観る予定はなかったのですが ..... 新国立劇場で『トスカ』の初日を観て来ました。
2015年11月17日(火)18時30分開演 オペラパレス
2015/2016シーズン
ジャコモ・プッチーニ Giacomo Puccini
オペラ 『トスカ』 Tosca
全3幕〈イタリア語上演/字幕付〉
朝から超特急で仕事を片付け、残りは翌日に持ち越し、そこそこに切り上げて新国立劇場に。入口は早くもクリスマス気分
『トスカ』は見飽きているとまではいかないですが、続けて観たこともあって、まぁしばらくは見なくてもいいかなと思っていました。2011年のプラハ国立歌劇場来日公演でのノルマ・ファンティーニさんのトスカは実に素晴らしかったです(こちら)。
今回はあえてチケットを取らなかったのですが、やはり人気の演目で、チケットの売れ行きは好調のようです。私は初日を避けているのですが、観たのは5回公演の初日でした。
しかし、初日とは思えない水準の高さ。特に、外国人の主要3役はずば抜けて素晴らしかったです。
ウルグアイ出身タイトルロールのマリア・ホセ・シーリさん。ウィーン国立歌劇場やトリノ王立歌劇場等で同役を歌っているだけのことはあります。旬のソプラノをよく連れてきました。第1幕では「私たちの可愛い家に行きたくないの?」と妬きもちやきの可愛い女性を歌い、カヴァラドッシとの二重唱「この世に君の黒い瞳ほど」も実によかったです。高音域でもキンキンすることなく、声が豊かで柔らかい感じが心地よい。オケを突き抜けて響いてきました。また、有名な第2幕「歌に生き、恋に生き」はあまりに素晴らしくて、ついつい涙腺が緩んでしまいました。スカルピアとの対決も迫真の演技。第3幕でもカヴァラドッシとの二重唱が素晴らしかったです。また、最後は、こちらを向きながら、真後ろに仰向けになって落下していきました。
カヴァラドッシのホルヘ・デ・レオンさん。美しいテノールは高音域まで滑らかに伸びて、大きな声量で客席まで届きます。最初から最後まで素晴らしかったです。第1幕「妙なる調和」や第3幕「星は光りぬ」のアリア、トスカとの二重唱などは情感豊かに。第2幕にナポレオン勝利の知らせに高らかに叫ぶ高音「Vittoria! Vittoria! 」。客席に突き刺さるような張りのある声は圧巻でした。
スカルピアのロベルト・フロンターリさん。実力者だけあって、最初に登場した時には、壁がビリっと震えているような歌でした。第1幕最後の「行け、トスカ」や第2幕の邪悪な演技と歌で、影の主役と言ってもいいでしょう。第1幕冒頭の旋律はスカルピアの主題だし、ラストのトスカは、カヴァラドッシではなく、スカルピアの名前を叫んで飛び降りますからね。
日本人では、堂主の志村さんの存在感がありました。コミカルで美味しい役柄だし、風貌の利もありますかね。
音楽は、イェンセンさん指揮の東フィル。安全運転ながらも盛り上げるところ、歌うところ、甘いところもしっかり対応していて、高水準の演奏で大満足。
演出は8月に84歳で亡くなったアントネッロ・マダウ=ディアツさんによるもの。今回で6回目(?)の豪華な舞台で、再演を繰り返す人気プロダクションです。
【第1幕】聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会
教会の作り込みはしっかりしているし、「テ・デウム」の時には両サイドが左右に退いて舞台奥まで広く使った豪華絢爛な祭壇が出現するのは見応えがあります。光の使い方もうまい。
【第2幕】ファルネーゼ宮殿
トスカは赤のドレスに衣装替え。血の赤か?
スカルピアの胸の部分一帯にはしっかり血のりをつけ、トスカの手にも血がたくさん。それをテーブルの上にあるナプキンで拭うという手のこみよう。ちゃんとした演出に感心しました。
死体の下敷きとなった赤く長い布をゆっくり引っ張るトスカ。これは何かの暗示かな。スカルピアから逃れられないこと?
【第3幕】聖アンジェロ城の屋上
第3幕では、セットを2階建てにして、トスカとカヴァラドッシとの二重唱を下で歌わせ、最初と処刑の場面以降はまた上に戻る。上から鉄格子を下ろしてきたりと舞台セットも面白く、看板プログラムだということに納得します。
カヴァラドッシが撃たれる場面。トスカの目算では空砲のはずが、手違いだかスカルピアの罠かで実弾で殺される。衝撃的な場面のはずですが、コメディによくある「なんで・や・ねん...」と死んでいくのを思い浮かべてしまう関西系の私…
素晴らしい公演でした。特に主要3役には大きな拍手と bravo! brava! そして、再演演出の田口さんが先日亡くなったばかりの演出ディアツさんの遺影を胸に登場し、また大きな拍手に包まれていました。
【指揮】エイヴィン・グルベルグ・イェンセン Eivind Gullberg Jensen
【演出】アントネッロ・マダウ=ディアツ Antonello Madau Diaz
【美術】川口 直次
【衣裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
【照明】奥畑 康夫
【再演演出】田口 道子
【舞台監督】斉藤 美穂
【トスカ】マリア・ホセ・シーリ Maria José Siri
【カヴァラドッシ】ホルヘ・デ・レオン Jorge de Leon
【スカルピア】ロベルト・フロンターリ Roberto Frontali
【アンジェロッティ】大沼 徹
【スポレッタ】松浦 健
【シャルローネ】大塚 博章
【堂守】志村 文彦
【看守】秋本 健
【羊飼い】前川 依子
【合唱指揮】三澤 洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】TOKYO FM 少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【芸術監督】飯守 泰次郎
ホワイエにも一段と大きなクリスマスツリー
シーリさんは来年4月の『アンドレア・シェニエ』にも出演します。これも観たいです。
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