みなさま、おはようございます。
毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の
「彫刻工房くさか」日下育子です。
本日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家で、宮城県美術館創作室教育普及学芸員の
斎正弘さんです。
斎正弘さん
(”パラサイト”という名前のカッコイイメガネをご愛用です。)
前回の白川美紀さんからのご紹介です。
今回は、第8回 「学校で美術をやる理由・アートとは?」
個人の美意識を美術で養うというお話です。
斎さんのお話は、直接お聴きすると、感動で、目からウロコがボロボロ落ちます!
けれども、私がそれを文章でお伝えしようとすると凄く難しいのです。
私自身、とってももどかしいのですが斎さんから直接お話をお聴きしたら、100倍面白い!と思ってお読みいただけましたら、とっても嬉しいです。
お楽しみ頂けましたら、とっても嬉しいです。
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個人蔵 (復脚類の一種。題名非公開)作品と斎正弘さん
日下
今回の斎さんのお話をお聴きしながら感じられる、斎さんの「美術を使う」という視点は、私自身が正直なところ持ちあわせていなかった視点なので、本当に目からウロコです。もう少し詳しくお聴きしてみたいと思うのですが。
斎正弘さん
義務教育は英語だとプライマリーエデュケーションで、「基礎的な教育」です。
日本ではその時に体育、音楽と美術をやっていて、これは何のためにやるかというと、要するに、国語、算数、理科、社会みたいに露骨に目に見えるものをやる
というのではなくて、世界観と言うものをちゃんと頭の中に作れるかという練習なのね。
しかもその世界観と言うのは絵を描いてみるとみんな違うじゃない。みんなで一斉にやることによって全部常識が違う、みんな違うということが一般的になるために、実は美術とか、体育とか、音楽とかやっているのだと、美術館にいると思うのね。
日下
ああ、なるほど~。
斎正弘さん
体育、音楽と美術だけはみんなと違うというのを、やればやるほどみんなと違うというのを、自覚させるという練習だと思う。でもみんなと違っていても何も恐ろしいことはなくて、その方が社会のため、人間のためにはすごく良くて、もしかすると地球のためにはすごくいい。
日下
ああ、なるほど~。そうですね~。
斎正弘さん
みんながこう言ったって、『俺は反対だ』と言っても全然構わないし、しかもそういう人がいると、とても面白い。そういうあたりこそが本当に美術が、具体的に物理的に役に立つと言うか、そのために私はやっていると思うんだけどね~。
本当にいつもそう思う。
日下
ええ。
斎正弘さん
美術の授業は、みんな違うという事を知るという為にやっているということがなかなか一般化しないんですね。という日本の状況だから、そういう意味では、今の小中学校の美術はみんなと同じになるように、同じ材料でやって、同じ時間に手際良く終わるっていうのが、美術の授業だみたいなのが何となくあって。あれでやっていく方向の美術は、学校ではやんない方がいいんじゃないかなぁ。
日下
うーん。そうですか~。
確かに、私が3年生になる姪の小学校の図画工作の作品を見たときに、姪は特に上手だと褒められたようで得意になって帰ってきたんですが、他の子どもたちの作品写真を見ると、全く同じようにできるような手法で描かせているのが分かる感じでした。
斎正弘さん
あのね、2,3年生ぐらいだと同じでもいいんだ。
日下
あっ、そうなんですか?
斎正弘さん
大体ね、一般的には10才過ぎて5.6年生ぐらいになると自我というのが出てきます。要するに2,3年生ぐらいだと『今日は格好いい服着てきたのか~?』って言うと『着てきた~!!』って言うから、『お母さんに買ってもらったんだべー?』って言うと『そうだよー!!』って、そろって張り切って言ってるうちは全然同じでいいんだ。そう言っているうちは、お母さんの方を教育すればいい。
日下
ああ、確かに、そうですね。(笑)
斎正弘さん
で、5.6年生になって、『格好いい服着てきたのか~?』って言って『お母さんと最近意見が合わないんだ・・・。』 と言うようになったら、『こっち来なさい。君は美術を始めよう』ってなるんです。
日下
ああ、なるほど~。
個展 復脚類収集癖会場風景
個展 復脚類収集癖会場風景
時空船―トブ-カゲ
斎正弘さん
美意識と言うのはそういうもので、君の美意識、私の美意識という・・・。
私はお母さんと違う、私はどうしたらいいだろう?という時お前が自分の格好いいを決めなくちゃ行けないんだよ。他の人と似てるから恰好いいんじゃなく、お前がかっこいいと思うものを決めなくちゃいけないんだよ。んだから美術やれって言ったベ。という事に話が進む。
そのために美術はあって、個人が何がかっこいいと思うの?というのが自分で
決められるというのは、結構勉強しないとためだよね。
日下
うわぁ、すごくわかりやすいですね。
斎正弘さん
しかもそれは、美術だけの勉強ではなくて、社会とか理科とか国語とか他の勉強も
たくさんしていて、かつ高いか安いかも決めて計算しなくちゃいけないし。
そういうために、集約的に今をつくるというのが、美術にはあって、集約的な今を作るには、国語・算数・社会・理科・英語みたいなのをたくさん使って決めればいいというのがあるわけよ。
日下
ああ、本当にその通りですね~。
斎正弘さん
そういう風な、私はどこにいるのかとか、私は何かという意識の仕方は、美術教育の目標、まとめとしてはすごく大事なんですね。造形力とか、美術の技術というそういうものと、美術そのものは全然違うということ。美術技術がどんなに上手でも、美術をきちんとやっている人はやっているし、やっていない人はやっていない。美術技術と美術の概念そのものは全然違うと想ってた方がいいと思うんだよね。
日下
あぁ~、深いですね。私自身は、美術技術の比重が大きい方の作り手だと思うので、その言葉はズシッときます。確かに美術技術と美術の概念そのものは全然違いますね~。
斎正弘さん
だって体育のオリンピック見たりとか、音楽では「私あの人の歌、好きなの」とか
全然平気なのに、美術だけは、描くの下手でって言うし、誰も絵買いませんよね。
日下
う—ん。
斎正弘さん
あんなに音楽売れているんですから、私、もうちょっとね、そんなにでなくていいんですけど、街でやってる美術の展覧会でもっと絵売れてもいいと思うんです。
だってみんな3000円出してCD買うでしょ。絵描く人も、版画とか3000円位で売ればいいんですよね。レコードとかCDと同じみたいに。CD買うのとおんなじように、朝起きて歯磨いて、眼鏡かけてってほとんど同じことだと思う。そういう風にもっと普通に。音楽体育は結構いっていると思うのね。
だって2週間のオリンピック見るために35万円のテレビ買ったりするんでしょ。だから1000円出して展覧会見に来ればいいと思うのよ。と言うような感じに美術がなるといいと思うんだけど。
日下
ああ~、本当にそうですね。
斎正弘さん
そういうの本当にやってないもんね。日本は。CDみたいに、紙に同じ物が何枚も作れるって言うので銅版画とかシルクスクリーンとか、一枚なら○万円何だけど100枚作ったから1000円でいいよって、そのためにやってるんだけどね、版画って。1枚1000円なら買って、額に入れるんでないかな。
日下
そうですよね。
斎正弘さん
作家の人ってそうしてないんじゃないかなと思うんだけど。だから美術ってどんどん衰退していくって思われているんじゃないか。他の国って結構そういうのやっているんだよね。
飄々とすぎるキラキラ
時空(トキ)のかなたをすぎる箱船(フネ)?ツレ-モク
日下
そうですね~。
美術ももっと気軽に楽しんで頂けるようになるといいと思います。
最後に質問なんですが、斎正弘さんにとって、アートとはなんでしょうか。
斎正弘さん
ライフスタイルです。生き様ですよ。というか生きる力、スタイルです。
アートはほとんどの面でライフスタイルです。朝、今日何着て行く?とか、これ買った方がいいかなというようなことを含めたライフスタイルです。
だから、みんなライフスタイルを持つべきですよ。そのために美術を学校で教えるんですよ。そうすれば相当楽というか。だってみんなが違うのが当たり前、というのがみんな同じだということでしょ。それが分かるだけで随分違う。みんなが違うということが同じだということなんです。みんなが人間だということ意外は、普段みんな頭の中は見えないんだから、絵を描いてみる。そうすると、みんなの頭の中が違うという事が見えてくる。
日下
なるほど~。そうですか。本当に目からウロコです。
斎さんから、リレー頂ける作家さんをご紹介いただけますでしょうか。
斎正弘さん
彫刻家の菅原裕さんを紹介します。
日下
ありがとうございました。
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最後に私が申し上げた「本当に目からウロコ」だと感じたところは、斎さんにとってのアートというのが、本当に個人の美意識、価値基準という意味の生活に即した
具体的な基準、考え感じ方として捉えられていたからです。
そこには、作家の何か神秘めいた装いというものは全くなく、あまりにもオープンで風通しのよい明快な回答だったこともまた、目からウロコでした。
斎正弘さんのお話をお聴きしていると、どうやら学校でやってきた美術と、ライフスタイルとしての美術にギャップがあることが改めて分かってきますね。
次回はそのズレについても点検されている、斎正弘さんの著作『大きな羊の見つかけた 「使える」美術の話』についてご紹介させて頂きます。
今日もここまでお読み下さってありがとうございました。
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◆斎正弘さんのブログ
◆斎正弘さんがかつて主に子どもとの向き合い方を書いたエッセイ
仙台の情報誌に毎月1回、10年掲載されたもののWEB版です。
おとうさんのひとりごと on the web
◆斎正弘さん執筆で、河北新聞夕刊に掲載されたコラムのWEB版
美術、ほんとのところ
◆斎正弘さんの本
『大きな羊の見つけかた』 仙台文庫 987円
仙台文庫
◆斎正弘さんのお話が直接お聴きできる催しです。
※(インタビュー時のイベントで現在は開催していません。)
場 所 基本的に そあとの庭
1階
日 程 2012年9月~2月間毎月2回 第1第4金曜日夜
時 程 18:00 開場。予約者サパー(要予約)
19:00 講義開始。(1時間講義、30分質疑)
20:30 終了
参加料 講義前に軽食をとりたい人は予約した上で1500円。
*講義終了後、各自がその日の話の値段を決め各自寄付。
11~12月 ○美術は本当に生活の役に立つのか具体的に考える。
○ 美術の始め方/始まり方。
1~2月 ○美術を学ぶ理由/学ばなければいけない理由。
○そもそも美術って何ですか?を具体的に考える。
○なるほど、だから美術館か。