ボトムズ/ジョー・R・ランズデール | mokkoの現実逃避ブログ

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ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)/ジョー・R・ランズデール
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80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―
11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。
そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。
必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、
そこにも悪夢の光景が。


体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が
木にぶらさがっていたんだ。
ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…
恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
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初めての作家さんです。
何をどう受け取ったのか、本書を購入しようと思うまでに
脳みそが誤作動していたらしい・・・


タイトルのボトムズ(低湿地)を
ボトルズ(ビン)と勘違いしていた。
更に、あらすじを読んで、冒険ファンタジーかと思った。


鉱石&ガラス物に妖しい魅力を感じているもので
ボトルに何かの秘密が隠されているのか?と
過剰な期待を抱いていたのである。
しかし、読み始めてすぐに勘違いに気づいた。
でも、読み初めから本を置けない状態だったので
つい、最後まで読んでしまいました。


これはホラー?とサイコキラー?を織り交ぜたミステリー?
分類ができません( ̄▽ ̄;)ゞ


背景は、1930年代のアメリカテキサス東部。
奴隷制度が廃止されたとはいえ、奴隷の売買が
できなくなっただけで、黒人差別が当たり前のように
行われていた時代。


主人公ハリーと9歳の妹トムは森で迷子になった。
ケガをした愛犬トビーを安楽死させるため
森へ入ったものの踏ん切りがつかず
森の奥深くに迷い込んだのだ。


月明かりを頼りに歩き回っていると
二人と歩調を合わせて何かがついてくる。
ボトムズの森には怪物ゴート・マンが住むと言われている。
何とか川べりの小道に辿り着いたものの
そこには無残に切り裂かれた黒人女性が
縛られ、吊るされていた。


恐怖に震えながらも家までの最短の道を辿る途中、
二人は吊り橋の遥か下にゴート・マンと思しき物を見る。
頭に角の生えた大きな二本足の生き物を・・・


地域の治安官をしている父は惨殺死体を隣町に送るが
黒人女性が惨殺されただけでは、事件にはならない。
明らかに刃物で切られたとわかる傷なのに
検視の為に来た白人医師は獣がつけた傷だと言い張る。


隣町の治安官レッドは、父の友達だったが
黒人に味方するパパに口を挟むなと脅しをかけてくる。
そして、これが連続殺人事件だと睨んだ父は
何とか犯人を捜そうと奔走するが、警察のない町で、
捜査経験のないパパは行き詰ってしまう。


更に事件は起こった。
竜巻に巻き上げられたと見られる死体が
同じように縛られ、切り刻まれていたのだ。
腐りかけていたから黒人と思われていたのだが
それは、紛れもなく白人女性だった。


父の思惑とは別に、ハリーとも父とも顔なじみの
黒人の老人が犯人とされ、みんなの目の前で吊るされる。
彼が吊るされた後、事件は起こらなかった。
父は自分を責め、すっかりやる気を失くし酒に溺れた。


そして新たな殺人事件の第一発見者となったハリー
更に、惨殺された白人女性が発見される。


犯人はゴート・マンなのか?
ゴート・マンの正体とは?


黒人に対する差別や偏見という重い背景ながら
11歳の少年の目線で描かれているので
家族の絆と少年の成長物語をうまく盛り込んだというか

ちょっと説明長いぞと思いながらも、読み進める上で

欠かせない内容なので、結局は無駄のない、

おぞましくも素晴らしいミステリになっていると思います。


物語は後半に一気に加速します。

手に汗握るとはこのことで、読みながら息が切れます。

じれったくて、歯痒くて、男だろ!!と叫びたくなったり・・・


そして・・・

あぁ~何となく、そんな気はしたけど

考えたくなかったという結末!


とはいえ、これは老人の回想なので、
事件解決後には、登場人物たちの「その後」が
簡単に語られていて、まるで映画のエンディングを
観ているように何とも切ない気持ちになりました。


本書は元々はオリジナル・ホラー・アンソロジーに

収録された中篇「狂犬の夏」を長篇化したものだそうです。


それにしても今回ほど、自分の想像力(妄想力)のすごさを
恨んだ事はなかったわ・・・