ハァーーー なのか ふぅーーー なのか
忘れてしまったけど

最後のページを読み終えた瞬間
慈しむように、本を抱え
甘美なため息を、もらしてしまった。


山田詠美さんの『学問』

彼女の作品は完読しているんだけど
この最新刊、なぜか“秋”に読みたかったのだよ。
で、9月に入って速効で、
夢中になって一気に読みきったよ。
いやーーー、これぞ文学!!

4人の少年少女が性と生の輝きを学ぶ
10代の頃のお話。

コバルト文庫の富島健夫先生が紡ぐ
思春期の官能小説になるところを
(それはそれで夢中になって読みましたが)
もしくは、幼なじみへの片思いの恋心を
描く少女漫画になるところを
人間の欲望の目覚めを
美しい日本語で、文章に変えて

普遍的な“文学”に昇華させてくれるの。

もうね、本を抱きしめながら
「読書よありがとう!文学ありがとう!
山田詠美さん ありがとう!
恋愛バンザイ!欲望バンザイ!」
って
感謝しちゃったよ。

さっき、「10代のお話」って書いたけど
章の頭に、それぞれの死亡記事が記載されてるのね。

普段、人って「自分が死に向かって歩いている」こと
忘れてるっているじゃない?
だから、誰かが闘病して、死んじゃうストーリーの
ドラマや映画観て「感動しました!」と泣く人も多く。
いや、「おめえが、明日死ぬかもしんないのに
よくのんきに感動できるなぁ」って、
あたしは、いっつも引っかかってたんですよ。

現実は、みっともなく死ぬかもしんないし
不慮の事故であっけなく死ぬかもしんない。
でもね、ここに出てくる登場人物たちは
文字で綴られてる10代のときから
事実を述べられただけの死亡記事までの間
この小説では描かれていない月日の中も

“欲望に忠実に”生きていたんだろうなぁ、と。
「ちゃんと死ねたんだろうな」
そう思えて、読後幸せになれるの。
書かれてないのに、描かれてる人生。
その筆力!山田詠美さんは、やっぱすんげーー!!


また、この作品に出てくる4人は
山田詠美さんが『風味絶佳』や『無銭優雅』等で
それこそ『ぼくは勉強ができない』の秀美とか
昨今描くキャラクターのように
自律(立)していて、憧れるような存在でも
「自分の世界に正直に我が道を往ける」大人でも
決してないんだよね。

誰からも一目置かれる心太だって、
家庭に屈折した思いを抱いてるし
恋愛になす術もないの。
そんな彼らが、なかでも主人公の仁美が
“少女”から“女”になっていく過程が
丁寧に描かれていて、

無我夢中でこなしていた、あの頃の“学問”が
反芻されました。
そして、またひとつ、ため息。

そっか、あたしも今日から自分を「性の奴隷」ではなく
「欲望の愛弟子」と呼ぼう!!

何度も書いてますが、この世に生を受けて
ユーミンと、山田詠美さんが
「せつない」という感情をあたしに教えてくれた。
それも、また『学問』