日本企業のコーポレート・ガバナンスについて色々と云われていますが、私もひとこと。コーポレート・ガバナンスとは即ち企業の経営・管理のあり方ですが、様々な種類のコーポレート・ガバナンスがある筈です。従業員との関係。お客さまとの関係。社会との関係。そして株主との関係。即ち企業のステーク・ホルダーそれぞれとの間の関係について、コーポレート・ガバナンスは存在します。一般に、最近、特に英字メディアで語られる日本企業のコーポレート・ガバナンスとは、この4つの関係のうち、株主との関係に限った内容と思われます。日本企業は、お客さま、従業員、社会との関係に於いては、世界中の企業の中でも恐らくトップ・クラスのコーポレート・ガバナンスを持っているのではないでしょうか。ただ、株主と経営の間の関係だけが、どこか足りない、或いは欧米の期待からずれているところがあり、それが批判の的になるのです。

 この件に関して、私には或る案があります。上場企業に於いて、株主総会に於ける取締役選任議案を、或る一定の条件を満たした株主だけに提案権を持たすのはどうでしょうか?会社が当該議案を提出すると、総会で部分的に否決されることは事実上非現実的で、一旦取締役会メンバーが決まると、互選によって社長、経営者が決まるので、株主と経営の距離が遠くなる、或いはそう感じられるのではないでしょうか?株主のみに当該提案権を与えると、会社は予め提案権を持つ株主に”案の案”を提示して説明に行くでしょうから、そこで様々なフィードバックが行われます。経営方針に対する質疑も行われるでしょうし、或いは会社側では気が付かなかった良い社外取締役の推薦などもあるかも知れません。

 実現は簡単ではなく、多くの企業からの反対がすぐにでも聞こえてきそうです。この案は、このままでは強烈すぎるかも知れませんが、何かしら経営陣の選任プロセスにもっと株主の関与を強めることが、この問題の解決に繋がる可能性が高いと思っています。