臨時国会閉会へ、派遣法はまたまた先送り
第176臨時国会は3日、衆参両院の本会議で審議と閉会中審査手続きを行い閉会する。改正障害者自立支援法など4件が成立、政府が今国会に提示した15機関48人の国会同意人事も同意となる見通し。菅政権は北朝鮮問題など外交対応とともに、2011年度予算案の年内編成に全力を挙げる。
3日の参院本会議では、(1)国会議員の歳費を月割り支給から日割りに変更する関連法(2)障害福祉サービスの利用者負担を現行の原則1割から支払い能力に応じた金額に変更する改正障害者自立支援法(3)原発施設立地地域振興特別措置法の来年3月末の期限を10年延長する改正同法―の3件が可決、成立する予定。
その後の午後の衆院本会議で、証券取引等監視委員会委員長に佐渡賢一元福岡高検検事長を再任するなどの国会同意人事案が、公明党なども賛成して同意となり、里山保全に携わる民間団体を国が支援する「生物多様性保全のための活動促進法」が成立。
重要法案の郵政改革法案と労働者派遣法改正案は継続審議となる。郵政改革法案に関し民主、国民新両党は、来年の通常国会での衆院再可決も視野に成立を目指すとする新たな連立合意文書を交わした。
(共同通信 2010年12月3日)
報道にあるように本日、第176回臨時国会が閉会する。
今国会では、衆参のめじれや、外交、失言などの問題で、補正予算自体も閉会1週間前やっとの成立となり、法案成立率は39%という低さとなった。
結果、我々が強く反対してきた派遣法改正案も少なくとも来年通常国会まで冬眠に入る。
今思えば、社民党が「事前面接の解禁」に修正を求めなければ、この改正案で成立していたであろう。
⇒派遣法改正案 提出先送りへ
我々にとってはギリギリのところで止まってくれたという感じだ。
08年のリーマンショックによる世界同時不況は、それまでの格差問題などのダメ押しをし、派遣労働の規制強化に向かわせた。
だが、それから2年経過し、人派協会、技能協など業界団体、電機連合や人材サービスゼネララルユニオンなど労組、そして先日発表となった東大の調査結果などから今までとは異なる派遣労働者の心境が明らかとなるにつれ、やっとニュートラルな議論になってきたと感じるようになった。
昨日も、そうした意見として、国際基督教大学の八代尚宏教授のインタビューがDIAMOND onlineに掲載されていた。
派遣法改正案は「正社員の雇用」を守るためだった!? 非正社員は誰も救われない“矛盾と罠” ――国際基督教大学 八代尚宏教授インタビュー (DIAMOND online 2010年12月2日)
教授は、このインタビューで、そもそも派遣社員などの非正社員の増加が、小泉政権の構造改革によるものではなく、派遣労働者達の求めているものが、「雇用機会の制限」ではなく、「待遇改善」であると答えている。
もちろんそうした意見が全てではなく、派遣という働き方を自ら選んでいる人と、やむを得ず派遣労働者である人での意見の違いは当然あるだろう。
だが、ともに派遣労働者の思いであることは否定できない事実のはずだ。
だからこそ派遣法の改正は、双方を向いたものでなければならない。
そしてこのインタビューでは、規制強化について一番重要なことが書かれている。
本来、こうした規制強化を行う場合には、「規制の影響分析」が法律で義務付けられている。それにもかかわらず、厚労省は、規制強化の事業者への影響に関する調査をまったく行っていない。厚労省のホームページで、単に「(派遣元、派遣先、派遣労働者へ)周知するための費用が発生する」としたのみで、「(雇用機会の減少等の)社会的費用は発生しないものと考えられる」と述べているだけだ。雇用への悪影響を意図的に無視しているといえる。
という部分だ。
この、法律で義務付けられているとされる「規制の影響分析」をせずに出された「長妻プラン」は、ただでさえ「厳しい雇用情勢にさらなる悪影響を及ぼしている。
本日、国会は閉会し、年末年始に向けて先生方はこぞってお国入りされるのでしょう。
ですが、派遣労働者たちは、すでに2年以上まな板の上に乗せられ、かつ働き続けていることを忘れないで頂きたい。
彼らを一刻も早く、安心できる働き方に導いてあげなければなりません。
彼らのためにも、早急に派遣労働者のための派遣法改正議論の再開をお願い致します。
ではまた