ページ数:90P
発売日:2004年02月
訳: 望月 紀子
一冊の本が、古書店の片隅で買い手が現れるのを待っている。
ヴァカンスまでに売れなければ廃棄処分、と宣告されて。
ちょっと身につまされる本の独白。
60年前、新刊書店に並んだときの晴れがましさ。
初めて女性の手でページをめくられたとき。
本棚の隣人たち。売れる本への嫉妬。
リサイクルされて段ボールになる恐怖―。
“ぼく”=本は生きていて、浮き沈みもあれば、感情もある。
伝えたいこともいっぱいある。
テレビ、コンピュータ、携帯電話が登場したショックも
生きのびたんだ。まだまだやれるよ。
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初めましての作家さん。
今まで本に纏わる物語とか、書店をモチーフにした物語とか
本に係わる物語はいくつか読んできた。
が、本書の語り手の「ぼく」は、一冊の本。
本目線の人生の体験談なのですよ
ぼくは古書店の片隅で客が自分を買ってくれるかどうかを
期待と不安と恐れの入り混じった状態で待っている。
何故なら、ヴァカンスまでに売れなければ
リサイクル=古紙として廃棄処分されてしまうからだ。
ビクビクしながらも、次の持ち主は女性がいいなぁ~
などと思ってみたり・・・(やはり男だなぁ)
彼は今まで3度持ち主が変わっている。
古書店に持ち込まれるたびに、本達との交流があって
先に買われていく本に嫉妬心を燃やしたりもする。
カバーが外れた状態なので見た目にも不利かもしれない
しかし自分にはまだ伝えられることがあるという自尊心も持っている。
では彼はどんなタイトルで著者は誰なのかが気になるところ。
ところどころにヒントが散りばめられているけれど
それは明かされない。
自分は著者の代表作ではないけれど、ヘミングウェイや
スタインベック級の作品であることや、登場人物の事、
そして著書の作品には詩がないとか・・・
調べようと思ったけど無理でしたぁ~
読書家さんならば探せるかもしれないけど・・・
そして時代は変わり、テレビやインターネットが出現
人が本を手に取る時代が終わるのでは?という恐怖
古書店で売れるために屈辱的なアピールをしたり
他の本を手に取った時に講釈を垂れてみたり
客が近づいてくると心躍らせてみたり・・・
人間的で滑稽な様子も絶体絶命の状態だから理解できる。
彼が振り返った60年の人生は、色々と考えるところもあり
読んでよかったと思いました。
薄い本なので、あっという間に読めます。
本好きさんなら好きな作品になると・・・思いたい。
本の扱いに関しては、たぶん持っているものの中で
なにより大事にしていると思います。
が、読み終わった本に関して、クローゼットの中に
ただ積み重ねていたりしたので、暗かっただろうなぁ~とか
最近はブックオフオンライでばかり購入していたけど
たまには古本屋に足を運んでみようと思いましたよぉ~
だって、アピールしてくれる本がいないかなぁ~なんて
想像しながら探すのも楽しそうだから♪
今年の締めくくりとしては、いい本を読んだぁ~♪ d(⌒o⌒)b♪