黒死館殺人事件 (河出文庫)/小栗 虫太郎
¥945 Amazon.co.jp
黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、
屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。
奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎が
エンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。
江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、
悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。
------------------------
あぁ~読み終わるまで約3ヶ月かかってしまった。
こんだけ苦労して本を読んだ事は無いぞ!
三大奇書の1冊というから、ある程度の覚悟はしていた。
しかし、そのうちの1冊であるドグラ・マグラが
結構mokko好みだったので、大丈夫だとも思っていた。
甘かった・・・いや、とんでもなかった。
まず、漢字が読めない!フリガナはある。
でも、フリガナがなくなると読めない。
しかも旧漢字だから、調べても出てこない文字もある。
初めてワードに漢字と読み仮名を打って印刷したわ!
現代では平仮名表記されてる言葉まで漢字。
まぁ~オカンが生まれる前に書かれたものだから
しかたないのか・・・
更に、ウザイくらいのルビ。漢字で読んだ方が早い。
そして、人物や書籍の解説・・・いい加減にして欲しい。
解説読んでもわかりませんから(ノ_-;)ハア…
この本をニヤリと笑って読むにはどんだけの知識が必要なのか、
考えただけで倒れそうになる。
建築、宗教、歴史、魔術、呪術、神秘学、精神心理学、医学、
化学、ヘブライ文字にアナグラム、符号に暗号、時計に楽器
カバラの原理にアインシュタインからゲーテにファウスト・・・
こういうのを駆使して、法水(のりみず)は推理を展開する。
いや・・・あれを推理といっていいのか?
それすらも疑問だ!
不吉な血の遺伝をもった一族の13代目の算哲が
妻の為に建てたルネサンス様式の城館:黒死館。
算哲の若い息子と、秘書や執事や図書係と
4人の外国人の男女。
これが実に奇妙な住人達なのである。
算哲が血の呪いを受け継いだかのような
不吉な死を迎えた1年後に起こった殺人。
殺人事件が起こったと連絡を受けた法水は
その現場が黒死館と聞いて「ゆっくりしようよ
どうせ予備知識に1~2時間かかると思わなけりゃ・・・」
などとぬかして、検事に黒死館の歴史の知識を
これでもかというくらいに披露する。
説明に引用されてる書物やらのすごい事。
普段なら、この時点で読むのを諦めるところだ。
しかし、その死体は美しく光っていた。
そして、もう1体は醜く歪んでいた。
更に、館の住人達は死んだ算哲の影に怯えている。
気になる・・・
そしてまた法水のウザイ薀蓄が披露され
やっぱりダメだと思ったところで、今度は
算哲の亡き妻を模った自動人形が犯人だと
住人達が騒ぎ出す。
ダメと思ったところで殺人が起こったり、
古代時計室やら驚駭噴水(ウォーターサプライ)やら、
自動人形やら鐘鳴器(カルリロン)やら
ケルベルトの月琴(タンブル)などの小物?が
実に美しく登場するから気を逸らされる。
そして法水の薀蓄推理の間にまたも殺人が!
いらぬ薀蓄を披露している間に、また次の犠牲が出る。
死んではいなかったけど、推理を披露する前に
わかったんなら急げよ!とイライラしてくる。
会話も解説も全てが芝居がかっている。
犯人は館の住人の中にいる。
しかし、それが誰なのかわからない。
1人また1人と殺されたり襲われたりしていく
不可思議な状況から、トリックを暴こうとするが
これがまた抽象的過ぎて理解できない。
どこぞの詩を引用したやりとりでお互いの心情を
探り合うところなんて意味不明。
ルパンの銭形警部に「法水~!逮捕だぁ~」と
法水を公務執行妨害で逮捕して欲しいと何度も思ったわ!
もはやトリックなんてどうでもいい。
犯人と、動機が知りたい。
法水の薀蓄や詩の引用は流し読みをしながら先を続け
そして最後の方で出てきた呪いの正体に愕然としてしまう。
悪趣味としか言いようが無い。
そして因果応報の神(ネメシス)に納得してしまった。
最後まで芝居じみたこの話の最後の言葉は
閉幕(カーテンフォール)である。
やはり奇書だわ・・・
こんなの読んだ事もないし、後味もよろしくない。
脳みそが痺れてる感じ。
しかし最後まで読ませてしまうテクはすごいと思う。
そしてmokkoは法水が好きじゃない!
「ところで君は○○について知っているかい?」とか
「君は○○のことを知っていると思うけど・・・」
そうやって薀蓄を披露するわけだが、このモノの言い方が嫌だ。
まともに話をあわせられた鑑識課の人を尊敬するわ。
っていうか、この著者の知識がすごすぎるわ!
別の意味で呆れるほど感動しました。
オマケで、読めなかった漢字をちょっとだけ・・・
反転させると読みがわかります。
纏綿 てんめん 蜿って のたくって
苦患 くげん 痴面 どうけめん
侏儒 こびと 籬状 まがきがた
文身 いれずみ 娶り めとり
胤 たね 拱廊 そでろうか