- 精霊の守り人 (新潮文庫)/上橋 菜穂子
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老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から
皇子チャグムを託される。
精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる
刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、
バルサは身体を張って戦い続ける。
建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい
緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇る
ロングセラーがついに文庫化。
痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。
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異世界ファンタジーである。
おっと!ファンタジーと聞いて帰ろうとしたあなた。
ちょっとお待ちを!
この物語を、そこらのゲーム世界の物語と
一緒にしてもらっては困るのだよ。
なんせ書いているのが文化人類学者さんですよ。
お手軽に拾い集めた世界観ではないのですよ。
しっかりとした土台の上に成り立った世界なのですよ。
1つの島の先住民、新しく移り住み国を作った民。
先住民の伝承と国に伝わる捻じ曲げられた神話。
星読博士たちによって仕切られる政。
多くの事が現在社会とリンクしているのですよ。
この著者の本は2冊目。
物語に引きずり込むのが上手い。というか早い。
何気ない情景描写と女用心棒バルサの描写
いきなり事が起こり、巻き込まれるバルサ。
3人の妃と2人の皇子。
第二皇子に異変が起こったのを見た星読博士は
よからぬものが皇子に宿った事を知る。
神の子である皇子ならば、そんなものを宿すはずがない。
それが民に知れれば国が傾く。
我が子である第二皇子の暗殺を命じる帝。
命を狙われる12歳の皇子。
二ノ妃に皇子を託されたバルサ。
皇子と用心棒暗殺に放たれた狩人。
そしてまたしても起こる皇子の異変。
皇子の運命は?
バルサは皇子を守りきれるのか?
呪術師は解決策を知っているのか?
託す者と託される者。守る者と守られる者。
狩る者と狩られる者。
登場人物たちも実によく描かれていて
物語の進め方も実にうまい。
緊張の場面と静かな場面が波のように連なり
ドキドキヒヤヒヤわくわくと気持ちが忙しい。
解説を恩田陸さんが書いていたのが嬉しい♪
恩田さん曰く、
大人たちが面白く読める異世界ファンタジーは
冷徹なまなざしを持ち、
鋭く人間を観察できる力を持った真の大人。
それでも尚、本当の夢見る力を持ち続けている
大人が書いたものに限ると書いている。
文化人類学者の描く物語。読まない手はないと思います。
12歳の皇子の運命と決断。
バルサや呪術師、狩人や星読博士達の戦い。
束の間の異世界を大いに楽しんでください。
1話完結とはいえ、シリーズは10冊あるらしい。
シリーズ物には手をつけないようにしていたけれど
これは読まないわけにはいかなくなったわ・・・
十二国記の呪縛のようだわ(^◇^;)
余談ですが・・・
戦いのシーンなんて、舞台背景を泥沼にした
映画「トレマーズ」を連想してしまった(^◇^;)
NHKのアニメ・・・見たかったなぁ~