医は算術? | 交通事故弁護士ブログ

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前回のブログで、むち打ちの慢性化原因として医療機関の不適切な治療という問題点を指摘しました。

勿論、ほとんどのお医者さんは、真剣に患者の治療に励んでおり、問題はありません。

ただ、医師の立場からすると適切と思える行為が、損保や被害者側からすると問題と思える行為があります。

それは、交通事故の被害者に対する自由診療です。




「交通事故でも保険は使える」ことは、ネットの普及で、被害者の間でも広く知れ渡っています。

ただ、交通事故では、やはり、いまだに自由診療が主流です。

医師会側の意見は、交通事故というのは、普通の骨折なんかとは全然レベルが違う、夜中に患者が運び込まれる、緊急外科処置が必要になる、あげくは裁判に巻き込まれることもある、こういう医療行為を保険でやれ、なんてどうかしている、という意見です。


しかし、交通事故といっても色々で、全部が全部、高度な緊急治療が必要というわけではないし、全部な全部、裁判に巻き込まれるというわけでもないわけで、一律、自由診療というのは、疑問があります。

ただ、緊急で高度な治療の場合は、保険を使うと、治療や画像、薬が制限され、治癒のためにも、後遺障害の立証のためにも、後日、何かと足かせになります。重大事故の場合は、高額でも、保険を使わず自由診療で受診されたほうがよいでしょう。

反面、症状が落ち着いてきたら保険診療に切り替え、あるいは当初から単純な治療の場合なんかは、当初から保険診療で充分だと思います。



それでも、交通事故は自由診療というのが通常の病院です。


問題は、自由診療の場合、1点いくらにするか、ということです。

自由診療は、患者と医師が、治療単価を交渉し、自由に決めるという建前です。しかし、患者さんが病院と協議し、「先生、それは単価が高すぎますわ。もつと安くしてください」なんて交渉するなんてありえない話で、普通は、病院側のいい成りの単価で自由診療を受けることになります。

そこで、単価によったら、あっという間に自賠責の上限120万円を使い切り、その後は十分な治療を受けられなくなる、なんてことも起こりうるわけです。




これじゃぁいかんということで保険会社が病院相手に。その単価は高すぎるんじゃないの、と裁判を起こしたりして、自由診療でも、低い単価で処理するよう求めてきました。



そういう状況で、東京地裁は、画期的な判決を出しました。この事案では、病院側は、20円ないし30円を基準として単価を決めていたのですが、裁判所は、診療内容が普通の保険診療と変わらないんじゃないか、ということで、薬剤量料については110円、その他は1050銭が妥当だ、という判決しました(東京地裁H1314)。




この判決を受けて、医師会と損保、自動車保険料率算定会は、以下の通り合意し自賠責保険診療報酬基準を作成しました。

1,診療報酬体系は、薬剤等「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料については、これに20%を加算した額を上限とする。

2,個々の医療機関が現に請求し、支払いを受けている診療費の水準を引き上げる主旨ではない。




これにそって、山梨県以外の全国都道府県の医師会では、この自賠責保険診療報酬基準に従うよう申しあわせ、採用率は6割を超えているとも言われています。また、採用していない医院でも、同水準の請求になっているそうです。



ただ、この基準に従わず、相変わらず、高額の点数で診療報酬を請求している病院もあり、その病院に対し、東京地裁で平成23年、110円しか認めないという判例がだされています。(H23531)。




もし現在、交通事故で自由診療を受けられている方がおられたら、一度、1点何円で計算しているか、確認されたらいかがでしょうか。

ちなみに、1点単価が高い病院は、不要な医療行為―所謂濃厚治療を行っている例も、あるようです。

過失相殺が問題になる案件、自賠責しか使えない案件では、自由診療が不要なほど高額だと、その分のしわ寄せが被害者に方にきます。この点では、被害者の方と保険会社の方は意見が一致しますから、保険会社担当者の方とよく相談されたらいかがでしょう。