生き屏風 (角川ホラー文庫)/田辺 青蛙
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村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。
病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、
夏になると屏風が喋るのだという。
屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。
そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。
嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と
打ち解けるようになっていき?。
しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
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表題作のほかに「猫雪」「妖狐の宴」を収録
これはMirokuさん のレビューを読んで即購入。
初めての作家さんです。
たぶん、mokkoが釣れるとヨンデいたMirokuさんは
「1行目でコロリですよ」とコメントをくれました。
その1行目が↓
皐月はいつも馬の首の中で眠っている。
( ° ▽ ° ;) エッ
そして朝になると血塗れで地面に落ちている
馬の首を再び繋ぐ。
( ̄O ̄;) ウォッ
馬の名前は布団と言うらしい。そのまんまだ。
o(゚◇゚o)ホエ?
これは何だ?
さすがホラー大賞!って感じの血生臭い書き出しで
予想を裏切らず、1行でハートを鷲掴みにしたのに
この緩さは何だ?
たった5行で釘付けにされてしまったではないか!
主人公は妖鬼の皐月。目の色と額の小さな角以外は
普通の少女のような姿である。
皐月は県境で余所の土地から好くないモノ(病とか)が
来ないように守っている妖である。
この作品世界では、人が妖の存在を認めている。
お地蔵さんにするように皐月にもお供え物をして
ほどよい距離を保ちながら生活している。
(薬屋の面々が望んでいる世界だわ)
屏風に憑いた酒屋の死んだ奥方の話し相手をしながら
奥方と打ち解けて、同情するようになる皐月。
淡々と語られているのに、皐月の暖かさを感じるのだ。
退屈だと言う奥方の為に語る皐月の話は
ラフィク・シャミの「夜の語り部」を思い出した。
知らないうちに語りに引き込まれている。
生きていくだけで精一杯の皐月は、容姿や力を
人間に小ばかにされながらも、捻くれたりせず
わからないことには助言を求めるという素直さもある。
妖狐は半人前な皐月が心配らしいけど・・・(^◇^;)
人と妖がそれぞれに振り返る思い出や想いは
どこか滑稽で、それでいて切ない。
「猫雪」では、男が雪にしてもらうという話なんだけど
その描写のなんと素晴らしいこと!
雪になって舞い落ちるなんて想像すらしたことなかったわ。
猫先生の緩さも妙に気に入った(○ ̄m ̄)
「妖狐の宴」で妖狐の銀華が教えてくれた
ヤモリの黒焼きは、実験してみたくなるなぁ~(○ ̄m ̄)
どの短編も結末が優しい気持ちになれるのがいい。
そして、飲み食いのシーンがもの凄くそそられます。
鉄砲水(薄荷味の炭酸水?)を初めて口にするところとか
梅の実の砂糖漬けや西瓜を食べるところとか
桜の実の色が移った赤い色の酒を飲むところとか
思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまいます(^◇^;)
癒し系ホラー?いや、これは「家守綺譚」のような
ファンタジーだと思う。
楽しませていただきました8(^∇^8)(8^∇^)8
続編の「魂追い」が出てるので読まなくっちゃ。
いつだ??
魂追い (角川ホラー文庫)/田辺 青蛙
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表紙は皐月と猫先生かな?
イイカンジだわぁ~
(○ ̄m ̄)