ということで、しばらく更新できなくてすいません。
年度変わりでこの4月もいろんな漫画、アニメの新連載、放映が始まりますね。

その一方、人気が出なくて、時代に早すぎて、勢いで描いていて、
結果連載中止とか放映打ち切りとかいった多くの作品があるのも事実です。
そういった作品の中には後に再評価されて復活したり、再評価によって伝説化する作品もあります。

名作というのにそういうものは意外と多いんです。
例えば「宇宙戦艦ヤマト」もそう、「機動戦士ガンダム」もそう、「新世紀エヴァンゲリオン」もそうですね。
私にとっては、現在「へうげもの」で大ブレイクした山田芳裕先生の「度胸星」なんかがその代表作です。
連載打ち切りになって、急に物語を収束させてしまっており非常に残念です。
「度胸」と「宇宙」というなんかまったく異質の言葉が、無理なく同居する、ど根性宇宙開発物語、JASDAC宇宙飛行士候補の心理戦の様子、それに加えてNASA火星探査中に発見される謎の幾何学物体テセラックと、荒唐無稽と庶民派リアリティが同時存在する「度胸星」は山田でなくては決して描けんだろう、というほどの内容です。
この作品アイデアの一部はそのまま現在スピリッツ連載の「宇宙兄弟」に受継がれいますが、、、

しかし、迷作であり名作という作品もある。
いまだ迷作なのかどうかもわからない作品もある。

今回ちょっとご紹介したいのが、大迷作か大名作なのか、
週間少年ジャンプで2007年3月より連載され10話打ち切りになってしまった「重機人間ユンボル」なんですよ。
建築エコノミスト 森山のブログ

「シャーマンキング」で有名になった武井宏之先生による渾身の混迷作品です。
これが最高面白いんですね。

この作品の面白さは私の専門が建築ということもありますが、
それだけではない、SFと中世的なファンタジーを元にした非常に精緻な世界観や設定がなぜか建築土木用語で構成されていて、熱き男達の現場が中世の諸侯国家間の戦いになっているという極めて建築オタクというか土木マニアックな作品です。

このユンボルというのは工事現場で使われているパワーショベル「ユンボ」のことです。
働く自動車をテーマに持ってきたところは、非常によい着眼点だと思うんですね。

実は、このブログで4月は、はじめ「機動警察パトレイバー」について書こうと思っていたんです。
そこで、レイバーについて考えていたんです。
レイバーとは工事用の人型汎用重機のことなんですが、このレイバーに近いものが建設重機メーカーでは既に開発されていて、、、といった話を。
それを考えていたときに、重機そのものを主人公にした「ユンボル」のことを思い出したんです。

このブログで何度かご紹介しているように、
工事用重機車両というのは小さな男の子達にとって憧れの対象なんです。
みんなダンプやクレーンやパワーショベル、ブルトーザーが大好きなんです。
なんでなのか解りませんが、本能的に吸い付けられてしまうところがありますよね。

その重機というものを主人公に据えてなおかつ、その世界観が土木建築工事一色なんです。
西暦3000年、未曾有の大災害によって現在とは地形も変化した地球が舞台。
その災害復興のために世界は大工事時代(大航海時代のモジリ?)というのを迎えています。

この世界全体は「World Xand ワールドザンド」と呼ばれております。
ざ、ざ、ざんど?世界が?
この設定からもちょっとワクワクしてきます。

「ざんど」なんていう言葉は、多分お高くとまった建築デザイナーや自称建築家の設計士たちにとっては無縁の言葉です。むしろ現場バリバリの言葉、土方仕事の現場体験がないと思いつかない、いい設定です。

残土(ざんど)というのは土木工事で掘削したときに出てくる土砂のことで、
残土処分費用「りゅうべい何千円」とかっていうのは聞いたことがありませんか?
この土砂をダンプで運び出すときに出てくる言葉なんですよ。
だからまずそこで武井先生にヤラレてしまいました。

これを武井は、「大災害から残された地」と詩的な解釈を進めていきます。

このワールドザンドの世界復興に一役買っているのが、工事戦士ドヴォーク重機士団です。
ドヴォークの若き工事戦士バル隊長が、号令します。
「全重機機動!支保工隊前進!!目標工期0.2ヶ月!」
とか、いいでしょ!

ドヴォークとはワールドザンド内の諸侯国家の名前です。

この平和な国家ドヴォークの国境の町バーラックに、
突如侵攻を開始したのがゲンバー帝国のゲンバー大王です。
ぱっと見、北斗の拳のラオウって感じのキャラです。

ゲンバー?
と、なんか笑えるんですが、土木建築の言葉の全てがみんなかっこよく再表現されているんですよね。

ここまでで、出てきた工事用語は
ワールドザンド 残土処分の残土(ざんど)
ドヴォーク   土木工事の土木(どぼく)
バーラック   バラック建屋(ばらっく)
ゲンバー    工事現場の現場(げんば)

といった感じですが、ユンボルの解説にまでいかなくてすいません。

つづけます。