待ち合わせの駅に向かい、いさぎよく電車に乗り込んだがその駅は快速はとまらない事がわかり、急いでメールする。「今あなたの姿が見えましたが私は快速に乗ってしまいどんどん今あなたから猛スピードで中腰のまま遠ざかっています。あなたと一瞬すれ違ったのに」と。すると「折り込み済みです」と返事

    *

こないだおとなの人に「きょう一日なんでも好きなもの買っていいですよ。きょうだけですけど」と言うと割とびっくりして少し震えていた。壷を手にとる背後から「へえそんなものがほしいんだ」と言うと肩をびくっとさせる。「『この世界はおまえのもの』って「小さな木の実」の歌詞でしたね」と私は言う

象の置物を持ってきたので「え、ほんとにこんなものが欲しいんですか」と言う。あんまり欲望について考えたことがないのかなあと思う。「オズの魔法使いじゃないんで別にきょう象の置物を買わなくても」と私は言ったが「これにします」と言うので象の置物を買う。その晩、ひどい悪夢をみて、うなされる

買い物の後「じゃあ私はこれで」と帰ろうとすると自分が乗る予定だったバス停が消えていてびっくりする。困った顔をして相手をみると一緒に探してくれる。「バス停が出たり消えたりするようじゃこの世界困ります」と言ったが相手は黙ってあちこち探している。工事が理由らしい。メルヘンとかじゃなくて

見送られるのが苦手で、見送りますよと言ったのだが、いや見送りますよと相手も頑固にゆずらない。おなかパンチして気絶してる間に帰ろうかと思ったが逮捕されるきけんがあるので、見送るのはいいですけど手をふらないでもらえますかと言う。あと途中ふりかえってはいけないと。神話みたいですねと相手

それであとで、ふりかえるかなああのひと、と思って背中をみていたら、ほんとうにふりかえらない。古事記のイザナギノミコトみたいにほんとうにふりかえらない(彼はふりかえったが)。え、なんか、ふりかえらないでって言ったら、本当にふりかえらないのかあと思う。民話みたいだなあと思う。鶴とか