No.5 彫刻家 小林晃一さん | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさん、おはようございます。

毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の

「彫刻工房くさか」日下育子です。




本日は素敵な作家をご紹介いたします。


彫刻家の小林晃一さんです。

 

小林さんは、石を素材に彫刻制作をしていらっしゃる作家です。

石の彫刻のほか、インスタレーション(空間設置)や黒幻焼という

陶芸作品など幅広い造形表現を展開していらっしゃる作家です。



今回は石を素材とした近年のテーマ性など、作品制作の思いについてインタビ
ュ―をもとにご紹介させて頂きます。

 

お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。



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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

『月明りに照らされて』

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

 

『私は旅人』

砂岩

H57×W65×D45(120Kg)

 


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

『ゆらぎと影(二つの地球)』

黒御影石

H36×W54×D29(100Kg)


 

アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

 

左 『ゆらぎと影』

黒御影石

H147×W40×D87(200Kg)


 

右 『黒いサボテン』

黒御影石

H136×W57×D46(200Kg)

 

 

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小林さんは現在、最新のテーマ「月明りに照らされて」で制作をしていらっし

ゃいます。

 

小林さんは、これまでにもシャミッソーの小説『影を無くした男』に興味を持たれ
作品『もうひとつのもの』(ホームページ参照)『ゆらぎと影』などと『影』に焦点
をあてた作品を作っていらっしゃいます。

 

その制作についての思いをインタビューさせていただきました。
 

 

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      『月明りに照らされて』

    

      ~作品制作への思い~


 


月明りに照らされているとき真実が浮かび上がる。

月明りに照らされているところが真実と感じる。

 

 

表面と影との関係性は、自分にある表裏のようなもの。

影の存在というのは、実体についてまわるもの。

ゆらぎと影の「影」も自分の中にいつもあるもの。

 

 

月明りに照らされるものというのは、暗がりや闇をまとった

イメージなのだ。

煌々とした太陽の明かりに照らされて浮かび上がるものとは違う

陰りのあるもの。

 

 

 

現代は希望を持ちにくい時代、社会になってきていると感じる。

それは、地球環境の問題、今回の地震、原発のことなどにも

象徴される。

 

 

そんな中で私は、どうしても人間が虫ケラのように感じられてしまうのだ。

それはいい意味でも、悪い意味でもなく、

ただ人間がそんな在り様に感じられるのだ。

 

作品『月明りに照らされて』では、実際に虫ケラを彫刻にしている。

それはカタツムリ、カマキリ、カメレオン、トノサマバッタなど

月明りに集まってくるような生き物たち。

それらの生き物たちをブロンズと石で制作している。

 

 

私は、以前から「影」にまつわるテーマを制作しているが

制作を続けるにつれて「影」の意味が変わってきた。


 

私にとって影は、はじめは自分の影、影法師というものであった。

作品『ゆらぎと影』においては、影というものは、人間にくっついている影

実体についている影(shadow)であった。

 


今は「shadow」の影であると同時に、

社会の暗部、陰部、人間社会の不正などの意味を持つようになった。

 

 


月明りに照らされているとき真実が浮かび上がる。

月明りに照らされているところが真実と感じる。

 

 


                 (インタビューをもとに日下育子記)
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  ~ 石という素材への思い入れについて~

 

 

 小林さんが彫刻の主な素材に石を用いるようになったのには、石に対する
憧れ、ミケランジェロのように、大きなものを作るという憧れがあったのだ
そうです。

 


 また素材と「影」というテーマの相性の良さも、より石に向かう要因にな
ったとのこと。それは、黒御影石のもつコントラストにあります。黒御影石
に磨きをかけたより黒いところと磨かないところのグレーのところの明暗の
差が明快で、影を造形表現しやすいということも石を素材にする理由の一つ
なのだそうです。


 

 小林さんは石を彫り刻むことの魅力を次のように語っていらっしゃいます。

 

 「石というのは地球の自然の『実材』である。作家は、その石という素材
 を選んだことによって、自分自身や作品に正面から向き合う時間が与えら
 れる。これまで多くの先人が取り組んできたのと同じように、自分が石に
 向きあっているという実感が得られるところが素晴らしいと思う。」

 

 

 また、現代という時代についてはこんなことも仰っています。

 

 「今の社会には自分の時間を持てない人が多い。物事への向き合い方、味
 わい方など何でもはしょられていることが多い。今の社会には、物事を丁
 寧に見つめることが必要で、実際にそれが求められていると思う。
 

  作家は簡単にできることよりも、石をゆっくり丁寧に作ることの喜びを
 味わい、作品を通してそれを提示する。
 

  そういう彫刻に取り組む人間、石を刻む人がいるということを社会にも
 っと知ってほしいと思う。」


 

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  小林晃一さんは現在、埼玉県幸手市在住でいらっしゃいます。6年ほど
 前までは、宮城県黒川郡大和町を拠点にたくさんの彫刻作品、モニュメン
 ト作品を制作・設置してこられました。

 

  私が学生の時からアトリエを見学させていただくなど存知あげており、
 十数年前、地元仙台で開催された彫刻シンポジウムで本格的に知り合いに
 なりお世話になりました。

  

  小林さんは、彫刻のあらゆる手法全般をこなし、彫刻でこれまでに誰も
 されたことのないような表現の可能性を展開されたり、インスタレーショ
 ン的な展開を試みたり、精力的に制作なさっています。
   近年は黒幻焼という、陶に共鳴させるスピーカーを制作されています。

 


◆ 小林晃一美術研究所のホームページはコチラ
  ⇒ http://kobabiken.com/

 

 

  小林さんは常に社会に対していかに美術で関わるかということを真摯に
 考えていらっしゃる作家です。
 

 今現在は、ご自身が代表を務めるNPO法人アート体験協会で、東日本
 大震災で被災し福島県双葉町から埼玉県に避難していらした方々に野焼の
 アート体験を提供する活動をしていらっしゃいます。
   
◆ NPO法人 アート体験協会 公式ホームページ
  ⇒ http://art-taiken.com/

 

  
  小林さんは、9月に埼玉県で『分岐点』という展覧会に出品されます。

◆ 現代美術展 『分岐点』詳細はコチラ
  ⇒ http://www.kodaka16.com/bunki_ten_top.html

  出品作家:恒星、小高一民、小林晃一、杉崎正則、タムラサトル、野原一郎
         林 恭子
  企画構成:松永 康
  会   期:2010年9月10日(土)~18日(日) 16日(金)は休館
  開場時間:午前10時~午後7時
  観 覧 料:無料
  会  場:いきいき活動センターしずか館(体育館、会議室)
         〒349-1102 埼玉県久喜市栗橋中央1丁目11-1

 

 
  皆さんも、機会がございましたらぜひ、小林晃一さんの作品をご覧になって
 みてはいかがでしょうか?