JOHNNY WINTER はその昔 「百万ドルのギタリスト」 と評されていた。地元テキサスのクラブシーンでの活躍が ROLLING STONE 誌に報道され一躍脚光をあびた彼を大手レコード会社が争奪戦を演じた挙句、当時としては破格の百万ドルの契約金でデビューしたという逸話の為だ。こうして1969年にファーストアルバムが発表されたが、比較的オーソドックスなBLUESのカバー中心で鳴り物入りのデビューにしては地味な印象もあった。BRTISH INVASION と呼ばれたイギリスのバンドの大攻勢に晒されたアメリカのレコード業界としては国産のスターを育てたいという想いがあったのかもしれない。そして JOHNNY は確かにそれに値するミュージシャンであった。


JOHNNY は所謂アルビノと言われる先天的色素欠乏症である。本人にあまり意識した様子は伺われないが、古来アルビノは欧米でも超能力や魔女といったイメージと結び付けられ様々な差別と無縁ではなかった筈だ。そんな彼はラジオから流れてくるROCK 'N ROLL に夢中になり、やがて BLUES の虜になっていく。同じくアルビノの弟 EDGAR と共に当時まだ差別の色濃く残るテキサスにあって黒人のクラブに毎日のように出入りするようになった。彼等以外に白人が全くいない環境で兄弟が目立たない筈もないが、彼には肌の色など問題なく純粋に音楽を求めていたことを黒人達もまた理解したものか、問題に遭遇するといったことは全く無かったという。それどころか彼が17才の時、B.B. KING のステージに上げて欲しいと何回も人伝に頼み、最初は渋っていた B.B. も観衆の後押しに負けてついにはJOHNNY をステージに上げギターを手渡したという逸話まで残っている。つかの間の共演を終えた JOHNNY にはスタンディングオベーションが送られたという。真っ白い肌に、真っ白い眉、長い銀髪をなびかせ、細身の体にトレードマークだったギブソンファイアーバードを抱え、そして心が張り裂けそうなシャウトに、迸る熱情に指が追いつかないかような火の玉の疾走の如きギタープレイ。JOHNNY は文句なく格好よかった。ステージの佇まいは既にスーパースターを予感させるものだったと思う。


JOHNNY の転機は間違いなく RICK DERRINGER との出会いであったろう。McCOYS としてヒットチャートを賑わした RICK 達も当時行き詰まっており、JOHNNY との活動に活路を見出したかったのかもしれない。背後にはレコード会社の思惑もあったろう。出会いのきっかけが何であれ、結果は素晴らしいものだった。JOHNNY WINTER AND と名づけられたバンドは1970年に同名のアルバムを発表する。Norman Seeff によるモノクロのジャケットも素晴らしかったが、中身はよりポップでありながら、後のスワンプを予感させるような EARTHY な南部のフレーバーもあり、JOHNNY のギタープレイもそれを支える RICK のプレイも抑制されてはいるがツボを得て、何よりも他人のカバーも含めて曲が素晴らしい。JOHNNY・RICK 双方のテーマ曲とも言うべき ROCK AND ROLL HOOCHIE KOO やJOHNNY のペンによる冒頭の GUESS I'LL GO AWAY のようなアップテンポの曲もよし、LOOK UP・OUT ON THE LIMB・LET THE MUSIC PLAY・FUNCKY MUSIC のようなメロディアスかつ EARTHY な曲よし、更に TRAFFIC のカバー NO TIME TO LIVEや AM I HERE の美しさはどうだろう。後の JOHNNY の作品 STRANGER に通じるようなそれまで見せたことのない JOHNNY のリリカルな側面を引き出したのはプロデューサーとしての RICK の手腕だろうか。名盤である。


JOHNNY のギタリストとしての真骨頂を伝えるのはやはりライブである。JOHNNY WINTER AND LIVE でのキレ具合も凄いが、やはり最高のライブアルバムとしては CAPTURED LIVE を挙げておきたい。ファイアーバードのフロントピックアップを使いアンプのトレブルを全開にした独特のトーンにフェイザーをかました素晴らしいギターサウンドと絶頂期の火の玉プレイが満喫できるアルバムである。因みに筆者は60年代末頃のものと思われるニューヨークあたりのライブハウスでの JOHNNY と JIMI HENDRIX の共演ライブ音源を持っているが、音質は最悪で演奏も冗長であるが、手数の多さと迫力において JOHNNY が JIMI を圧倒していることを付記しておきたい。


2004年には原点をそのままタイトルにしたような I'M A BLUES MAN を発表しグラミー賞にノミネートされるという嬉しいニュースもあった。JOHNNY は来日経験がなく、まだ見ぬ大物などと呼ばれることもあるが、還暦を越えた今は車椅子に乗ってツアーを続けているそうだ。生ける伝説、それが JOHNNY WINTER である。


Johnny Winter
Johnny Winter And...

Johnny Winter
Captured Live