贈物は人格によって独自化されたユニックな性格をもつ。
人格間の狭い範囲のなかでのみ、贈物は贈物であって、それはこの狭い空間を出て、商品や記号のように流動しない。
象徴交換の材料は、商品(交換価値)のように自立化せず、記号のようにコード化されない。
象徴交換上の物は、体系化を拒否する。
象徴交換のなかでかわされる材料は、人格間の《関係づけと分離》の媒体であり、愛と攻撃がひとつになった両義性をもつ。

      今村仁司『現代思想の基礎理論』