おまえ(東京電力)はもう死んでいる。 | 六本木の公認会計士いきぬき (息抜き編)

おまえ(東京電力)はもう死んでいる。

週末に、東証の斎藤社長が、東京電力はカネボウやJALと同じように、会社更生法の適用による、法的整理を行うべきだと発言したとかで、東京電力株がストップ安水準の前日比79円安、終値207円まで売られた。

斎藤社長は過去に産業再生機構を経験した、事業再生の専門家だ。また、東京電力株式会社は、福島原発の賠償による偶発債務により、大幅な債務超過が実体だ。どこまでいくのか分からない程の債務超過だ。

この上はつい先日は枝野官房長官も、損害賠償を国民に転嫁する前提として、銀行が債務免除を行わないと国民の理解が得られないと、発言して混乱した。この話題は事業再生の専門家として、時事話題となっている。

会計専門家であるならば、当然知ってのように、株主は債務者よりも先に責任を取るのが、資本主義のルールだ。

であれば、資本の消滅を認識しない段階で、銀行に債務免除を求めるのは、ルール違反が原則だ。

会社更生法による法的整理を実施した場合、経営者は経営責任を取らされて罷免され、株主持分は減資されることによって株式は紙くずになる。

次に、裁判所によって任命された管財人の管理の元、資産サイドが回収可能価額である時価に再評価される。ここから、租税や給与手当などの「優先的厚生債権」、資産につき担保がふされた「厚生担保権」が控除され、あとに残った厚生債権(無担保の普通の負債全部)につき、なるべく回収出来るように頑張った弁済計画(これを厚生計画という)が策定される。

この場合、厚生債権に対する弁済率をなるべく高くするために、資産になるべく高く評価する必要がある。当然、東電から発電事業と送電事業を切り出してGOODカンパニーとしてスポンサーに競争入札によって売却し、抜け殻となった旧東京電力に債務を残して高値によって売却して得た資金を弁済に回していくことが合理的なスキームだ。専門家なら誰でも分かる。

法的整理となった場合、東京電力株式会社は解体される。その過程で、社員の給与などに外部からのスポンサーによるメスが入り高給は維持できないであろうし、発電と送電が分かたれれば、事業の地域独占も崩れ去るので電力料金の安易な値上げによる国民への転嫁も困難になる。

PLのリストラの他、負債面では多額の退職給付債務が厚生債権となることで、無担保の銀行融資や社債と同様の水準で切り捨てられることになる。BSもリストラされる。

このように、過去がPLでもBSでも清算されることによって、東京電力は再生する。JALがいま正にそうしているように、過去の清算を終えて、切り出されたGOODカンパニーたちが、再び上場企業を目指すのが筋だろう。

政府側の主張は、法的整理に陥った場合は、福島原発による賠償債務が方的には優先的厚生債権に該当しない為、劣後的債権となってしまい弁済のスキームが成り立たないという論だ。

そのため、東電の上場を現状のまま維持しつつ、社債発行等による資金調達の手段を残して、出来うる限り、自力による賠償債務の弁済をさせるべきだと言っている。

かなり、おかしな話だ。福島原発の賠償債務の補償は、早くから政府保証を行うとのコミットメントを政府は行っている。法的整理とは別途、特別法で行えば良い。そのための行政府と立法府だろー、バカヤロウ。

1週間前くらい、楽天の三木谷社長が経団連が、歴代会長を排出した東京電力を必死に擁護していることに不快感をいい、「そろそろ脱退しようか」と発言した。経済界は東京電力を温存しようとしている。東京電力は重厚長大産業がでかい顔をし続ける経団連のお得意様だ。すでに日本のGDPの大半はサービス業が占めるのに、いまだにこいつらが経済界の重要なポストに居座っている。

東電の社長は震災時に関西電力の経営陣とゴルフをしていたというが、仲良しクラブの電力業界は、テレビ局にとって大きな広告主だ。ニュース番組も、東京電力の法的整理のあるべき論に触れることはない。サラ金のCMをなくしたテレビ局のビジネスモデルも終わりに近づいているんだ。

そして電力業界は、所轄官庁にとっても大きな天下り先であることは、いうまでもない。

「被災者の損害賠償を確実に行いたい」という「正しい顔」の下に政官財の癒着がある。東証の社長の「不用意発言」を批判する論調のテレビコメンテーターに騙されてはいけない。

東京電力は、法的整理による再生を行うべきだ。東京電力株式会社、おまえはもう死んでいるのだ。

アタアッ!!!