ADHD薬のコンサータ(メチルフェニデート)に離脱症状はあるのか?

 コンサータを2年ほど飲んでいる子ども(9歳)の話である。

以前お母さんにお会いしたことがあり、私からは、コンサータについて情報と、「あまり長期間飲まないほうがいい」といったようなことを伝えておいた。

先日、久しぶりに会ったところ、「実はこの夏休みに薬をやめていた」とのこと。「よかったじゃないですか」と喜んだものの、「いやあ、でも……」と続いた話は以下のとおりである。

まず、薬をやめたいと医師に相談をすると、「あ、そう、じゃあ、やめたら」の一言で、コンサータ27㎎を一気に切ることになったという。

「この薬は一気にやめても全然問題ない」というのが医師の見解。

 ところが、である。

 それ以降、子どもは、それまでしたことのなかった「おねしょ」をするようになった。

 また、体が「だるい、だるい」と始終言い、

 さらに、母親もびっくりするくらいの食事の量。

(これはコンサータの副作用の一つ、食欲減退が亡くなったためと思われる。)




 あまりの体のだるさに、こんな状態では学校に行くことができないので、新学期を迎え、結局、薬は戻ってしまったという。

 医師に相談をすると、またしても「あ、そう、じゃあ、出すね」とだけ。

 薬をやめたい母親の気持ちを汲むこともなく、なぜこういう状態になったのかの説明もなく、薬をやめるにはどうすればいいのかの知恵もなく・・・。

 そもそもコンサータは、登録医しか処方できず、したがって専門性を持ち合わせているという前提のはずなのだが・・・



「コンサータ 離脱症状」という言葉で検索すると、さまざまな情報が出てくる。

 なかでもびっくりするのは、「コンサータをやめさせたい」という母親の質問に対して、「いや飲み続けたほうがいい」という回答があったりすることだ。

「私の、意見で申し訳ありませんが、もしも中学生以前なら、服薬を続けた方がよいと思います。率直にそう思います。

理由は、思春期になると、多動の子はいろいろと問題を抱えやすいからです。人間関係のもつれから、二次障害を起こすこともあります。

だから…大切な、思春期の時期を乗り越えるためにも、服薬は必要かと…」



 こういうアドバイスの場合「薬をやめたほうがいい」というアドバイスより(薬をやめるように言うのは、とても危険なことかもしれない)、「飲み続けたほうがいい」というアドバイスのほうが、他人の意見としては「無難」だろうから、そういう回答が出やすいのだろうが、私の立場から言わせれば、やはり無責任としか言いようがない。

 前にもコンサータの副作用や長期服用に関しては記事にしたが、さらに今回は浜六郎氏の論文を引用します。

 こんなのを読んでもなお、やめたいと言っている母親に対して「いや、飲み続けたほうがいい」と言えるのだろうか。




浜六郎の臨床副作用ノート ~メチルフェニデートによる精神病~

 http://medical-confidential.com/confidential/2013/02/post-512.html


覚醒剤としての害のパターン

 米食品医薬品局(FDA)に集められている世界中のメチルフェニデートの副作用(害反応)報告(即効錠のリタリンもふくめたもの)の分析では、15000件近くの報告に約5万件もの副作用名が記載されている(https://www.rxisk.org/Default.aspx)。

 その中で目立つ害反応は、精神病・統合失調症関連反応、自殺・殺人など自害・他害行為、突然死、成長障害などである。精神病224件、統合失調症関連反応47件、幻覚253件、幻聴138件、幻視147件、妄想・パラノイア207件、自殺関連950件(自殺既遂186、自殺企図293、自殺念慮385など)、攻撃性・敵意・激越1070件(殺人17、殺人念慮33、攻撃性544、激越361など)、突然死71人、成長遅延198件、成長ホルモン欠乏または減少15件、思春期発現遅延14件、うつ病416件、不整脈101件、うっ血性心筋障害21件、などである。

 成長障害は、おそらく摂食障害と成長ホルモン減少のためだと考えられている。男性の性的成熟の遅れが報告され、動物実験でも確認されている。


依存・うつ病・感作(逆耐性)・精神病・心毒性

 生後20日から35日までの小児期の動物(人の6歳から12歳に相当)にメチルフェニデートを投与しておくと、成熟してから、砂糖など自然の快感に鈍くなり、新しい環境で動きが鈍くなり、うつ傾向が増し、難問に遭遇して行動を停止し、性行動が減退するようになった

また、ストレスを加えると、より多くのステロイドホルモンを分泌するようになった。つまり、より強くストレスを感じるようになったことを示している。

コカインに過敏反応(感作)を示した実験結果もある。

これらの結果は、通常の刺激に鈍くなる(耐性)、不安が増す、うつ病が生じる、ストレス刺激に対する感作が成立するという、典型的な覚醒剤中毒症状がメチルフェニデートでも生じるということを意味している

 感作は、覚醒剤を使っていて中止後、再使用時には、以前より少量で過剰反応が生じる現象をいう。その際、当初得られていた快感は少なく、不快な症状が過剰に現れるのが特徴である。小さな刺激でも、より強くストレスを感じるようになるのは、自己のアドレナリン等カテコラミンに対して過敏反応を生じるためと考えられる。

 実際、覚醒剤精神病がメチルフェニデートで報告されている。ADHDと診断された192人の小児のうち98人にメチルフェニデートが用いられ平均19か月観察した結果、9人に精神病症状が出現し、うち3人は典型的な覚せい剤中毒性精神病の診断基準に合致したものだったという。中止によりおおむね改善したが、その後、3人には精神障害(1人は広汎性発達障害、2人は双極性障害)が持続した。他に、11人(12%)にうつ病が生じ、うち1人は入院を要した。

 覚醒剤を繰り返し用いると、脳の神経細胞が興奮毒性により壊死し、脳内の報酬系神経系統に独特の神経回路が出来上がり、しかも、その神経回路形成に必要なたんぱく質を作る遺伝子に恒久的な変化が生じる結果、その回路がいったんでき上がると、元に戻らなくなるとされる

 そしてメチルフェニデートによる興奮毒性増強作用や、でき上がった神経回路の特徴は、アンフェタミンなどでできた神経回路の特徴とよく似たものであった。

 メチルフェニデートは交感神経を刺激し続けるため、心毒性があり、心筋傷害や弁膜症、重症の不整脈から突然死も起こる

(略)


覚醒剤としての長期安全性調査は不十分

 覚醒剤を小児に使用して安全かどうかの判断には、無治療ADHD児と、メチルフェニデート使用ADHD児の長期比較が必要である。

 2つのランダム化比較試験で短期間(12週間もしくは18週間)メチルフェニデートを用いた子39人とプラセボを用いた子63人(試験時年齢は7歳~12歳)を、試験後は薬物を服用せず平均16年間追跡した。薬物依存の割合は、メチルフェニデート群では41%、プラセボ群は36.5%で有意の差はなかった、とされた。しかし、メチルフェニデート使用群では、複数の薬物に依存状態になっている子が多い傾向があった(1人平均の薬物依存が0.850.70)。したがって、メチルフェニデートが用いられた期間が長期で大人数を追跡すれば薬物依存が生じうる可能性は否定できない

 ADHDの子218人とADHDでない子182人を(ADHD児は、メチルフェニデート不使用と、1年未満使用、1年以上使用の3群に分けて)長期間追跡し、アルコールやマリファナ、コカインなどの薬物依存の罹患を調べた調査では、コカイン依存は、非ADHD(年齢マッチ)10%に対して、メチルフェニデート不使用ADHD15%、1年未満使用ADHD18%、1年以上使用ADHD27%と、メチルフェニデートの使用期間が長いほど依存の割合が高かった

 ADHDの程度が強いほどメチルフェニデートも長期に使われる可能性があり、それが交絡している可能性は否定できないが、メチルフェニデートの性質からして、依存の害を否定することも出来ない。覚醒剤精神病でも、半数以上が1年以上連用後に生じているため、このデータも決して無視できるものではない。

現時点での結論

 コンサータの成分メチルフェニデートは覚醒剤であり、一時的な使用でも、精神にも身体にも不可逆的な害を与える危険性が高い。