神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん/竹村 優希 | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ


ページ数:316P
発売日:2016年04月

仕事と恋に疲れた高橋寛人は、亡き祖父のアンティークショップを
継ぐために神戸に移り住んだ。
そこで出会ったのは、お店を間借りしている修理職人の後野茉莉。
古い物に全く興味のない寛人だが、茉莉が修理をするモノに
触れているうちに、"過去"を修理する勇気をもらう…
茉莉のもとには、今日も様々な修理の依頼が届いてくる。
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初めましての作家さんです。
続編が出ているので、シリーズですね。

タイトルからして、割とありがちな内容かと思ったんですが
ちょっと違ってました。

「あとのまつりと、祭りのはじまり」
両親が離婚して、大好きだった祖父:万と離れることになった寛人。
そして寛人が社会人になった頃に、万から店を継いで欲しいと
連絡があった。
戸惑った寛人ではあったが、了承した直後に万は亡くなった。

アンティーク堂と言っても、店にあるのは
寛人からみたら、ただの我楽多。
価値のあるものが置いてあるとは思えない。
そこで働いているのが後野茉莉(アトノマツリ)
仕事している時は、いないのと同じと言われていたように
仕事に熱中すると、話しかけても気付かない(^◇^;)
寛人は、店とは不釣り合いのノートパソコンを使い、
辞めた会社関係の仕事を個人的に請け負ってやりはじめる。
最初の話は、物語の背景って感じでしょうか。

「古い時計と、壊れたまま蓋をした過去」
「古いビデオデッキに閉じ込められた秘密」
「時間を止めるパズルピース」
「オメロの約束」
「会いたいと鳴く車いす 会いたいと語る花」


全てが修理に持ち込まれる品物ではない。
遺品のパズルを完成させて欲しいとか、無理やり押し付けられた
古いスーツのスカートもあるけれど、昔から店に飾られていた
店の顔ともいえるバイオリンをよこせというガキまで出てくる。
更には、店に飾られていた壊れたバスの玩具だったり・・・

そんな新しい出会いと、アンティークに囲まれて
寛人は、アンティークの価値も知らない自分に
店を継ぐ資格がないのでは・・・と思い続けている。

ひとつひとつのエピソードの中に、思い出が隠れていて
それが明かされるたびに、万さんの優しさや思いが
伝わってくる。

僕にとってはゴミでも、万さんが大切にしてたものなら
大切ですから。


思い出を守る方法を知っていることが羨ましいです。

そんな寛人のセリフからもわかるように、これは
万さんとの思い出と想いを探すお話でもある。

すてきなセリフもたくさんあって、思いの打ち明け方や
ぶつけ方も色々あって、他の修理屋さんとは違った
楽しみ方ができました。

大人には対外、どんなに落ち込んでいても
人と話すときに平常心を装うという機能が備わっている。
社会で生きていくために必要で、けれどもとても悲しい機能だ。


遺されたものには、たとえ本人が意図しなくても、
メッセージが存在するのかもしれない。


そして、店にあるアンティークの扇風機。
寛人と茉莉は、それをメーカー名で読んでいる。
マレリー・・・なんかカッコイイ
海外製のアンティークだから、何気に様になっているが
これが日本製だと、カッコつかないってエピソードが笑えた。