書家 川尾朋子さん 後編 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」



みなさん、おはようございます。

 

毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の
「彫刻工房くさか」日下育子です。



本日は素敵な作家をご紹介いたします。


書家の川尾朋子さんです。


前回の舩木大輔さんからのリレーでご登場頂きます。

http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11181389645.html
  http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11186116215.html


また川尾朋子さんからご紹介のエトリケンジさんとは、

都合により順番を入れ替えてご登場いただきます。

http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11192277628.html
 
http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11199958098.html


川尾朋子さんの作品のテーマ、作品制作の思いについて

インタビュ―をもとにご紹介させて頂きます。


今日は後編をお届けいたします。お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。 


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-ImG1679



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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-IMG1681

 ~奈良県障害者芸術祭での展示~
下2点の作品は『森の行進』というテーマになっています。
参加してもらった人無差別に、全員のモノが展示されている
のですが、

人それぞれの役割があって成立している、森も、地球もそうですが、みんなで

認め合って歩いているというテーマです。


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日下
川尾さんの制作と社会とのつながりについて、
思うところがあれば

お聴かせ頂けますでしょうか。



川尾朋子さん
この作品写真は障害者の人たちにワークショッップをして、
障害者の方たちに

書いてもらったものを奈良県障害者芸術祭というものがあって、

展示したものなんです。



日下
この文字っぽいものや点みたいなものは、

川尾さんが書いていらっしゃるのではないんですね。



川尾朋子さん
はい、そうです。



日下
ほうきのように見えるものは筆でしょうか。



川尾朋子さん
はい、そうです。

筆も皆さんに作って頂いてます。展示としては今年の2月5日まで

展示していたものです。奈良県の文化会館というところで。
 

奈良県障害者芸術祭のブラッシュアート部門というのを私が担当してやらせて

頂いたものです。



日下
それは川尾朋子さんご自身からの
アプローチでなさっているのでしょうか。



川尾朋子さん
今回は依頼して頂いたのですが、もともとはアート・ミ―ツ・ケア学会
というのがあって、

年に一回どこかでシンポジウムが行われるんです。

私は学会の会員ではないのですが、シンポジウムは誰でも聴きに行くことが

できるんですね。それで聴きに行って、『たんぽぽの家』という施設が奈良にあって・・・。



日下
ええ、『たんぽぽの家』というのは有名ですよね。



川尾朋子さん
有名ですね。障害者施設でいうとトップクラスに有名な施設ですが、
障害者の方が

自立出来るようにその自分たちで作ったもので、販売したり、自分たちが生活出来る

経路を作ることをしているんです。

この前は皇太子様がいらしたようですが。

 
たんぽぽの家の理事長で播磨さんという方がいらっしゃるのですが、

その方に2008年にその学会でお会いして、たんぽぽの家とはそこからの

お付き合いになります。
 

私も自分がしていることで社会と関わりたいと思っていて。


それは作品だけではなくて、自分の技術というか筆と墨を使うことによって、

社会とつながることができるものは何だろう?

ということを考えていました。それで学会にも行ったんです。

そこでそういうつながりがあって、去年依頼していただきました。



日下
なるほど~。参加者の方に、あの筆を作ってもらって、
それによって

こういう作品ができてきたんでしょうね。

この作品のそういう一つ一つについて『こんなことしましょう』という投げかけは

川尾さんからしていらっしゃるのでしょうか。



川尾朋子さん
そうですね。

例えば『静と動』というテーマで大きい紙が二枚向かい合っている作品。
 

暑さ寒さだったり、悲しみ喜びだったり、日常では対極にあるものが

いっぱいあるじゃないですか。

 

その間をみんな歩んでいっている、両極を知りながら歩いているんだよという意味で、

みんなで表現しましょうという感じで。

身体で悲しみとか喜びを筆を動かして表現して下さいとか。

 

作品を作るときに、寒いしもう嫌だなみたいな、縮こまった感じを表現して下さいとか、

そういうことは言います。
 

それで、ぐるぐると螺旋になっている作品は、点のリレーをみんなでしているのですが、

大きな筆で、まあ言えばバトンを筆に持ち変えたと想像してもらえばいいですね。

一人が点を打って次の人に筆を渡す、それでまた 点を打って。

参加しているのは障害者だけではなく健常者のスタッフも参加しています。


みんなで点を打って、みんなで一つの作品を作るというのは私が提案しました。

これからもワークショップを続けていって、点のリレーをいろんな人、国、

地域でしたいですね。

 
点のリレーの作品を、螺旋状にしたのは、DNAの
二重螺旋をイメージしていて・・・、

裏コンセプトというか。
 

私たちには障害があったりなかったりするけれど、もともとは何か一つの生命体

だったわけで、DNAの構造は、辿っていけば同じでしょうと。
 

そこから分化していろんなモノになっていると思うのですけど、

差別ないものだったんじゃないの?みたいな。 

そういう裏コンセプトみたいなものが私の中にはあったんですけど。



日下
なにかお話を聴いていると作品だけを拝見した時よりも、
すごくよくわかりますね。

例えば両極の感覚を表現しているとか、単純に点のリレーというものでも

あるのでしょうけれど、最終的な造形として螺旋にしていくというのは、

とっても本質的な感覚というか、思考というか、そういうものをちゃんと形に

表現していらっしゃるんだなという感じがしました。素晴らしいですね。



川尾朋子さん
奈良以外に 東京や、いろんな国で実施できたらいいなと
思います。

世界の人たちが点でつながったらすごい面白いなと思ってワクワクします。
 

それは私が今やっているテーマともすごくつながっているし、

ある意味ライフワークみたいになっていけば面白いなと思っています。
 

社会とのつながりの中で出来るものとしてはいいきっかけをいただいたなあと

思っているんです。



日下
素晴らしいですね。



川尾朋子さん
私は始める時よりも、動き出す途中でいろいろ考える方だと
思うんですよね。

やり始める段階の考えで、全部が全部、着地点には行ける方ではないので。 
 

だから、今回みたいに何か段階を積み重ねる途中で、

何か思う事が変わって行くところがあるなと、自分で実感しました。



日下
いいですね~。というか、私から見ると、とってもすごくいいな~
というか、

柔軟だな~というか、ライブだな~という感じがします。



川尾朋子さん
いえいえ、でもライブですね。

そうですね、ライブということにしましょう(笑)



日下
書いてらっしゃるその時もライブでしょうけれど、
人生の中でいろんな風に人と出会って、

それによって作品が展開したりという、それも含めてライブだなという感じがします。 

お話を聴いていると・・・。



川尾朋子さん
そう、宝探しみたいに思っていて、人生というものを。 

いろんな人に会ったり、いろんなところに行ってヒントをもらって、でどうすんの?

みたいにして。

宝がどこにあるのかも、見つかるのかもわからないですけど、そういう風にして

活動しているので楽しいですね。



日下
なるほどね~。そうですね~。実は私自身もこうして毎週
いろんな作家さんとお話させて

頂くことがライブのような感じがしています。

同じ造形に関わる分野と言っても、全く異分野というか、自分の守備範囲でない分野の

作家さんともお話をさせて頂いたりして。



川尾朋子さん
そうですよね。書もどうやねん、という分野ですもんね。

よく引き受けて下さったなと思って。



日下
いえいえとても新鮮で素晴らしいです。



川尾朋子さん
書でもっと社会とつながって行くということに関しては、
たとえば今 阪急嵐山駅の

名前を書かせていただいていたり、大丸京都店(百貨店)で、

一年を二十四の季節に分けた二十四節気を書いた文字がエントランスモニターに

放映されたり。


自分の字で社会とつながれるし、自分が打ち出している作品でもつながれる。

そして、自分が持っている技術でもつながれるし、今まで経験して持っているものでも

つながりたいと思っているんですけど、個だけじゃなくていいと思っているんです。




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  個展『呼呼応応』より 2011年




日下
でもいいですね。

文字が最初にあったんでしょうけど、文字を飛び越えてという感じがしますね。



川尾朋子さん
そうですね。



日下
文字以外の表現に踏み出して行ったというのは、

自然にそうなっていったのでしょうか。ごく自然に?



川尾朋子さん
そうですね。生きているといろんな感情があるじゃないですか。

それを私たちは言葉で伝えるでしょう。そしてそれが漢字だったりするじゃないですか。


でも、もうそれだけじゃ伝えられへんな、みたいなことってないですか、時々。

言葉じゃない、なにか。言葉って、文字など意味が限定されやすい。

だから『悲しい』だけども『悲しいだけじゃないんだけど・・・』みたいな。



日下
はい、分かります。



川尾朋子さん
言葉だけで表現できない気持ちってあるし、
でもそれを事細かによく言えない。

立場だっていろいろあるしという時になにか、自分の形があるんじゃないかって。
 

まあ文字って誰かが最終的に決めちゃったカタチなので、それが意味をなしている

ということだから、そこに限定されるのがすごく何なのだろうって、

若いし余計に思ってしまって。


そういう時期があったので、その文字の規制から一回離れて作品を作ることを

考えたのだと思います。
規制があったり、なかったりすることは楽しいと、
今は思っています。

日々古典を臨書しているので、文字を書く事は好きなんですが。



日下
そうですか~。文字に規制を感じられたんですね。



川尾朋子さん
はい。こういう形でなければならないとか、
読めなければならないとか。



日下
面白いですね。



川尾朋子さん
面白いですよね。テーマ的には今言った呼応が、
今一番したいことだから

していますけれど、幼少からの日常だということもあって文字を書くことも凄く大好きだし、

矛盾してると言えば矛盾しているのかもしれないですが。




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-c20

  



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-c25

  パフォーマンス写真




日下
う~ん。あの川尾さんにとっての呼応というのが、
さきほどたくさんお話頂きましたが、

何に対しての呼応なのかというのは、その時その時違ったりするのでしょうか?


例えば、広い意味ではいろいろな情報だったり、思いだったり、気持ちだったり、

広い時空に見えない呼応というのを追いかけるということもおありでしょうし、

画面と向き合うという造形に入った中では、ご自身が作り出される、

痕跡が痕跡を呼んでいるという呼応もきっとおありではないかと思うのです。


その呼応しあう相手というのは川尾さんのなかでその都度その都度、

変わっていくというか、それもライブなのでしょうか。



川尾朋子さん
ああ、それはそうですね。自分だったりもしますしね。

自分ともう一人の自分だったりとか。

それと家族が病気になった時に、見えているものだけではないところも

見なければならない、見たいけど見えないということを経験しました。


人との向き合い方と書の向き合い方がすごくリンクしたところがあったんです。
それを形にしていくべきだというか、自分の中で消化(昇華)したかったのだと

思いますけど。




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  大丸のショーウィンドー




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  和室に垂直の2本の作品




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  嵐山駅の看板



日下
なるほど~。
 

それでは、これからの活動予定とか抱負などをお聴かせ頂けますでしょうか。



川尾朋子さん
今、東京のレッグウエアーのブランド[FAKUI]と
コラボレーションの話を進めています。

ストッキングに私の書いた文字、点や線が入ります。
ターゲットはバリバリと働いている女性、弱音なんて
吐いてられないぐらい忙しい女性、ファッションを楽しむ方たちですね。
私の今年の裏コンセプトは『女子を元気にする!!』ということです。



日下
いいですね~。素晴らしいですね。



川尾朋子さん
女の子が綺麗になったり、楽しんでいると、
絶対男の子も元気になって仕事頑張ると

思うんですよ。そうですよね。みんな、仕事をがんばったら経済もよくなりますよね。

ちょっとずつ。超安直ですね!!
 

とにかく女の子を元気にしたいなと思って。

そういうことをやっていきたいなと去年から自分で思っていて、FAKUIには自分から

できないかとアプローチしたんですけど。



日下
じゃあ、タイツに書をというのは
川尾さんのアイデアなんですね。



川尾朋子さん
そうですね。



日下
凄いですね~。そのコラボ・ストッキングは
いつ見られるでしょうか?



川尾朋子さん
川尾朋子とのコラボレーション商品については、5月までに発表し、

8月には発売予定になっています。

川尾朋子のホームページに随時情報を更新していきますので、チェックしてください。

すごくかっこいいタイツなので、お楽しみに!!



日下
本当に楽しみですね!!

発売になったら、私もぜひチャレンジさせて頂きますね。


では、最後にリレーして下さる作家さんをご紹介頂けますでしょうか。



川尾朋子さん
美術家のエトリケンジさんです。



日下
川尾さん、今日はお忙しい中、
素晴らしいお話をお聴かせ下さってありがとうございました。


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川尾朋子さんには、前回の舩木大輔さんのリレーでご登場頂きました。

今回、初めて川尾朋子さんの制作への思いをお聴かせ頂きました。


あくまで『書』というものに基本を置きながら、『書く』という行為そのものに真摯に向き合いながら、ご自身の作品を作られていて、とても感覚を研ぎ澄まして

いらっしゃる作家さんだと感じました。


社会との接点ということについても、これから『書』というものの可能性をきっと世界に

投げかけてみせて下さるのではないかととても楽しみに感じました。


皆さんもぜひ川尾朋子さんの作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。 


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◆川尾朋子さんのホームページ

 ⇒ http://www.kawaotomoko.com/works/interior/


◆SATOSHI  KOYAMA GALLERY

 ⇒ http://tokyo.satoshikoyamagallery.com/home
 ⇒ http://tokyo.satoshikoyamagallery.com/artists/tamoko-kawao
 

◆ 奈良県障害者芸術祭 HAPPY SPOT 奈良

 ⇒http://popo.or.jp/happyspotnara/


◆たんぽぽの家
 ⇒ 
http://popo.or.jp/


◆アートミ―ツケア学会 
 ⇒ 
http://popo.or.jp/artmeetscare/contact.html


FAKUI Face book のホームページ