バッファローさんから、SSRIに関する情報をいくつか寄せていただきましたので紹介します。

「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)等について」

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0508-4j.pdf




これは昨年(2009年)5月に抗うつ薬の添付文書が改定されたときの資料です。

2009年5月8日読売新聞より

「抗うつ薬を服用した患者に、他人に突然、暴力をふるうなど攻撃性が増す症状が表れたとの報告が約40件寄せられたため、厚生労働省は8日、「調査の結果、因果関係が否定できない症例がある」として、使用上の注意を改訂することを決めた。



 対象となっているのは①塩酸パロキセチン水和物(パキシル)②マレイン酸フルボキサミン(ルボックス、デプロメール) ③塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト) ④塩酸ミルナシプラン(トレドミン)SNRIの4薬品。




また、この資料には、副作用報告として具体的な他害行為が列挙されています。たとえば、

「ナイフを振りかざす。病院スタッフへの暴言、暴行」

「反抗的態度。興奮、噛みつく」

「交通違反にて検挙された際、急に怒り出し拳銃を奪い取ろうとする。父親と喧嘩をし、窓ガラスを割る」

「電話で主治医をののしり、自殺するという。母親に対して皆殺しにしてやるといい、刃物で自分や母親を切る。灯油を撒いて火をつける。襖を破って物を投げる」

「喧嘩、他人の首を刀で差し、逮捕された」

「登校中の女子学生に殴りかかる」

「妻を刺殺」

「夫に物を投げつける」

「攻撃的な感情で子供に対しての怒り方がひどい」

etc.




フルボキサミン(ルボックス)による自害他害念慮

たまたまこれに関連する報告が寄せられているので、以下、その方の例を紹介します。



29歳の女性。

自分を無価値と思い、感情のコントロールができず、眠れない日々が続いていた。外に出るのが怖くて一年間ほどひきこもったあと、病院へ行くべきかと悩んだが、病院へ行くことさえ怖かった。しかし、何か解決するかもしれないとの思いから、一年半ほど前、自分を鼓舞して近くの割に有名な精神科の病院を受診したという。

この方は、死にたいという気持ちをどうすることもできず、携帯でいろいろ見ていたときに、このブログを見つけ、メールをくださった。



まず処方されたのが、フルボキサミン(ルボックス)、その他、である。

飲み始めてしばらくすると、食欲がまったくなくなり、半年後には体重が30キロになっていた。

病気が悪化したために痩せたと医師は判断し、「もっと強い薬にしなくては」と言ったが、それは飲む気にはならなかった。

その後、過呼吸となり、自殺願望も出てきた。自分の頭を壁に打ち付けたり、あるいは、人の笑い声を聞いたりすると、殺したいという気持ちになった

声も出なくなった(1年前から)。

そして、この夏、飲まなくなって溜まりに溜まっていたルボックスをアルコールと一緒に飲み、自殺を図ってしまう。幸い、命に別状はなかったが、回復後、今度はひどい過食となった。

無意識のうちに暴力的思考が湧いてくる。強い自殺願望……。そのため、久しぶりに(3ヵ月ぶり)気力を絞って病院に行ったところ、医師は、こう言ったという。

「太ったからもう治ったね! もう来なくても大丈夫だから。 声もいい加減出さなきゃだめなんだよ」



「こんなものです。
私の知人も 同じ医者に通っていて、ルボックスを飲まされたり、いきなり別の薬に変わったりで、とうとう電車に飛び込み亡くなってしまいました。(私はその知人が通っているということで同じ病院を選んだのですが)。

ルボックスを飲んでもよい兆候はまったくありませんでした(ルボックスは副作用が一番少ないと本にはありましたが)。

それで一度リスパダールを処方されたのですが、それを飲んだ瞬間、苦しくなり、心臓が痛くて、体が動かなくなり、死ぬなと感じました。どうにか医者に電話をしたところ、看護師が出て、「そんな副作用はないしそんなにまで言うなら 意味ないけど また来ればいいじゃない」と。こんな苦しい状態で車の運転などできるはずもなく、朦朧とした意識の中、涙が出てきました。

その後、横になり眠ってしまったのでしょう。起きて時計を見ると、1日半ほど過ぎていたのを知りました。

現在は、薬は飲んでいませんが、眠れない、分裂した思いなどがあり、外に出るのが怖いです。失声症にも苦しんでいます。

今は一人暮らしをしています。

薬を飲み始めた当初、何度か母親の住むところに助けを求めたのですが、母への暴力的な発言何かしていないといられないような焦燥感があり、かなり迷惑をかけたため、ひとり暮らしをするしかない状態なのです。



ルボックスを飲み1ヶ月、その頃からすでに善悪の判断というのは鈍っていたように思います。突然引っ越しを思い立ち、不動産屋に飛び込んで、いろいろ部屋を見て回り、契約までしてしまいました。その後、解約しようとしたのですが、ダメでした。こんなふうに不必要な行動をとってしまったり、また、買い物に行っても、途中で何をしにきたのかわからなくなり、長い時間ただ歩き回ったりしたこともあります。

副作用は、当の本人でさえ、そのときは まったくわからないのですが、苦しみは 募るばかりでした。

医者は無知だと経験で知りました。

もっときちんと、患者の一人一人を大切に考えて、医者だから知っているなどと優越感を抱かないでいてほしいです。

実際の経験談ですので、お役にたてるのなら、ブログに載せていただけたら嬉しいです。」




SSRI・SNRIによる敵意・攻撃性の調査結果

最初に紹介した結果を踏まえて、(医薬品・医療機器等安全性情報№258 2009年6月)では、「選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)等と攻撃性等について」として、以下のような「敵意/攻撃性」の副作用報告の数字を挙げています。(それぞれ発売開始から平成21年3月までに寄せられた報告数)

http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/258-1.pdf



医薬品名(商品名)

敵意、攻撃性等

傷害行為(因果関係否定できず)

フルボキサミンマレイン酸塩

(ルボックス、デプロメール)

65件

7件(2件)

パロキセチン塩酸塩水和物     

(パキシル)

173件

26件(2件)

塩酸セルトラリン

(ジェイゾロフト)

15件

2件(0件)

ミルナシプラン塩酸塩

(トレドミン)

15件

※0件(0件)

※症例の経過から傷害等の他害行為につながる可能性があったものが4件ある。




 ここで傷害行為と薬品との因果関係が否定できないものは、わずか4件ですが、この数字をどう見るか、いろいろ意見の分かれるところだろうと思います。

 上記女性の場合は、ルボックス服用で、敵意、攻撃性、自害(未遂)、他害念慮が出ています。もちろん、彼女の主治医の対応の仕方から、彼女のケースが副作用として報告されているとは考えにくいでしょう。


 また、この報告では次のような結果も出ています。

「因果関係が否定できないと評価されたものを含め、因果関係を精査した副作用報告の多くが、躁うつ病患者や統合失調症患者のうつ症状,アルコール依存症やパーソナリティー障害といった併存障害を有する状況において、SSRI又はSNRIを処方されたことにより、興奮、攻撃性、易刺激性等の症状を呈し、他害行為に至ったか、あるいはその併存障害の進展により他害行為が発生したことが疑われた。

このようなことから、SSRI又はSNRIを処方する際には、患者の背景等を十分に踏まえ、躁うつ病の患者、脳の器質的障害又は統合失調症の素因のある患者、衝動性が高い併存障害を有する患者においては、慎重に投与する必要があると評価された。」



とありますが、臨床の現場において、こうしたことにどれほどの注意が払われているか、かなり疑問があります。


また、「SSRI/SNRIと他害行為について 」(医薬品・医療機器等安全性情報 No.261 2009年9月)では男女差による調査結果が出ています。

http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/261-2.pdf

それによると、「SSRIによる自殺の副作用については、女性は、男性に比べて自殺念慮・自殺企図の発生リスクが高く、男性は、女性に比べて自殺行為に至るリスクが高いとされている。本調査においても、女性の症例で、他害行為企図・念慮にとどまっている傾向が見られたのに対して、男性の症例では実際の他害行為に至るものが多い傾向が見られた。」


引き続き、薬による被害の情報をお待ちしております。

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