こないだ
美容院で洗髪されるとき、
わたしはギャルのひとに洗髪されたので、
ギャルのひとに洗髪されながら、
ああギャルのひとに洗髪されているんだな、とわたしはおもっていた。
しかし、そのギャルのひとは、わたしの髪を洗いながら、
とつとつと語り始め、じぶんが離島出身であること、ひとみしりであること、
東京にきてあまりのとりとめなさに顔をおおってその場に泣き崩れてしまった日もあったことを話した。そして、それでも、青空はきれいだったんだと。
わたしは髪を洗われながらも、ちょっとしたギャルの人生のドラマに
しずかに、息巻いていた。おいおいその続きどうなるんだよ、と思い、
もっと髪をあらえあらってくれはなしてくれ、とさえ想いうずまき、
人生で、うまれてはじめて「かゆいところ」を多々注文しようとさえしていた。
すべてが・かゆいんだ、と。
どちらの出身ですか、ということばに、
つまらないちゃらんぽらんのわたしの話はどうでもいいから、とさえ、おもった。
だが、無情にも、背もたれがあがっていく。わたしは、うまれたての
ダースベイダーのような感じで、せりあがっていく。
そして、ひとみしりの離島出身のギャルは、またあらたな髪に手をつっこむために、
去って行く(っていっても、隣のイスの客にうつっただけだ。いやしかし)。
わたしは、しばらく、だまって、天井窓から、青空をみている。
髪を切る日は、青空が多いな、と、おもう。