぶかしげなユエに、
「このガキが、店のものを盗んだんだよ!」
ユエの背後の少年を見据えて忌々しそうに言う。しかし、言われた本人、つまり当の少年は、
「盗んでないって言ってるだろ!」
「何だと、このっ」
「ダメっ!!」
ユエはとっさに、男の子に殴りかかった男の腕をつかんだ。それは、ソウシから聞いた基本的な護身術なのだが、ユエの技量では相手をねじ伏せるところまではできない。それでも何とか、力の方向を逸らすことに成功した。
そして運良くというべきか、悪くというべきか。男が勢い余ったさきには、華奢な台に載せらせたガラス細工が並んでいた。それらを派手に巻き込み、男は転倒した。
「あ…」
どうなることかと心配半分、興味半分で集まっていた野次馬も、男の仲間も、ユエにこんな力があるとは思っていなかったため、驚いて固まる。もちろん、やった本人もこうなるとは思っておらず、某然とその様子を見つめた。
「お姉ちゃん、こっち!」
その中にあって、庇った子供が一番冷静に事態を観察していたようだ。ユエの手を引き、我に帰らせると、二人で人込みをかき分け走りだす。
怒った男の声が背中から聞こえてきたが、振り向きもせず全速力で逃げた。