人工知能と人間に恋は成立するのか。

her/世界でひとつの彼女』

こじゃれた、鼻につく映画だと思ってたんですよ。

「オレは、終身雇用制度とか、バブルのやつらとか
旧世代とは違うんで
スマホやSNSを駆使して
ノマドで仕事したいんすよね。

紙?イマドキ、新聞や本読んでるんすか?
デジタルのほうが、自分のプライオリティ
高いものから、サクサク選んでいけるじゃないすか。
人生、いかにムダな時間をなくすかですよ。
おれ、ソーシャルメディア・リテラシー高いんで

(もう、途中から、何言ってるか分からない)
ジョブズが死んだときは(人が死んだのにドヤ顔で)
スタバでMacから「R.I.P.」と打ち込んだり
「やっぱ、スパイク・ジョーンズ監督
MV出身だけあって、センスはんぱねぇや~
オレ、コーヒーと映画はちょっと好み、うるさいんで…
そういう男が喜ぶ作品だと、勘違いしてた。

真夜中にマミー飲んで、すあま食べながら
「うちは極道に、惚れたんやない。
惚れた男が、たまたま極道だったんや!

五社英雄監督、やっぱいいわぁ~
昭和の女優、腹くくってるわぁ、と
極道妻DVD観て、感心してるようなおかまには
到底分からない映画だと、勝手に判断してたの。


それがこれが
「僕はパソコンに、惚れたんじゃない。
惚れたのが、たまたま人工知能だったんや!


かたせ梨乃や西川改め仁支川峰子姐さんらの
タマの取り合いならぬ

直球のラブストーリーやった!!
これは、頭のかたいアカデミー賞のおっさんらも
票を入れちゃうや(オリジナル脚本賞受賞)
うん、人工知能との声だけのSEXに
興奮した訳じゃないよね?!
あたしは「テレフォン・セックス」だけは
マジ、その良さが分からず生きてきたんよ。

たまーーに、ゲイでもいるんですよ。
「マリリンのはもうギンギン?こすってみてよ
先っぽからどんくらい出ちゃってるの?」って
言われても「そんなこと言われたら、
おかしな気分になっちゃうよ」

ケータイ片手に、嘘の声色作りながら、
もう一方の手は
……股間じゃなく
クイックルワイパー持って、床とか掃除してたもん。

確かに、この映画での人工知能は、
その所持者の好む、理想の女になっていってるの。

つまんない話にも、相づちを打って
よく笑って、まるで合コンの「さ・し・す・せ・そ」

「さすが~」「知らなかった~」
「すごーーい」「センスある~」「そうなんだ~」

男の気分は上昇っすよ。
男のスマホのレンズ部分から世界を見て知ったり
気持ちを作曲して、ステキなメロディに変えたり。

でも、この主人公が偉いのは
相手が「パソコン」だからとか、躊躇しないの

見た目も気にしない(だってパソコン)
年齢も気にしない(だって人工知能)
サマンサ(人工知能の名前。
そしてスカーレット・ヨハンソンの声がいい!!)
誰でもない、それが「彼女」だから、
「彼」は恋に落ちて
、時間を共有するんだよ。


もう、そのまっすぐな思いに
心がつかまれましたよ。

あたしも、「好きだけど(ヤッたけど)
おまえは男だから」と男に去られるたびに

なんで?「マリリン」だから、「おまえ」だからで
ひとりの人間として、
好きになってくれたらいいじゃん!!

大概の男は、そこを飛び越えてくれなかった。
(飛ばすほど、あたしに魅力がなかった)
なんで???意気地なしぃーーーっ!
と何度も涙を飲みました。

この映画は、人工知能と人間との恋って
とてつもなく「変化球」の設定だけど

ふたりが出会って、心が寄り添って別れてく
本当に、本当に、「直球ど真ん中」の
ラブストーリー
だったよ。


そして、あたしはこの映画を観て
人工知能……じゃなく「オレンジ」に恋しました。
そう「色」!!
近未来の街を歩くオレンジのシャツやセーター
部屋の中のオレンジのクッションや電気スタンド
とにかく、アクセントで出てくる「オレンジ」色が
美しく、この恋の話をさらにあたしの心を
ホッと幸せな温かさで包んでくれたよ。

(年取って、ただ単に派手な色が好きになっただけか)

恋は、社会が許容した唯一の狂気

この作品にも出て来たセリフ。
あたしも狂いたい、狂わせたい。