頭を使って豊かになれ/エス・エス・アイ | もん・りいぶる21(21世紀のレビュー三昧)

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発行日不明 エス・エス・アイ(無料)

新たにジャンルをひとつ作ってみた。
この世に溢れる人の心をコントロールして利益を追求しようとする道具たち。
今回は資格商法ならぬ脳トレ商法である。

その地雷の名は「速聴」。
もはや速読ではその詐欺行為が知れ渡ったからなのか、聴くという新ジャンルを開拓しているのだから、悪賢い。

さてと、言葉の定義だが、「聞く」と「聴く」の違いはなにか。
「聞く」は聞こえてくる程度も含めて普通に聞く。とりあえず何か言っているから聞く。
「聴く」は耳を傾けて心も正面から向き合って聴く。大事な内容は聴く。

すでに速聴というネーミング敗れたり、である。
サラサラ倍速三倍速十倍速で聞くのは、「聴く」とは言わない。

ということで、既に中身に入る前にダメ出しができてしまう。

では中身をというと、最近よく使うようになった「噴飯」「唾棄」の嵐。

総論賛成的な一般論で、ネガティブに生きる人の気持ちを煽るのだが、脳にプラスの習慣を身につけさせても分泌系までは変わらんだろうと思う。
そして、生活習慣によって脳がフリーズしているので、それを正せといって20項目ほどのチェックリストがあるのだが、これは単なるネガティブ度チェック。
つまりはターゲットは落ち込んでいて人の言いなりになりやすい人を狙い撃ちするためのリストだ。
ちなみに「生活習慣」ではなく、「気質的傾向」と「ネガティブさへの誘導」でしかない。
この程度のことがひと目で見抜ければここから先は読む必要はない。たいてい紙ゴミとして処理するだろう。

しかし、20個のチェックに引っかかってしまうと「能力UPのツボ」が出てくる。
リード部分は正しい。「人間の脳は幾つになっても刺激を与えると活性化する」は半分正解。

しかし、受動刺激など何の意味もない。
落馬して植物人間状態になってクラシック音楽を聞かせ続けたら回復したという伝説も、実証データが少なすぎる。
脳は、能動的に使ってはじめて活性化する。
つまりはただ同じことを受動的に繰り返しても、「脳は飽きる」だけだ。

そして高速音声と「速聴」がようやく出てくる。
そのあたりの脳のサボリ癖などはすべて割愛しているからこいつらいよいよ詐欺工作を強めるなと思ってページを繰る。

で、売り物が出てきた。速聴機である。
今時ICレコーダーなどでは再生速度は可変であるのにCDプレーヤーである。すでにへそは茶を沸かす。

そして後は、これを売りつけようということの裏づけ作業。
買ってからのよい話がズラッと並び、まるで薬事法違反の健康食品のパンフレットのようになる。

それにしても、ポジティブライフはバラ色な書き方の節操のなさが口の中にジワジワと唾を溜めさせる。
脳力が高まれば、そりゃいいことも多いだろうね。
でも、脳力が高いとこんな詐欺見抜くよね。

さてと、ちょっとした知り合いが、書店で買った本に挟まれて無理やり渡されたこのパンフレットに何の弾みか電話をしてしまったからさあ大変。
悪徳商法特有のしつこい勧誘が始まって、とにかく折れるまで勧誘し続ける。
もちろんそれは法律違反であるのだが、そんなことはお構いなしだったそうだ。

で、よくよくもう一度このパンフレットを読み返してみると、

・無差別にパンフレットを振りまいてより多くの人の目に触れる。

・気持ちや体調が弱っていてネガティブな状態になっている人を探しだす。

・バラ色の一般論を書き連ねてあたかも有用な方法論であるかのように思い込ませる。

・この方法論を実現できるのはこの製品だと思い込ませる。

・さらに成功例をこれでもかと押し付けて、そうなれたらいいかなと誘導する。

・さあ、あなたも資料請求とつい電話をしたり資料請求葉書をポストに入れてしまう。

・もともとネガティブで抵抗力の弱っている状態の人に強いプレッシャーを与え続けることで、高い成約率を達成することができる。

・被害者はよりネガティブな状態になり誰かに相談したり訴えたりしにくい状態のまま苦しむ。

とまあ、こんなストーリーで作られたパンフレット。

もしかすると、あなたの買った本のレジ袋にも入っているかもしれない。