
サ イ ズ:373P 15cm
トールキン、ラヴクラフト、稲垣足穂等に多大な影響を与えた
ファンタジーの源流。
いまなお魔法のきらめきを失わない特別の作家ダンセイニの
初期幻想短篇集二冊を完全収録。
盗賊サンゴブリンドに下された過酷な運命。
“絶無の都”へいたると予言された子供の旅。
老人から買った魔法の窓が見せたもの。水夫が偶然知った海の秘密…。
神話的な物語に、ユーモアに満ちたほら話が織りまぜられた
珠玉の三十三篇。
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初めての作家さんです。
いや・・・ロード・ダンセイニはアイルランドの男爵で、
ダブリン郊外のタラの丘にあるダンセイニ城の
第18代城主だそうです。


タラって、「風と共に去りぬ」のタラらしい。
城の窓から見える風景から、こんな話を作ったのか?
いいなぁ~(*´◇`*)
読み始めは戸惑った。
これは何だ?叙事詩?神話?寓話?御伽噺?
たかだか10ページにも満たないお話ばかりなのに
この描写力は何だ?
現代ファンタジーの源流という言葉が納得できた。
色んな幻想小説の素が、いたるところに散らばっている。
時に情熱的に強引で、狡猾で悲惨で皮肉めいていて
想像力を広げたもん勝ちの世界ですよ。
しかも、ことごとく予測を裏切る。あぁ~(*´◇`*)
これ↓1つのお話の最後なんだけどね。
「したがって、この物語はめでたしめでたしでは終わらないのである」
もうね、それまでの過程を考えると、そんなバカなぁ~って感じ(^◇^;)
10ページにも満たないお話ばかりなのに、踊らされるのよ。
そして挿絵がまた素晴らしい!
Sidney Herbert Sime シドニー・H・サイム

ダンセイニの挿絵は全て彼が描いているそうです。
しかも本作の挿絵は物語の最初に入れられていて
描かれてるのは結末だったりする。
絵を見て、どこに連れられて行くのかわからないのに
ワクワク感が止まらない。
最初のケンタウロスのお話からやられっぱなし。
美しい女の噂は野を越え山を越え人里を越え
神のところにまで届く。
ケンタウロスの主人公は数百回目の誕生日に
美しい乙女のいる人里から更に奥を目指す。
もちろん強引にかっさらって来る。
かっさらい方がメチャクチャ強引なのに
最後の一言で感動するのよ。
かぐや姫に求婚していた都の男たちにも
これくらいの強引さがあったなら
もしかしたら、かぐや姫も月には帰らなかったかも?
なんてことまで思ってしまった。
これは、通常の短編ファンタジーを連想してはいけません。
あくまでも源流であって、叙事詩をイメージした方がいいです。
でも魔法の素、幻想の素がたぁ~っくさん詰まってます。
これを題材にして、腕のいい人なら長編に仕上げられるわねぇ
読むのに時間がかかったのは、同じところを繰り返し
読んでしまったからなの(^◇^;)
時に意味不明で読み返したこともあったけど・・・
オチで気に入ったのが、「流浪者クラブ」
ダンセイニの時代から、そういう位置づけだったのねぇと
哀れに思ってみたり(○ ̄m ̄)
mokkoの妄想力は益々鍛えられましたとさо(ж>▽<)y ☆
I 驚異の書
「ケンタウロスの花嫁」
250回目の誕生日を迎えた朝、ケンタウロスのシェパラルクは
麗しき乙女ソンベレーネの都をめざす
「宝石屋サンゴブリンド、並びに彼を見舞った凶運にまつわる悲惨な物語」
宝石屋サンゴブリンドの生業は盗賊。豪商の娘の魂と引き換えに
蜘蛛神像の膝に乗っているダイヤを盗りに行くのだが・・・
「スフィンクスの館」
スフィンクスの館で熱烈な歓迎を受けたのに、館の人達は
閂を下ろした扉が気になり、スフィンクスは不機嫌だった。
「三人の文士に降りかかった有り得べき冒険」
流浪の民は歌の持ち合わせがなくなり、詩篇をおさめてあるという
黄金の箱を盗むことにした。
「偶像崇拝者ポンボの身の程知らずな願い」
神に対する礼を無視して願いを叶えてもらえなかったポンボは、
偶像を崇拝するようになったが、偶像神も願いを叶えてくれず
復讐することを思い立つのだが・・・
「ボンバシャーナの戦利品」
海賊のシャード船長には、有名になりすぎたせいで安住の地はなかった。
そこで南の女王を拐い、仲間たちと浮島に暮らす計画を立てた。
「ミス・カビッジと伝説(ロマンス)の国のドラゴン」
バルコニーに腰掛け、絵のモデルをしていた18才のミス・カビッジ目指して
黄金の鱗を鳴らしてドラゴンが近づいてくるが誰も気付かない。
「女王の涙をもとめて」
王家の血を継ぐ騎士たちは、女王に涙を流させることができれば、
その愛も勝ち得ることができると知らされ・・・
「ギベリン族の宝蔵」
人間が大好物のギベリン族は、宝石が大好きな人間の撒き餌として、
川べりの塔の地下蔵に大量のエメラルドやサファイアを隠し持っていた。
「ナス氏とノール族の知恵比べ」
一流の盗人であるナス氏のところに、老婦人が息子を連れてきて
弟子にしてほしいという。 息子はメキメキ上達し・・・
「彼はいかにして予言の告げたごとく〈絶無の都〉へいたったのか」
その子供は〈絶無の都〉に行くことを知っていた。
放浪の老婆からもらった魔法の手綱を使って行くのだ。
「トーマス・シャップ氏の戴冠式」
トーマス・シャップ氏は、空想の世界にいるのが好きだった。
しかし仕事の卑しさに気付いてからは、ますます空想にのめりこんでいった。
「チュー・ブとシーミッシュ」
チュー・ブの神殿に鎮座するチュー・ブの神像は、唯一の神のはずだった。
しかし、隣に新しいシューミッシュの神像を置かれてしまった。
「驚異の窓」
スラッデン氏は、見知らぬ老人に魔法の窓を売ってもらい
部屋に設置してもらったのだが、その窓から向こうを覗いてみると・・・。
II 驚異の物語
「ロンドンの話」
バグダッドのスルタンは、ハシッシュ吸引者に向かい、ロンドンの夢を見よと命じた。
ハシッシュ吸引者の語るロンドンとは・・・
「食卓の十三人」
猟で遠出をし過ぎ、古い屋敷に一夜の宿を求めたのだが、よりにもよって
幽霊と夕食を共にすることになり・・・
「マリントン・ムーアの都」
社交シーズンのロンドンを逃げ出した私は、旅の途中、
一人の老羊飼いしか見たことがないという、マリントン・ムーアの都の噂を耳にした。
「なぜ牛乳屋(ミルクマン)は夜明けに気づいたときに戦慄き震えたのか」
牛乳屋の古風な組合ホールで、組合員たちは今日もまた、
「なぜ牛乳屋は夜明けに気づいたときに戦慄き震えたか」について話している。
「黒衣の邪な老婆」
黒衣の邪な老婆が牛肉屋の通りを駆け抜けていった。
人々は不安げな顔を寄せ合い話し合った。
「強情な目をした鳥」
<強情な目をした鳥>からエメラルドの卵を手に入れる方法を知った
ニッピー・サン氏は、世界の涯へと出掛けていった。
「老門番の話」
トン・トン・タラップの砦の老門番は、他に知る者のない話を多く知っている。
世界の涯でしか聴けない歌を聞くためにジェラルド・ジョーンズは、
ロンドンから老門番に会いに行った。
「ロマの掠奪」
ロマの都を廃墟とし、略奪品を抱えて崖道をたどる4人の男は、
略奪品の一つである黄金の神像に怯えはじめた。
「海の秘密」
ノームとの取引で手に入れたゴルゴンディ・ワインで、私はようやく
相棒の秘めた話を聞くことができた。
「アリが煤色の地(ブラック・カントリー)を訪れた顛末」
ロンドンに住む床屋のシューシャンと入れ歯づくりのシェプは、
イングランドを救うため、ペルシャからアリを呼び寄せた。
「不幸交換商会」
パリの小さな通りに建つ店「不幸交換商会」では、二十フラン支払えば
自分の不幸を、他人の不幸と取り替えることができると聞き・・・
「陸と海の物語」
海賊船<やけっぱちの雲雀>号のシャード船長が、かつて追いつめられた時に
敢行した驚きの秘策とは・・・。
「赤道の話」
東方遥か彼方の地のスルタンは、詩人たちを呼び出し、
遥か南方の未来を予見させ、その都の素晴らしさを語らせた。
「九死に一生」
ロンドンの地の下、ベルグレイヴ・スクエアの下の大洞窟のなかに住む魔法使いは、
汚れたロンドンを美しいロンドンに戻すため、助手をアラビアへ使いに出した。
「望楼」
プロヴァンスの小さな丘の上に座っていると、角笛を持った老人が話しかけてきた。
老人はとうの見張り番たちが集結して生まれた霊だった。
「こうしてプラッシュ・グーは〈誰も行こうとしない国〉にやってきた」
ドワーフのルリッピティ・カンに苛立った巨人族のプラッシュ・グーは、
奴をつかまえて、<誰も行こうとしない国>へ落っことしてやることにした。
「チェスの達人になった三人の水夫の話」
オーヴァーにある古びた酒場で、三人の水夫がチェスの相手を探していた。
誘われたのはなんと世界選手権でも常連の凄腕の棋手スタヴロクラーツだった。
しかし水夫はチェスのことをあまり知らないようで・・・
「流浪者クラブ」
とあるイヴニングパーティーで、神々の凋落について声高に話していた私は、
亡命したエリティヴァリアの前王から、あるクラブでの晩餐に招待された。
「三つの悪魔のジョーク」
ウエスト・エンド・クラブで、自分の奇妙な長所を披露した男は、
それと引き替えに三つのジョークを受けとった。
続編というか短篇集の第二弾も買ってあるの(*^▽^*)
読むのはテーマ読みが終わってからね(*^▽^*)
夢見る人の物語 (河出文庫)/ロード・ダンセイニ
