沙門果経 | 仏教の瞑想法と修行体系

沙門果経

パーリ長部戒蘊篇収録の「沙門果経」「スバ経」など複数の経典には、ほぼ同じ修行階梯の記述が見られます。
これらは原始仏典の最も典型的な体系化された修行階梯です。

全体が「戒→定→慧」の3学を基本とし、それぞれに複数の階梯が存在します。
詳細は下記の通りです。

1 戒:小・中・大3種類の戒を実践する

2 定
(1) 護根:感覚の対象に心を奪われないようにする
(2) 正念正知:欲望・執着に捉われないように、常に自覚し気をつけている
(3) 知足:質素な衣食で満足する
(4) 断五蓋:5種類の心の汚れを取る
(5) 四禅:初~第四禅を修める

3 慧
(1) 真実知(智見):体は四大から構成された無常なもので、心はこれに依存することを知る
(2) 意所成身:もう一つ肉体(意識できた体?)を作る
(3) 六神通
 <1> 神変:分身、消えたり現れたり、瞬間的移動、壁を通り抜ける、など体に関する様々な超能力を得る
 <2> 天耳智(通):遠くの声・天の声を聴けるようになる
 <3> 他心智(通):他人の心を読めるようになる
(4) 三明
 <1> 宿住智(通):自分の過去の前世を知る
 <2> 天眼智(通、死生智):他人の輪廻を知り、天国と地獄を知る
 <3> 漏尽智(通):四諦(苦集滅道・漏集滅道)を理解し、煩悩を滅したことを理解します

「定」には純粋な「止」の瞑想以外の項目も含まれます。
「慧」の後半には、超能力的な知覚の「六神通」が置かれています。
ただ、これは修行項目というより、修行の結果として副産物的に身に付くものです。

最後の「三明」は、これが釈迦が悟った内容であるという解釈がここに反映しています。
ただ、「慧」の中で解脱に関係するとして後に重視されるのは、「真実知」、「宿住智」、「漏尽智」でしょう。