蘆屋家の崩壊/津原泰水 | mokkoの現実逃避ブログ

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蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)/津原 泰水
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定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は
豆腐好きが縁で結びついたコンビ。
伯爵の取材に運転手として同行する先々で
なぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。
飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、
富士市では赤い巨人の噂に、榛名山では
謎めいた狛犬に出迎えられ、やがて、
日常世界が幻想地獄に変貌する?。
鬼才が彩る妖しの幻想怪奇短篇集。
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実は2年程前に、別の本を勧められた。

ピカルディの薔薇/津原 泰水
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これがなかなか文庫落ちしない。
で、チェックしてたら前作があるという( ̄O ̄;) ウォッ
どうせ待ってるんだったらってことで購入。


初めての作家さんです。

この先、いつものごとく無駄に長いです<(_ _)>


主人公は三十路過ぎても定職に就けないぐうたら猿渡と
(書いていて痛い)
黒ばかり身につけるからドラキュラ伯爵とあだ名され
仲間内では略して伯爵と呼ばれる怪奇小説作家。

こんな書き方をする人には初めて遭遇しましたよ。
何ていうんだろう・・・
いきなり始まってるっていうの?
理解力が足りないのかと、最初の2~3行を
繰り返し読んでみたりするが、これでいいらしい。


読み進めてるうちに、妙に納得することが書いてあって、
感心してると、いきなり話しが変わる。
さっきの話は何処に行った?と戸惑う。
それでも読み進めていくしかないわけで
でも不必要なものは何ひとつないわけで
気付くと変な世界の真っ只中だったりする。


まったくもって厄介で
妖しいというよりは怪しいというべきか・・・
幻想的というよりは奇妙というべきか・・・


猿渡目線で語られているんだけど、
猿渡も伯爵も、かなりのゆるキャラ。
ヤバイ場面でも、発するセリフがユルイ。
豆腐好きの二人だが、豆腐以外の単純な食材の料理も
実に美味しそうに描かれていて、食べに行きたくなります。


「蘆屋家の崩壊」
「正体は信太の森の白狐である。」
話は「蘆屋道満大内鑑」のあらすじからいきなり始まる。
いわゆる安倍清明誕生秘話でもある。
蘆屋道満といえば安倍清明の敵。
でも大内鑑では、清明の名付け親でいい人です。


そこから話は異なるものに惹かれる心に移り
岐阜白川郷から鳥取と豆腐を食べ歩く車の中で
このまま九州まで行こうかと迷っている時
猿渡は学生時代の話を伯爵にする。


惹かれた女は秦遊離子(はたゆりこ)
美しい女で人間離れした感じで肌が白かった。
蒼ざめているというのではなく、ひたすら白かった。
(もしやこの前見たのはこれ?)
しかし彼女に断られた理由というのが
「きつねが憑いたら困る」と・・・


伯爵の解説では秦という苗字は八百比丘尼の父親と同姓。
秦道満(はたのどうまん)
蘆屋道満と同一視する研究者もいるという。
ここで、最初の蘆屋道満大内鑑の話に繋がる。
そして秦遊離子の住所は小浜
八百比丘尼が入定した空印寺も小浜にあるという。
(はっぴゃくびくに・やおびくに 人魚の肉を食った娘)


猿渡は秦遊離子に会うことにするのだが
道すがら出会った娘も秦遊離子の親戚一同も兄も、
顔がソックリだった。そして・・・


いやぁ~妖しい!妖しいのですよぉ~
色んな意味で面白い作品です。


「猫背の女」
これは怖いですよぉ~
幽霊とかじゃなくて、女が怖いんです。
その話しが「カチカチヤマ」から始まるのも凄い。
やっぱりo(゚◇゚o)ホエ?って思ってしまうけど
読んでると納得するわけですよ。


「カルキノス」
タイトルの意味がわからなかった。
薔薇の字のことを三島由紀夫がどう書いていて
猿渡の猿という字は、それだけ猿だとか
日本にピカソが生まれなかった理由まで語る。
それがまた、なるほどと思ってしまう。
すぐに信用してしまうのは活字の魔力か??


かと思うと今度は大阪の水族館で見た高足蟹の話になる。
o(゚◇゚o)ホエ?
でも高足蟹の話をこんだけわかりやすく説明したのを
初めて聞いた(読んだ)。しかもSFチックに( ´艸`)


そこから星座の話になって、やっとタイトルの意味がわかる。
カニ座のことを「カルキノス」というらしい。
カニ座の人は、すぐにわかったと思うけど
mokkoは射手座(サジタリウス)だから知らない(^◇^;)


そして伯爵の講演に付き合ったついでに
蟹を食おうという話になり、とんでもないことになる。
ちょっとミステリーっぽいか?と思うところもある。
人が殺されて、刑事も出てくるから。
でも最後は、そりゃないべ!って思うんだけど
ゾゾーっとします。
ここでの食材は紅蟹・・・あぁ~


「超鼠記」
これも最初の2~3行は o(゚◇゚o)ホエ?って感じ。
続けて読んでいると、そういう事かとわかる。
いらなく脳みそを捻られる。
これも策略であろう(,,-_-)


デカイ溝鼠の話からヌートリアという鼠の仲間の話
更には猿渡が友人から事務所の1室を借りて住んでいる時
出てくる鼠を駆除するため業者を呼んだら
ウンチクを聞かされ、そして・・・
これも最後、想像すると怖い。というよりキモイ!


「ケルベロス」
「じつは、あのスクリーム・クイーンが・・・」
と、またしてもいきなり始まるo(゚◇゚o)ホエ?
カルキノスに出てくる女優さんが今回のヒロイン?
怪奇小説作家の伯爵が相談を持ちかけられます。


場所は群馬。八つ墓村のようなど田舎。
村を襲っている怪現象。
古い習慣や民間信仰、双子、オキナさん。
若い宮司、イタリアからの帰化宮司。
神社の2体の狛犬と2体のケルベロス、結界。
昔の神様てんこ盛り。


双子の因習はmokkoの田舎の田舎にもあったから
なるほどと思ってしまったけど
これは「蘆屋家の崩壊」くらいに猿渡がピンチで
ドタバタしまくりますが、実に面白い!
ここでの食材は葱と蒟蒻。うまそうなのよぉ~
葱は食わんけど・・・


「埋葬虫」

猿渡の実家は富豪だったが祖父の代で没落。
そこからライカ(カメラ)の話になって
有楽町から歌舞伎座までをブラブラしながら
美味しい料理を妄想していたら大学時代の友人に出くわす。


友人は男と同居している。
ひどく体調を崩していて、長くはないらしい。
妖しい関係ではない。怪しいのである。
虫を食いすぎた男なのだそうだ。
ここでの虫の描写は吐きそうになる。


しかし!!
この男が22~23才のぎょっとする程の美貌で
絵本の王子のような寝顔ときたら・・・
ガラスケースに入れて保存するな・・・
白雪姫の逆バージョンを妄想したわ(^◇^;)


友人は猿渡に森の写真を撮ってくれと頼む。
そして・・・
うあぁ~虫って深い!
これは実に奇妙なお話しでした。


「水牛群」
脳内恐怖物質、とおれが名付けた。
いきなり始まります。
これはトドメです!


猿渡が追い詰められてどうにもならずに
病んでいる状態を描いてます。
ちゃんと伯爵が現実に戻してくれますけど・・・


近い状態になったことのある人もいるはず。
でも感じ方は千差万別。
それをみごとに描いてます。


読んでる最中は、訳がわからないけど
最後にそういうことか!とわかった時に
理解できるはず。
この人の表現ってスゴイわ!!



あぁ~気持ちよく振り回されました。
ピカルディの薔薇の文庫落ちを楽しみに待ちます♪


友達に臨床犯罪学者の火村助教授と本作の伯爵と、

京極堂と榎木津と薬屋の深山木秋がいれば
人生怖いものなしだと思うmokkoなのです。


最後まで読んじゃった方

お疲れ様でした<(_ _)>