ソウシさんの誕生日に向けて小説書いていたのですが、
終らない~(ノ◇≦。)
前後半分けるっても、普通誕生日に間に合うように書くでしょうが!!
って思いつつ、まあいいんだ、後半はそのうち書きあげるさ…
と言うことで、誕生日用なのに前半のみ小説。
後半は…す、数日後…(涙目)
とにかく、
ソウシさん、お誕生日おめでとうございます!!
あ、ちなみにこの小説、ほぼ誕生日関係ない感じの内容です(爆)
シリウスは、とある港町に停泊していた。もう6月になったというのに、安定しない気候が続き、最近やっと春を迎えたような天気に落ち着いたばかりだ。今日は春先のように柔らかな風が吹いている。水色の空には、綿菓子を千切って落としたような雲が、形を変えながら幾つも流れていた。
「ほら、ユエちゃん、あれがこの町の大聖堂だよ」
「わあ、大きいんですね」
背筋をのばすようにして、ユエは遠くをよく見る仕草をした。
小さな家が連なる中、とんがった尖塔を二つ持つ教会は、遠くからでもよく見える。
かと思うと、今度は目の前を通り過ぎる建物をさして、
「こっちは、教会じゃなくて寺院だね」
「ふふ、屋根がまん丸くて、可愛いですね」
今ユエとソウシは、馬車にゆられながら移り行く景色を楽しんでいるところだ。この町は、宗教を異にする他国の町を海の向こうに隔てており、たえず国境の定まらない土地であった。
そのため二つの文化の混ざり合う独特の雰囲気を持っており、ユエは目に入る建物の珍しさに先ほどから身を乗り出しっぱなしだ。
度重なる戦で多くの血が流れた地であるにも関わらず、町は華やかで、過去の暗さを全く引きずっていない。混ざり合ったその文化を、既にこの地のものにしているようだ。
しばらくいくと、町の外に出る門が見えてきた。馬を操る御者が通行許可を示しなんなく外へと出ると、すぐに周りは畑と山だけになった。
「こっから、三時間くらい行ったところにありますんで。いやあ、それにしても助かります、先生」
馬を操りながら、男が恐縮し切った様子で礼を言う。
「いいえ、病人を診るのが私の仕事ですから」
もう何度目かになる男の言葉に、いつもと変わらぬ穏やかさでソウシは答えた。
シリウスがここの港に着いてから、各自自由行動となると、ソウシとユエはまず薬草を買いにファーマシーに向かった。すると、なにやら先客がいて店の者と話しこんでいた。
「熱がすごいんです…いえ、咳はでていなくて…」
簡単な調合以外は、薬草は単独ですべて量り売りになっている。店員に申し付けないといけないため、ユエたちは順番待ちをしているのだが、なかなか男の買い物が終わらない。間が悪いことに、他に店員の姿はなかった。
「えっと、じゃあ、そっちも…いや、それは違ったか…」
「あの…どうかされたんですか?」
しどろもどろに話す男に、見兼ねたソウシが話しかけてみた。
「申し訳ない、待たせてしまって。町医が今月は私の村にこれなくなったというので、代わりに薬を買いに来たんだが…難しくてさっぱりだ…私の息子が熱を出しているんだが、何の病気かもわからなくて…」
よほど困り果てていたと見えて、初対面のソウシにまくしたてるように事情を話してくれた。
ソウシはというと、まるで自分のことのように顔を曇らせて、男の話を聞いている。
「それは、お困りでしょう…お住まいの村は、ここからは遠いのでしょうか?」
「馬車で三時間くらいのところにあります。けど、みんな農民ばかりで、医学の知識なんてまったく…」
ソウシは少し考える顔になったが、それも一瞬のことだった。
「もしかしたら、私が手伝えるかもしれません」
「え?ほ、本当ですか⁉」
「私は船医をしている者ですが、お手伝いするにはとりあえず船長の許可をもらわないといけません。少し待っていただいても大丈夫でしょうか?」
「ええ、ええ、もちろんです!助かります!あ、私はアルダと言います。では、ここの入り口で待ってますので!」
こういった経緯で、ソウシとユエはアルダと言う男の村まで一緒に行くことになったのだ。
「私まで一緒にきてしまって、すみません」
まるで物見遊山のようにはしゃいでしまったのを恥じる気持ちもあって、ユエは男に謝った。
「いや、いいんですよ。着くまでは、のんびりしていてください、先生の助手さん」
助手、と言う言葉に、何かこそばゆいものを感じるユエだ。ソウシの手伝いは良くしているが、まだそこまでしっかりとした知識は身についていないため、嬉しいやら何となく申し訳ないやらで、あいまいに苦笑を返してしまう。
聞くと、男は近くの村でブドウ園を経営しているらしい。乗っている馬車は貴族のものと違い屋根のないタイプだったが、しっかりとしたつくりをしていた。実はユエは馬車に乗ったことがなかったので、それもあって先ほどは少しはしゃいだ声をあげてしまった。いつもより目線が少し上がるだけで、町も景色も特別なもののように見える。
しかし一時間くらい行ったところで、ユエは馬車に対する考えを改めることになった。まず、思った以上に揺れるため、お尻がいたい。そして気分も、始めて船に乗ったときの船酔いほどではないが、ずっと道のでこぼこに合わせて揺れているので、すこし具合が悪くなってきた。馬車に乗った貴族が町で通り過ぎる時などは優雅に見えていたのだが、わりと粗っぽい乗り物だなぁと、意外な発見だった。最も、貴族が馬車に三時間も揺られることはあまりないと思うが。
ようやく村に着くころには、日は高く登っていた。
「ユエちゃん、足元に気をつけてね」
先に降りたソウシが、ごく自然にユエの手をとって降りるのを手伝ってくれる。
しかしそれにもかかわらず、長いことゆられていたせいか地面に降りた足元がふらついて、よろけてしまった。
「っと、大丈夫!?」
「すいません、大丈夫です」
「…ちょっと、疲れちゃったかな」
ユエの顔を覗き込み、ソウシが心配そうに言った。酔ってしまったのか、頭痛がして少し気分が悪くなっていたのだが、言わなくてもソウシにわかってしまったらしかった。きっと今自分は青い顔をしているに違いない、とユエは不甲斐なく思った。
「すいません、着いて早々に…」
船旅で少しは丈夫になったかと思ったのだが、これくらいで体調を崩すなんて。申し訳なさげにソウシを見るが、
「すごく揺れたからね、無理もないよ」
その様子を見ていたアルダもユエに向かって、
「助手さんは私の家で、しばらく休んでいるのがよさそうだ。ちょうど昼時でかみさんもうちにいると思いますんで」
「すみません…」
するとソウシも、
「お子さんが、ご病気でしたね。まずはその子から診察を始めましょう」
「先生は、お休みにならなくても大丈夫で?」
「ええ、ご心配はいりません。病気も気になりますし、早い方が良いでしょう」
男はもう一度感謝の意をこめて頭を下げると、こちらですと言って二人を家へと案内した。
(ふう…、やっと良くなったかも)
ユエは、家の裏側に腰をおろして、ぼんやりと遠くの景色を眺めていた。
ただの酔いなので、部屋で寝ているよりは外の日陰など風通しの良いところにいた方が良くなるだろうと、家の裏側に腰をかけて、休んでいたところだった。
しゃがみこんだユエのそばで離れ難そうにしていたソウシを、自分は大丈夫だと言って診察に向かってもらったのだが、せっかく手伝うために来たと言うのに、さっそくお荷物になてしまっているのが、情けなかった。
(もう良くなったし、大丈夫。ソウシさんを手伝いに行かないと)
そう思って、よいしょと立ち上がると、家の表に周って行った。
中に入ってみると、少し驚いてしまった。ドアをくぐりすぐに居間になっているのだが、話を聞きつけてやってきた町の人であふれかえっていて、この見渡す限り畑のどこからこんなに人が集まってきたんだろう、と不思議なくらいだ。
「うわぁ、すごい人…じゃなかった、ソウシさん探さないと!」
見回してみると、右手にあるドアから一人の男性が出てきたところだった。入れ違いに、今度は女性が入ってゆく。きっとソウシはその部屋で診察しているのだろう。
ユエは人を掻き分けドアの方に行くと、そっとあけて中を見てみた。すると思った通り、ソウシが木イスに座って、いま入って行った女性と話しているところだった。
「ソウシさん」
遠慮がちに話しかけてみると、ソウシはすぐこちらに気が付き、
「あ、ユエちゃん。もう具合は良いのかい?」
「はい、おかげさまで。すみません、いそがしいのに…、何か、お手伝いできることはありますか?」
「そうだね…じゃあ、とりあえずここに座っててもらおうかな」
そう言って、ソウシは少し後ろにある窓際の椅子を指示した。
「何か手伝ってほしいことがあったら指示するから、しばらくそこで見ててもらってもいいかい?」
「はい、わかりました」
そう言って、素直にイスまで行き座ると、ソウシは診察を再開した。
ようやくソウシの近くに来れたことで、ほっとする。
先ほどは女性の背中になっていたので良く見えなかったが、どうやら手首が悪いようで、ソウシに見てもらっているところだったらしい。
曲げたり角度を変えてどう痛いのか診ていたが、
「指の使いすぎ、だと思います。最近、何かいつもと違う仕事はされましたか?」
「はあ……あ、そう言えば、虫よけの作業をいつもより長時間やりました。夫が腰を痛めて寝てますので」
「たぶん、そのせいですね。しばらく、手に負担を書けないようにした方が良いでしょう」
「ですが、仕事なので…」
―――
そんな調子でみんなを見ていき、気が付けば日がだいぶ傾いていた。とは言っても、それだけでは何時なのかあてにならない。町によって―正しくは緯度によって―日照時間が違うので、慣れないユエなどはうっかり夕日を見て「もう18時か」などと思っていたら、実は21時だった、と言うこともあったのだ。
診察時間、と言うよりは、話している時間が多かったような気がする、とユエは思った。手が痛い、腰が痛い、だから休めば治りますと言われても、仕事なのでそれはできませんと村人が言うのはもっともなことだった。
(お医者さんって、大変だなぁ)
しかしここに来た患者は、出るときは必ず笑顔になって帰ってゆく。ソウシは病気を診るだけではなく、心の面でも大いに患者を励ましたようだ。おっとりとした性格が親しみやすいのもあるのだろう。そう言うところもさすがだなぁ、と、ユエはますます尊敬してしまう。
「ありがとうございました、先生」
「いいえ、お体を大切に」
にっこりとそう言って、最後の人を見送ると、ソウシはうーん、と言って盛大に伸びをした。
「ふう、さすがに疲れたな」
それにしても全くつかれていなさそうな笑顔で言い、ユエを見る。
「すごい人でしたね、お疲れ様です。近くにいたのに、見ていただけですみません…勉強になりました」
「ふふ、気にしないで。こうして少しずつ仕事を覚えていってもらうのも、だいじなことだからね」
そう言ってユエに近づくと、愛しそうに片頬に手を当てた。照れながらも、その掌の上に自分の手を重ねてみる。暖かく、どきどきするのに心地よい。
「…本当のことを言うと、今日は町でちょっといいレストランにでも、行きたかったんだけどね」
ほんのちょっとだけ名残惜しそうに、そっと小声で言うソウシに、
「レストラン、ですか?」
いつもリュウガたちと酒場に行くのに、珍しいな、と思った。ここは何か特別な料理でもあるのだろうか。
「うん…でも、こんな田舎で過ごすのも、たまには楽しいね」
「?そうですね、海がない町に来るのは、初めてです」
「あ、本当だ。…たまには、こんな誕生日も悪くないかもしれないね」
「そうです…はい?」
そうですね、と言いかけて、いま、何か重要な単語が聞こえたような気がして、ユエは思わず訊き返した。
「こんな風に過ごすのも、悪くないなぁって」
「い、いえ、その前に、何と言いました…?」
「ん?こんなふうに過ごす誕生日も、悪くないなって」
「誕生日って、誰のですか?」
「私のだよ…あれ?言ってなかったっけ?」
完全に固まったユエを見て、ソウシはごめんごめん、と続けた。
「そっか、言ってなかったんだね…6月24日、今日は私の誕生日なんだ。でもこの歳になると、誕生日なんてうれしいのかどうか良くわからないよね」
あはは、と笑うソウシの言葉を、最後あたりはよく聞いていなかった。まさか自分の恋人の誕生日を知らないなんて、その日になるまで気がつかないなんて、何てバカなんだろう、と打ちひしがれる。
頭の中で、どうしよう、今からできること、何かないか、といつになくフル回転するが、こんな夕方からできることなど、ほぼないことは良く分かっていた。
(そ、そうだ!とりあえず、夕食を作って…後は…手紙、くらいしかないよ……!!)
「ユエちゃん?」
うつむいて固まったユエを心配して声をかけるが、全く耳に入らないらしい。かと思うと突然ばっと顔をあげ、
「あの、ちょっと私夕飯のお手伝いしてきます!!」
「え?今から?」
何が何だか分からない、と言う顔のソウシを残して、ユエはこの家の厨房まであっという間に走って行ってしまった。
写真とか、想像する余地がなくなるので良くないかもと思ったのですが、文もわかりにくいんで写真載せてみました。
でもこれ、葡萄園の農家の家じゃないです(笑)
なんか可愛かったので、と言うか著作権考えたら手ごろな画像が手に入らなかったので…!
読む人的には、スチルみたいで楽しめるかな・・・とか思ったり。