肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)/デイヴィッド アーモンド
¥735 Amazon.co.jp
引っ越してきたばかりの家。
古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。
ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩には
アオバエの死骸が散らばっている。
アスピリンやテイクアウトの中華料理、
虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。
誰も知らない不可思議な存在。
彼はいったい何?
命の不思議と生の喜びに満ちた、素晴らしい物語。
カーネギー賞、ウィットブレッド賞受賞の傑作。
------------------------
どうしよう・・・
久しぶりにスゴイ本を読んでしまった。
このタイトルを見た時、小川 一水氏の
「イカロスの誕生日」を連想したけど、
あらすじを読む分には全く違う内容だった。
でも読んでる途中で何度か、この本を連想して
主人公のようであったならって思ったけど
大きなお世話でした。
10歳のマイケルは、ファルコナー・ロードの
中古住宅に引っ越してきた。
転校しない代わりにバスで学校に通わなければいけないけど
友達と離れないで済むのなら、そんなのは問題ではない。
中古の家や庭も、あちこち手を入れなければいけないけど
きれいになった家や庭を想像することができた。
唯一気がかりなのが、生まれたばかりで入退院を繰り返している
妹の事だった。
引越し先の庭には今にも倒壊しそうなガレージがあり
危険だからと、立ち入りを禁止されていた。
けれどそこは男の子。親の目を盗んで忍び込んでしまう。
塵と埃とガラクタだらけのガレージの奥でマイケルは彼を見つける。
黒いスーツは埃と蜘蛛の巣と青蠅にまみれ
痩せ衰え、蒼白く乾いた肌の男。
リウマチで指は捻じくれて萎え、間接は腫れあがっている。
「27番と53番」とブラウンエールとアスピリンを欲しがり
笑うけど顔はにこりともしない不可思議な特別な存在、スケリグ。
隣に住む少女ミナは、母親から家で教育を受け、木登りと絵が上手く
学校には通わず、ウィリアム・ブレイク(詩人)の詩を引用する
常識にとらわれない何とも魅力的な少女だ。
スケリグを助けたいと思うマイケルはミナを彼のところに連れて行き
二人は協力し合うことになる。
ミナとマイケルのやり取りから、いつの間にか忘れてしまっていた
たくさんの事を思い出した。
小さい頃は実にたくさんのことを考えている。
マイケルにも気がかりなものや不安がたくさんあった。
友達との微妙な関係や、ミナの事、病気の赤ちゃんの事、
ブラックバード、フクロウ、雛、サッカー、宿題、荒れた庭、
崩れそうなガレージ、スケリグ
その全てが微妙に絶妙に絡み合い物語は進みます。
あまり内容に触れると感動が薄れるので書かないけど
少しずつ少しずつ、ユラユラと揺れながら満ちて来る水のような
透明でピュアで優しくて、そしてリアルなファンタジー
心がふるえるって、きっとこんな感じを言うんだろうなぁ~
児童文学と侮るなかれ!
余談ですが、本作は1998年に、カーネギー賞とウィットブレッド賞の
児童文学部門賞をダブル受賞しています。
「ハリー・ポッターと賢者の石」を抑えて受賞したというのが
納得できる作品です。
イカロスの誕生日 (ソノラマ文庫)/小川 一水
¥600 Amazon.co.jp