日刊サイゾーからです。

http://www.cyzo.com/2016/08/post_29282.html

 

中国農村で“犬皆殺し令”発令! 大量処分の背景に、犬食文化の後退か

 

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息絶えた犬を引きずる鎮政府職員

「飼っている犬を差し出しなさい」

 

 8月4日午前、安徽省合肥市の農村で、愛犬家が住む複数の家のドアを荒っぽくノックした地元鎮政府の職員は、こう言い放った。

 

 彼らは飼い主から犬を強引に奪い取ると、木の棒で殴り殺したのだった。この日、村で捕獲された犬は計26匹に上り、そのすべてが同じ運命をたどった。現場では、愛犬が公権力によって連れ去られていく様子を、なすすべなく泣きながら見送る少女の姿もあった。同鎮政府は7月、犬にかまれた村民が狂犬病を発症して死亡したことをきっかけに、村内のすべて犬の殺処分を決めたのだ。

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その場で殺処分された犬はズダぶくろに入れられ、廃棄される

 このニュースに対し、中国ネット上では「そのうちに、当局はエイズ患者も撲殺し始めるぞ」と、人間の世界に重ね合わせる声や、「その昔、どっかの国では、人間に対してもこんなことがあったな」と、1965年から約10年間続いた、文化大革命を揶揄するようなコメントが書き込まれている。

 

 同様の殺処分は「滅犬行動」と呼ばれ、中国各地で展開されている。5月には、湖北省宜昌市や四川省自貢市などでも住民の狂犬病感染や咬傷事故予防を目的とした滅犬行動が行われており、野良犬・飼い犬問わず、大量処分されている。

 

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連れ去られていく愛犬を前に、涙を流して立ち尽くす飼い主の少女

 

 その背景について、広東省広州市に住む日本人男性は話す。

 

「5~6年続いたペットブームが陰りを見せ、経済成長も鈍化し始めている。犬を飼う余裕がなくなったのか、捨て犬が増えている。しかも中国では、去勢手術を受けていない犬がほとんどなので、その数はどんどん増える一方。狂犬病の予防接種も普及していない。深夜になると、街中でも暗がりで野犬が徒党を組んでいて、囲まれてほえられたことが何度もありますが、その恐怖といったら……。たまに保健所の職員が捕獲しているのを見かけますが、彼らも命がけなので、捕獲する犬の『生死は問わず』といった感じで、かなり手荒です」

 

 一方、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は、中国で滅犬行動が横行する理由の遠因として、食文化の変化を挙げる。

 

「これまで中国では、野良犬を犬肉業者が捕獲して、肉を売りさばいていた。しかし、国内外からの批判の高まりにより、犬肉の消費が落ち込んでおり、野良犬が増え続けているんです」
 
 人間に食べられる心配が少なくなっても、中国で生きる犬たちには相変わらず過酷な運命が待ち受けているようだ。
(文=牧野源