安心・安定のメーカー直接雇用の期間工 | 雇用維新 派遣?請負?アウトシーシング?民法と事業法の狭間でもがく社長の愚痴ログ

安心・安定のメーカー直接雇用の期間工

Twitter内の『#hakenhou』のハッシュタグに、

『安心・安定のメーカー直接雇用の期間工募集!』…ってな感じの求人広告が相変わらず多い。


というツィートを見た。


08年に起きたリーマンショックを発端とした経済危機は、世界中の経済に影響を与え、日本の製造業もその影響を受けた。


その結果、皆様ご存知のいわゆる「派遣切り」という大量な失職者を発生させてしまうこととなったのだが、それまでは、A社の仕事がなくなっても、B社、C社と派遣を通じ、雇用は確保することが出来た。


むしろ、スタッフの方が、仕事を選び、同業他社へ移籍してしまうなどというケースも多かった。


だがリーマンショックは、ナタで叩き切るかのごとく、市場から仕事を消失させた。


その一番最初の被害者が、製造業の派遣労働者であったのは、間違いない事実だ。


だから、そこには、何らかのセーフティーネットを整備しなければならない。




本年に入り、景気は、間違いなく回復傾向となってきている。


メーカーでの生産も、正社員の残業対応などで対応してきたが、それもキャパオーバーとなり、いよいよ外部労働力の利用をと動き出したが、「派遣=悪」というイメージと、今後の派遣法改正への不安から、企業も求職者も派遣離れを起こしている。


そうした状況にメーカーが痺れを切らし、自社として採用を開始、その募集などの際に目に付くのが、前出の文言だ。


メーカーの直接雇用だから安心・安定…これならわかるが、募集内容は「期間工」である。


どのような更新内容かは、各社違うだろうが、3ヶ月更新とか、6ヶ月更新で、MAX2年11ヶ月というような契約のどこが安心、安定なのだろう。


派遣であれば、派遣元は、次の契約に結びつけるため、必死で新しい職場を手配する。


しかし、メーカーの期間工は、期間が終われば、次は自分で仕事を探す事になる。




私が言いたいのは、「だから派遣は素晴らしいんだ」ということではない。


非正規問題の本当の問題点は、非正規から正規に抜ける「出口」が極端に小さく、ここを正さなければ、この問題は解決しない。


ということなのだ。




先日、厚生労働省のHPにアップされた雇用政策研究会の報告書「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム 」では、正規・非正規の間に「多様な正社員」という働き方の環境整備が必要だと書いている。


その後に出てくるトランポリン型社会の構築は、理解できるが、「多様な正社員」というのには、何か違和感を感じざる得ない。


…と思っていたら、労働新聞 のひとコママンガ「ろーしん漫華鏡」に秀逸なイラストがあった。



雇用維新 派遣?請負?アウトシーシング?民法と事業法の狭間でもがく社長の愚痴ログ


正社員採用で、「終身雇用コース」「場合によっては解雇可能コース」「いつでも解雇可能コース」などを求職者に選ばせる将来の面接風景を書いたものだ。


この「ろーしん漫華鏡」は、毎度風刺が効いていて、労働問題の関係者なら思わずくすりときてしまうこと間違いなしのコーナーだ。




私の考える正規、非正規の解決策は、こうした段階を作るだけでなく、労働者が望む働き方に進んでいけるかの道筋を整備することなのである。


何点取ったら、そこへ行けるのかが分かれば、そうなるよう努力もできるだろう。


今回の報告書案は、様々な有識者の意見や書籍引用などがされており、なかなか読み応えがあるものになっているので、ぜひ皆様にもお読み頂ければと思う。


http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000cguk-img/2r9852000000ch2y.pdf

報告書の中で派遣法に関しては、



(労働者派遣制度の見直し)


労働者派遣制度については、職を求める人々のニーズと、迅速に人員を確保したい企業のニーズの双方を結びつけ、短期的な雇用を実現する制度として一定の役割を果たしている一方で、近年、日雇派遣等の社会的に問題をもたらした派遣形態が出てきているほか、やむを得ず派遣労働を選択する人の存在や、いわゆる偽装請負や禁止業務への派遣等の違法派遣やそれに伴う指導監督件数が増加しているところである。


また、2008 年秋の経済危機以降、我が国の雇用情勢は急激に悪化し、派遣先が派遣元との労働者派遣契約を途中で解除する状況が多く見られ社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じた。


これらに的確に対応した措置を講じ、派遣労働者の保護の仕組みを強化し、派遣労働者が安心・納得して働くことが出来るような環境を整備することが課題となっている。



と書いている。

だが、本当に整備されるべきは、派遣が問題だから禁止してしまえなどという短絡的な方法ではなく、本当に派遣労働者の保護となり、派遣労働者が安心・納得して働き、望む「働き方」に移行していくことが出来るような環境を作ることなのではないでしょうか。



ではまたパー