ホテルオークラ本館建て替え。 希少な伝統美、セレブ「待った」。
世界で保存運動「日本的モダニズム建築」
(5月13日付)東京新聞朝刊


以前、togetterでもまとめておきましたが、



007ジェームス・ボンドも泊まったホテルオークラ、日本を代表する建築を取り壊そうとする話が進んでいます。ところが海外の著名人からこの馬鹿な計画に警鐘が鳴らされていることをご存知ですか?日本建築の価値は時と共に増しているからです。

ホテルオークラに限らず日本建築は年月が経過しさらに価値を出すのが本筋。寺社仏閣も新築時は全然ダメで木の色も枯れ瓦も苔むしてからが本領発揮なのです。現代建築にはそういう経過価値を生みだしてるものは圧倒的に少なく、稀有な例がオークラです。

特にオークラの茶室や和の空間は、素材が擦り減り、色も焼け、やっと風格が出てきた、これからなのです。ホールの備品も日本の工芸意匠技術の粋を集めたもので、再調達は難しいものばかりです。今後は金を積もうとも入手不可能なものがほとんどです。

日本の現代建築ではこれ以上のものはもはや作ることはできないにも関わらず、「新奇性こそがデザイン」というドグマに囚われ、その真の価値に気付いていません。
教養の厚みが違うので谷口吉郎以上のものは現在の建築家では設計できないでしょう。

今の建築情勢には、商業デザイナーとデベロッパーと投資家という構造しかない。学生を教える教授陣も力量不足、設計事務所は零細経営で人材をまったく育てられていない。ということはオークラを超える建物は今後成立することはないと断言できます。

ホテルは歴史と文化が載ってこないと、50年経過してきたからこそ、これからクラッシックな価値を目指せるんです。ここで建て替えても、顔を失った名前がオークラというだけの劣化した新築ホテルが出来るだけなんです。



時と共にその価値を増すホテルオークラは稀有な現代建築の事例なのです




ホテルオークラの建築空間における「和の意匠の見どころ」については、お茶室や数寄屋建築にお詳しい京都の設計事務所である岩崎建築研究所さんのブログに素晴らしいレポートがありますよ。

ホテルオークラ東京 前編
ホテルオークラ東京 後編
ホテルオークラ東京 茶室編