38歳の男性から遅発性ジスキネジアの被害報告が寄せられましたので、紹介します。

 この方は、ご自身でもブログをやっている――「ふくちゃんの部屋」というタイトルですので、仮に福原さんとします。




不安感から受診

 今から5年半ほど前、福原さんは仕事(会社員)の面や家庭面で非常な忙しさとなり、さまざまな軋轢のなか、不安を感じるようになったことからメンタルクリニックを受診した。そこでの診断はうつ病。抗うつ薬等が処方された。

 しかし、薬を飲むと異様な眠気に襲われて、車を運転している時など、睡魔が襲ってきて一瞬記憶がないことがたびたびあった。

 それでも薬を飲みながら、妻と2人の子供のため、仕事をしながら治療を続けた。福原さんは当時を振り返って

その頃は、一般に言われているように、抗うつ薬を飲んで、十分な休養をとれば、2、3ヶ月で治ると思っていました。薬で治ると思っていたという方が正しいと思います」という。

 しかし、2年近く通ったが、一向によくなる兆候はない。

原因のわからない不安感、憂うつな感じ……会社も休みがちになった。そんな福原さんの異変に上司が気づいて、休職へと追い込まれる。その頃には診断名は「難治性のうつ病」となっていた。

 上司の勧めもあって、福原さんはメンタルクリニックから大学病院に転院した。担当の医師は、「抗うつ薬が十分な量、処方されていなかった」ということで、「効果のありそうな抗うつ薬を組み合わせて」処方された。

そこでの治療は半年ほど。しかし、やはり改善の様子は見られず、結局、外来では限度があるということで入院することになった。通院中の大学病院は入院まで2週間ほど待たなければならなかったので、すぐに入院できる個人の精神科病院に入院することになった。


 

それより少し前のことだが、福原さんは休職中ということもあり、焦りの気持ちが募り、お金の心配も出てきた。そして、それまでやったことのない競馬にのめり込むようになる。結果、数百万円つぎ込み、貯金は底をついた。

薬によって頭がぼーっとしていて、判断能力が麻痺していたせい、と福原さんは言うが、抗うつ薬の影響からか、こうした行動に出る人は意外に多い。




うつにもかかわらず、1年以上にわたる抗精神病薬投与

 個人病院への入院は2年前の暮のことだった。福原さんは正月を閉鎖病棟で過ごすことになった。

 入院は2ヶ月ほど。福原さんは入院中服用している薬の説明は受けていない。したがって、自分が何を飲まされていたのかはわからない。また、担当医は週に1、2度様子を見にくるだけだった。

 そして退院後も外来で入院時の担当医の元、治療を続けた。

 しかし、不安感はずっと強く続いたままである。




 外来で処方された薬は、一日量で以下の通り。

デパケンR(気分安定薬、抗うつ薬補強)600mg

リーマス(気分安定薬、抗うつ薬補強)600mg

アナフラニール(抗うつ薬)90mg

ルボックス(抗うつ薬)150mg

レボトミン(定型抗精神病薬、睡眠改善?)25mg

セロクエル(非定型抗精神病薬、睡眠改善?)400mg

リスペリドン内服液mgml「ヨシトミ」0.1%(非定型抗精神病薬、不安対策)1.0ml

マイスリー(睡眠薬)10mg

レンドルミンD(睡眠薬)0.25mg

ハルシオン(睡眠薬)0.25mg
マグミット(下剤)990mg




 ものすごい量と種類である。しかし、こうした処方が、時に多少の変更を加えられながらも通院中1年ほど続くことになる。変更とは、たとえば、非定型抗精神病薬のエビリファイジプレキサザイディスルーランがとっかえひっかえ処方され、あるいは、定型抗精神病薬のレボトミンが増量されたり……。

 しかし、当時、福原さんは薬を飲めば治ると信じ込んでいたので、疑いもせず飲み続けた。薬は一回分が袋にまとめて入れていたので、食後に機械的に飲む感じだった。しかし、相変わらず、原因のわからない不安感は続いていた。

 それどころか薬のせいで、ご飯を食べながら記憶が飛んだり……奥さんに言わせると、ご飯を食べながら寝ているような状態。そして、おねしょをしても、その自覚も記憶もないという。




アカシジア、体のこわばり

 会社勤めをしながらの治療だったが、会社でも席にじっと座っていられないため、結局退職通知が出されたものの、治療を続けながらなんとか復職に向けて準備をし、昨年1月復職を果たしている。

 しかし、その1ヵ月後、激うつ状態に陥った。

 当時の服薬は、

リーマス(気分安定薬、抗うつ薬補強)900mg

レメロン(抗うつ薬、NaSSA)30mg

マイスリー(睡眠薬)10mg

レンドルミンD(睡眠薬)0.25mg

エビリファイ(非定型抗精神病薬、寝る前)6mg

デパス(抗不安薬)1mg




 主治医にうつ状態を告げると、レメロンが30mgから45mgに増量され、非定型抗精神病薬のルーランが追加となった。

すると、気分は若干持ち上がったものの、体がこわばり、そわそわ落ち着かなく、じっとしていられなくなった。むずむず脚症候群のような状態にもなり、主治医に言うと、またしてもルーランが増量された。

 しかし、落ち着かないような気分は変わらず続き、アカシジアのような症状も出現。

 2月には、体がこわばる感じ、つまずくことが多くなり、それを医師に告げると、副作用止めとしてピレチア50㎎が追加で処方された。

 ピレチアを飲んでも、落ち着かなさは改善されず、家の中をウロウロ歩きまわっていることが多くなり、それを訴えると、ピレチアがさらに100㎎に増量された。(ついでに下剤も追加)。




 医師は、福原さんが不安感を強く訴えたので、不安改善として抗精神病薬を処方し続けたということである

 しかし、ルーラン、さらにはリントン(定型抗精神病薬)9㎎を飲んでも、効果はまったくない。それどころか、からだのこわばりを強く感じるようになり、アカシジアも悪化。そして、体重は外来通院のこの1年で15キロ増え、落ち着かない気持ちは薬を飲めば飲むほどどんどん悪くなっていった。

さらに、3月になると、三環系抗うつ薬のアモキサン50㎎が追加。それを期に、便秘がひどくなり、また口、喉が異様に渇き、睡眠が困難になったため、福原さんは薬に対して危機感を抱き、自分の判断で減らし始める。



 そのときの服薬は、

 リーマス(気分安定薬、抗うつ薬補強)900mg

レメロン(抗うつ薬、NaSSA)45mg

マイスリー(睡眠薬)10m

レンドルミンD(睡眠薬)0.25mg

ユーパン(抗不安薬)3mg

 

4月、5月と、うつ状態や落ち着きのない状態はずっと続いていたが、たまたま飲んだラフマ(羅布麻・キョウチクトウ科の多年草)成分のサプリメントが効果があり、飲み始めて2週間後くらいには不安感もかなり改善された。

 そして、6月、状態は少しずつよくなっていく。




目に症状が……

 しかし、その一方で、4月くらいから、目がしょぼしょぼして開きずらくなり、眩しさを強く感じるようになった。

 その頃、主治医が転院となり、新たな医師が担当となった。

 うつ、不安感はサプリメントのおかげか、改善されていったが、目の状態は日増しに悪くなっていく。目だけでなく、顔や口まで勝手に動く。

しかし、それを新しい主治医に訴えても、頑として薬の変更はしてくれなかった。

 6月、たまらず眼科を受診したところ、眼瞼痙攣(ジストニア)と診断された。眼科医は、精神科の薬の副作用を疑い、薬の調整をしてもらうよう福原さんはアドバイスを受けた。

その時飲んでいた薬は、1日量として

レメロン(抗うつ薬)45mg

リーマス(抗うつ薬の補強として)900mg

マイスリー(睡眠薬)10mg

レンドルミンD(睡眠薬)0.25mg

ユーパン(抗不安薬)3mg

 


 福原さんはさっそく精神科の主治医に眼科でのことを告げたが、医師は、今飲んでいる薬のなかに、眼瞼痙攣(ジストニア)副作用を起こす薬はない、ときっぱりと否定

 過去に飲んでいた薬についての踏み込んだ話にはならなかった

 その後も受診のたびに目の症状が進んでいることを告げたが、薬の変更や減薬の話は聞き入れられず、福原さんの中に主治医への不信感がつもっていく。

 そこでまたしても自分の判断で、ネット等の情報を頼りに減薬をすすめ、8月末には、レメロン(2錠)30mgとリーマス300mgを飲むだけになった。