ボラティリティ、即ち価格変動性が急上昇しています。株価、為替、国内、国外。あらゆる資産の値動きが、とても激しくなっています。ひとつ特徴的なのは、流動性の高低と、ボラティリティの高低が、通常は逆の関係にあるのですが、今回はそうとは限らないことです。

 即ち一般的には、マーケットが大きく動く時でも、流動性の高い資産(新興国の為替や株価に対して主要国のそれや、個別株に対してインデックスなど)のボラティリティは低く、流動性の低い資産の方がボラティリティは高いのですが、今回は双方のボラティリティが同じであったり、或いは逆転したりしています。

 これは偶々ではなく、今回の騒動の仕組みと関係のある構造的な理由からだと思います。世界中の投資家のリスク管理が進み、どこかで損が出てリスクが高まると、益を出すなりリスクを下げるために、何かを売る(或いは買い戻す)。全体の損失、或いはリスク量が大きいので、流動性の低い資産の売却(或いは買い戻し)では間に合わないので、流動性の高い資産で取引が発生する。その結果、流動性が高い資産でもボラティリティが高くなる。まぁそんな理由だと思われます。

 しかしこれが本当の意味で「リスク管理が進んだ」と云えるのかどうかは、甚だ疑問です。何故ならここで行われているリスク管理は、事後的管理であり、このような事態にならないようにしておくことが、本来のリスク管理と思われるからです。

 まぁ今回の事件を契機に、或る程度リスク管理は進歩することでしょう。しかし最終的にもっとも重要なのは、各自(トレーダー、ファンド・マネージャー、並びにマネジメントなど、延いては金融当局)の「理解」の深さであると、私は信じて疑いません。