日雇い禁止、何のため?(全文)
先日(日雇い禁止、何のため?
)書きましたが、とてもニュートラルな記事ですので、全文転記でご紹介。
(働く)ゆれる派遣:4 日雇い禁止、何のため? 主婦ら「どうやって働けば」
ワーキングプア(働く貧困層)を生む一因として批判され、昨年10月から原則としてできなくなった「日雇い派遣」。厚生労働省の審議会は、この規制のあり方についても、見直しをはじめている。規制の効果はなかったのか。
...
夫が一昨年、リストラされてしまった。東京都の40代女性は、30日以内の期間で、派遣会社に雇われて派遣される「日雇い派遣」で数年前から働き、派遣先でデータ入力などの事務作業をしていた。自分の収入と、夫の失業手当、アルバイト収入でやりくりするようになったが、家計は火の車だ。
昨年10月、夫の失業手当の給付が終わるころ、日雇い派遣が原則禁止された。「学生」「世帯収入が500万円以上で、主たる生計者でない人」などは例外的に続けられるが、女性はどれにもあてはまらない。
子どもの世話などの家庭の事情があり、働ける日時はかぎられる。「長期の契約は無理で、収入が少ないからこそ、日雇い派遣を選んだ。なのに500万円以上の世帯収入が要件って、わけがわからない」
登録先の派遣会社に相談すると、そこでパートとして働けることになった。登録している人に電話やメールで仕事を紹介するのが仕事だ。電話口で同じ悩みを訴える人が大勢いた。
「なんで働けなくなるんですか。私はこれからどうしたらいいんですか」
親の介護や自分の病気など、事情は様々。次の仕事が見つかるまで、とりあえず日雇いでしのいでいる人もいた。「現場の声をふまえて、派遣で働く人を本当に守る改正をしてほしい」
主婦に特化した人材サービスを手がける「ビー・スタイル」が今年9月、登録者約400人から集めたアンケートでは、禁止を「支持しない」が47・1%で、「支持する」の13・1%を大幅に上回った。
同社しゅふJOB総合研究所の川上敬太郎所長は「仕事の機会を本当に必要な人から奪っただけではないか。長期の安定雇用につながったという話は聞いたことがない」と話す。
原則禁止を盛り込んだ派遣法改正は、民主党政権時代に行われた。その際、自民、公明両党の協力をえるため、例外を認めるように修正され、年収も要件に加えられた経緯がある。日本人材派遣協会は禁止の見直しを主張している。
■抜け道で待遇悪化も
一方で、禁止が有名無実化している面もある。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、「原則禁止後も、名前を変えただけで残り、むしろトラブルに見舞われやすくなった」と指摘する。
6、7年前から日雇い派遣で働いてきた千葉県の30代男性は昨年9月、登録先から「日々紹介に切り替える」と連絡をうけた。
日々紹介は業者が仲介して、企業に労働者を紹介し、企業が直接、労働者を雇う。違法ではない。
男性は「仕事のやり方は変わっていない。職場に毎回、個人情報を知らせる必要ができたぐらい」。
もっとも、違いを実感した出来事はある。昨年12月、男性は仕事を前日にキャンセルされた。派遣時代には休業手当が出たが、このときは支払われなかったという。男性は「派遣会社に指摘すると、雇っているのは先方だと言われた」。
派遣業界に詳しい香田史朗・社会保険労務士は「日雇い派遣をやめて日々紹介にきりかえた企業に、雇用主としての自覚があるのかは怪しい。安全管理などの責任は、あいまいになった可能性がある」。
日々紹介だけではない。千葉県の高橋千尋さん(32)は、「派遣業」として求人を出していた会社に2年前から登録。明日は千葉で荷下ろし、明後日は神奈川でフォークリフトの運転というように、毎回仕事場が変わる。日給は原則8千円。だが、働き方はそのままに、昨年10月から契約が「業務委託」に変わった。
「経験を積む上で不利なのも、雇用が不安定なのも前といっしょ。委託とはいっても、職場で指揮命令もされ、違法では」と話す。
労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は「規制を強化しても誰も幸せになっていないのではないか。労使双方に日雇いに需要があることを認めて規制を見直し、そのうえでセーフティーネットの強化を考えるべきだ」。
(石山英明)
■派遣法改正で日雇い派遣は
《改正前》
1日ごと、30日以内の一定期間など、派遣会社は何日であっても雇用して派遣可能
《改正後》(2012年10月1日施行)
30日以内は原則禁止。ただし、(1)60歳以上、(2)雇用保険を適用されない学生、(3)世帯収入が500万円以上で、主たる生計者ではない、(4)副業として行い、メーンの仕事の収入が500万円以上、(5)専門性が求められるソフトウエア開発などの18業務に従事――の場合は禁止の対象外。
ワーキングプア(働く貧困層)を生む一因として批判され、昨年10月から原則としてできなくなった「日雇い派遣」。厚生労働省の審議会は、この規制のあり方についても、見直しをはじめている。規制の効果はなかったのか。
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夫が一昨年、リストラされてしまった。東京都の40代女性は、30日以内の期間で、派遣会社に雇われて派遣される「日雇い派遣」で数年前から働き、派遣先でデータ入力などの事務作業をしていた。自分の収入と、夫の失業手当、アルバイト収入でやりくりするようになったが、家計は火の車だ。
昨年10月、夫の失業手当の給付が終わるころ、日雇い派遣が原則禁止された。「学生」「世帯収入が500万円以上で、主たる生計者でない人」などは例外的に続けられるが、女性はどれにもあてはまらない。
子どもの世話などの家庭の事情があり、働ける日時はかぎられる。「長期の契約は無理で、収入が少ないからこそ、日雇い派遣を選んだ。なのに500万円以上の世帯収入が要件って、わけがわからない」
登録先の派遣会社に相談すると、そこでパートとして働けることになった。登録している人に電話やメールで仕事を紹介するのが仕事だ。電話口で同じ悩みを訴える人が大勢いた。
「なんで働けなくなるんですか。私はこれからどうしたらいいんですか」
親の介護や自分の病気など、事情は様々。次の仕事が見つかるまで、とりあえず日雇いでしのいでいる人もいた。「現場の声をふまえて、派遣で働く人を本当に守る改正をしてほしい」
主婦に特化した人材サービスを手がける「ビー・スタイル」が今年9月、登録者約400人から集めたアンケートでは、禁止を「支持しない」が47・1%で、「支持する」の13・1%を大幅に上回った。
同社しゅふJOB総合研究所の川上敬太郎所長は「仕事の機会を本当に必要な人から奪っただけではないか。長期の安定雇用につながったという話は聞いたことがない」と話す。
原則禁止を盛り込んだ派遣法改正は、民主党政権時代に行われた。その際、自民、公明両党の協力をえるため、例外を認めるように修正され、年収も要件に加えられた経緯がある。日本人材派遣協会は禁止の見直しを主張している。
■抜け道で待遇悪化も
一方で、禁止が有名無実化している面もある。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、「原則禁止後も、名前を変えただけで残り、むしろトラブルに見舞われやすくなった」と指摘する。
6、7年前から日雇い派遣で働いてきた千葉県の30代男性は昨年9月、登録先から「日々紹介に切り替える」と連絡をうけた。
日々紹介は業者が仲介して、企業に労働者を紹介し、企業が直接、労働者を雇う。違法ではない。
男性は「仕事のやり方は変わっていない。職場に毎回、個人情報を知らせる必要ができたぐらい」。
もっとも、違いを実感した出来事はある。昨年12月、男性は仕事を前日にキャンセルされた。派遣時代には休業手当が出たが、このときは支払われなかったという。男性は「派遣会社に指摘すると、雇っているのは先方だと言われた」。
派遣業界に詳しい香田史朗・社会保険労務士は「日雇い派遣をやめて日々紹介にきりかえた企業に、雇用主としての自覚があるのかは怪しい。安全管理などの責任は、あいまいになった可能性がある」。
日々紹介だけではない。千葉県の高橋千尋さん(32)は、「派遣業」として求人を出していた会社に2年前から登録。明日は千葉で荷下ろし、明後日は神奈川でフォークリフトの運転というように、毎回仕事場が変わる。日給は原則8千円。だが、働き方はそのままに、昨年10月から契約が「業務委託」に変わった。
「経験を積む上で不利なのも、雇用が不安定なのも前といっしょ。委託とはいっても、職場で指揮命令もされ、違法では」と話す。
労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は「規制を強化しても誰も幸せになっていないのではないか。労使双方に日雇いに需要があることを認めて規制を見直し、そのうえでセーフティーネットの強化を考えるべきだ」。
(石山英明)
■派遣法改正で日雇い派遣は
《改正前》
1日ごと、30日以内の一定期間など、派遣会社は何日であっても雇用して派遣可能
《改正後》(2012年10月1日施行)
30日以内は原則禁止。ただし、(1)60歳以上、(2)雇用保険を適用されない学生、(3)世帯収入が500万円以上で、主たる生計者ではない、(4)副業として行い、メーンの仕事の収入が500万円以上、(5)専門性が求められるソフトウエア開発などの18業務に従事――の場合は禁止の対象外。
(朝日新聞 平成25年11月22日)
いわゆる派遣村騒動の時もそうですが、私たちは業界寄りの記事を書いて欲しい訳ではありません。
様々なケースがある中で、その双方を見たニュートラルな報道がして頂きたいだけなのです。
報道の在り方次第では、法改正が単に弱者イジメになってしまうことも多く、今回の改正での日雇禁止は、まさにそんな感じになってしまっています。
派遣法が改正されて以降、「年収500万もあったら、わざわざ日雇派遣なんか行もんか!」という言葉をよく聞くようになりました。
また、これまたごもっともですが、「500万以下だからこそ、働かなきゃならないんだ!」という声も聞きます。
日雇派遣を利用していた人には、様々な事情を抱えた人がいるのです。
それをたまたま日雇派遣大手の企業が問題になったからといって、臭いものには蓋のように規制してしまったのでは、本当に必要としている人が被害を受けるだけとなってしまいます。
日雇派遣の禁止は「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」という考えでしかありません。
一刻も早い見直しを希望いたします。
ではまた