ウサギ伯爵は人見知りだ。

 

「人見知り病」という病気があれば、きっとお医者さんが眉間にシワを寄せて

「これはもう不知の病ですな」と宣告されるくらいである。

 

けど、ウサギ伯爵と会った人は、人見知りと気づかない人もいるかもしれない。

なぜかというと、ウサギ伯爵はただの人見知りではなく、新型人見知りだからだ。

 

「え?なに?その新型インフルエンザみたいなノリの人見知りは?」

 

例えば、買い物に行くと店員さんが話しかけてくることがある。

そういう時、ウサギ伯爵は相手に人見知りを知られることと、会話中に沈黙されることがすごく怖い。

 

そこで、ウサギ伯爵の知ってる全ての知識を使って、全力で会話をつなぐのである。

ここで重要なのは、店員さんがいかに気分良く話せるかを重視する。

 

「その服かっこいいですね!」

「やっぱりこのお店の服は素材がいいですね!」

 

一通り店員さんを気分良くしたら、「少し考えてみます」というお決まりの定型文を述べて、その店を離脱する。

「ふう、ひと仕事したわ」というなんとも不思議な充実感に包まれる。

 

しかし、この新型人見知り病の副作用は、かなり疲れることである。

そして、ウサギ伯爵は今日も「やっぱりお店は疲れるから、なるべく行かないようにしよう」とひとり思うのである。