みなさん、おはようございます。
みんなの学び場美術館、彫刻工房くさか 日下育子です。
本日は素敵な作家をご紹介いたします。
造形作家の本田恵美さんです。
本田さんの作品のテーマ、制作方法、作品制作の思いについて
インタビュ―をもとにご紹介させて頂きます。
お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。
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Breath10-7 2010年 W57×D52×H33cm 作家蔵
Breath10-7 アップ
仕草5-17 2005年 W12.2×D8.6×H10.5cm 個人蔵
仕草6-24 2006年 W11.8×D12.3×H6.1cm 個人蔵 写真:松本隆
日下
本田さんの制作テーマ、制作についての思いをおきかせ頂けますか?
これまでの本田さんの展覧会タイトルでは、
『仕草』『種を蒔く』という言葉のものがありますが・・・。
本田 恵美さん
旅先で拾ってきた石や貝を部屋の片隅に置いたり、
お気に入りの雑貨を飾るように、作品がさりげなく生活の中に存在してほしい。
そんな思いから手のひらサイズのオブジェを主に制作しています。
公共的な空間ではなく、プライベートな空間で機能する立体を作りたい。
希望としては、個人の日常生活に精神的な意味で必要とされるモノ作りをしたいと思っています。
日下
具体的には、どんなところから作品のイメージを想起していらっしゃるのでしょうか?
本田 恵美さん
モノの形の不思議を思ってきました。
「どうしてこの形なんだろう?」と・・・
植物の姿、動物の動き、それらを見て触って感じるのが好きです。
そのものに没入していると、
ふと形が自分の気持ちとリンクする瞬間があることに気付きました。
自然物の持つフォルムと自分の気持ちが合致して、
心がその形になる感覚を味わいました。
つまり「見えない」心や感覚が、「見える」形になったわけです。
忘れたくない想いや感覚・気配のようなものを、
常に近くにつなぎとめていたいという欲求があった私は、
それを形に変換出来たら
大切な感覚へアクセスするための鍵になりうるかもしれないと思いました。
そこから生まれたのが〝仕草〟シリーズです。
自然物がもつそれぞれの姿(=仕草)と、
人間が感情を表現する時のジェスチャー(=仕草)を繋げる
という意味でつけたタイトルです。
Breath8-3 2008年 W10×D10×H10cm 作家蔵
(2009年 宮城県芸術祭彫刻部 賛助出品作品)
仕草6-54 2006年 W13.7×D12.2×H12.8cm 作家蔵 写真:松本隆
仕草5-21 2005年 W8.3×D8.8×H9.5cm 個人蔵
日下
2009年の宮城県芸術祭彫刻部の展覧会で
ご一緒した時の作品がとても印象に残っています。
本田さんが賛助出品された作品は抽象的なかたちでしたね。
本田さんのテーマとのかかわりからすると、
具体的なイメージを持って制作するものと、
そうでないものがあるのでしょうか?
例えば珊瑚とか種子とか。
本田 恵美さん
私が共感する形は、自然物からインスピレーションを受けていますが、
形そのままではなく、そこから抽出された抽象的なフォルムのようです。
例えば、種から芽が出る姿(=仕草)は、
危ういけれどもとてもポジティブで明るい力を感じます。
日下
本田さんの制作素材、手法について教えて下さい。
先に述べた芸術祭の展覧会の時、
焼いた粘土の上に胡粉を塗っているとお聴きしました。
それらの素材との出会いや、それを試みようと思ったきっかけなど。
また表現とのかかわりでご自身が惹かれているところなどを教えて下さい。
本田 恵美さん
『白』という色にとても惹かれます。
なぜかなといつも考えているのですが、
『光に一番近い色』 『よけいなものがなく、自足している色』 と感じるのが、
今のところ見つけている理由です。
作品を作るようになってから、
いろいろな『白』を試してたどりついたのが『胡粉の白』でした。
後から気付いたのですが、
『胡粉の白』は小さい頃よく海岸で拾った蛤や赤貝の風化した白と同じでした。
夕方、グレーの砂浜に点々とどこまでも続くその白い貝が
とても美しかったのを覚えています。
形を純粋に感じて貰うためにも、『白』は有効な色だと考えています。
支持体に(素焼きした)粘土を使うのは、手に一番しっくりくる素材だからです。
日下
本田さんの活動状況についてお聴かせ頂けますか?
それから本田さんは岩手県の遠野にお住まいですが、
そういう生活環境が制作活動に影響しているどうかなど伺ってもみたいです。
本田 恵美さん
遠野は緑の深い自然豊かな場所です。
四方を山々に囲まれた盆地で標高が高く、目の前の山から雲が生まれます。
中山間地域の古民家に住んでいます。
家の中には青大将(蛇)やねずみが来ます。
外では狐やテン、狸はもとより熊も現れます。
盆栽と自然栽培の家庭菜園をしながら外を徘徊し、
日々自然のすごさに圧倒されています。
現代において「自然に生きるとはどういうことか」を常に考えながら、
制作と生活の日々です。
日下
本当に自然豊かな環境で制作されているんですね。
そういう環境にいらっしゃることが作品の澄んだ感じ、
清楚なイメージにつながっているのかもしれないですね。
本田さんの今後の、展覧会情報などあれば教えていただけますでしょうか。
また本田さんの作品が常に見られるところがあれば教えていただけますでしょうか。
本田 恵美さん
今年は以下のグループ展へ参加しています。
◆「POSTCARDS FROM JAPAN」展
東日本大震災復興応援ポストカード・プロジェクト
会期 2011年10月3日~11月27日
会場 アメリカ ニューヨーク Japan Society Gallery
◆「TOHOKU-SCOTLAND」展
東日本大震災をきっかけとした東北の作家とイギリスの作家との交流展
会期 2011年10月18日~25日
会場 イギリス スコットランド Edinburgh College of Art
◆ 2012年予定
7月 岩手県一関市 ギャラリー土夢(どむ)にて女流作家5人展(毎年開催)参加予定
秋 岩手県花巻市 湯本美術展示館にて二人展 予定
本田さんの作品が常設でご覧頂けるのは以下のところです。
◆東京ミッドタウン 東京/六本木 (展示替えがあるので観れない場合もあります)
◆クラブエイトスタジオ盛岡 岩手/盛岡 (デンマークなどの欧州家具を中心にクオリティの高い生活空間を提案するインテリアショップ)
生活空間を模した空間に作品が展示・販売されているので、オブジェを飾った時のイメージがわかります。
http://www.club8studio.jp/scene/index.html
◆諄子美術館(岩手/北上)
日下
本田さんは、とても精力的に活動なさっているのですね。
素晴らしいです。
今日はお話をお聴かせ下さって、どうもありがとうございました。
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私と本田さんとの出会いは、同じ大学に通っていたということでした、
本田さんは後輩にあたりますが、
ご結婚前の「いしいめぐみ」さん時代からとても精力的に活動されて
とても高い評価を得ていらっしゃいました。
以前から、本田さんの作品は静かでいて、
呼吸しているような柔らかな佇まいが感じられて、
不思議な魅力にあふれていると感じていました。
それは、言葉にならない言葉を一つ一つ感覚に忠実に紡ぎだすように
生まれてくるもののように感じていました。
今回のインタビューでも、本田さんは一つ一つ丁寧に答えて下さいました。
ありがとうございます。
皆さんも、ぜひ本田さんの作品をご覧になってみてはいかがでしょうか?
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本田恵美さんの略歴です。
1972 埼玉県久喜市生まれ
1974 宮城県桃生郡鳴瀬町(現 東松島市)に転居
1995 東北生活文化大学 家政学部生活美術科 卒業
2004 岩手県遠野市に転居
2006 岩手県美術選奨受賞
【個展・グループ展】
1998 個展「東北現代作家撰集`98 RESPIRATION Part2 いしいめぐみ」 リアス・アーク美術館 宮城/気仙沼
2000 いしいめぐみ個展「心の器」 300日画廊 東京/青山
2001 Exposition D´UBUSUNA シテ・デ・ザール フランス/パリ
2004 リアス・アーク美術館開館10周年記念展 リアス・アーク美術館 宮城/気仙沼
2005 諄子美術館企画 本田恵美個展「仕草」 諄子美術館 岩手/北上
2007 個展「種を蒔く」 ギャルリ・プス 東京/銀座
2008 本田健 本田恵美二人展(`10) 湯本美術展示館 岩手/花巻
2010 岩手県公会堂アート・ショウ2010(`05・`07) 岩手県公会堂・石井県令私邸 岩手/盛岡
本田健本田恵美二人展 仙台アーティストランプレイス 宮城/仙台
2011 女流作家5人展(`06・`07・`08・`09・`10) ギャラリー土夢 岩手/一関 他グループ展多数
【パブリックコレクション】
東京ミッドタウン(東京/六本木) 諄子美術館(岩手/北上)
◆ 本田恵美さんの連絡先
まずは彫刻工房くさかへお問い合わせください。
彫刻工房くさか i-Kusaka@mnbb.jp 090-4319-7439