漢のバカ尾根、ごめんなさい、正直ナメてました ~甲斐駒ケ岳・黒戸尾根~ | バイクと犬とYシャツと私

漢のバカ尾根、ごめんなさい、正直ナメてました ~甲斐駒ケ岳・黒戸尾根~


日本三大急登のひとつ「甲斐駒ケ岳・黒戸尾根登山道」
山登りを趣味として3年、登り始めた頃からちょくちょくその名前を聞いて気になっていた。
標高差2200mのロングでハードな登山道。
それを日帰りでやる。

はたして今の自分に、登れるのか?登れないのか?
いや、オマエ、その前に登るのか?登らないのか?
ビビってるのかぁ、この野郎っ!
かかって来いや!

というような登る前から心の中での戦いが繰り広げられる、まさに漢ゴコロをくすぐる登山道。
・・・いや、Mゴコロか?

気になるものは行っとかなな、と最近ロング日帰り登山ばっかりで少々自身がついてきたからチャレンジしてみました。
まぁ、しかしこれが、めちゃハードだったわけで・・・




平成26年7月30日(水)午前4:40分、「甲斐駒ケ岳」黒戸尾根登山口に立つ。
気合も充分、よし、さくっと片付けて帰ろう、
とカル~く思っていた、この時は・・・


まだ薄暗い林道を歩き「駒ケ岳神社」脇から橋を渡り、さぁ「黒戸尾根」始まります。


標高はまだ800mぐらいか?行き慣れた鈴鹿の山と大差ない感じ。
でもしょっぱなから急な登り。
寝不足のためか今日は足が重い。

途中、後ろから来たトレランスタイルの若者に抜かされる。
「おはようございま~す~!」
彼は涼しい顔してグングン登っていく。
ああ、そうか、ここはこういった足に自信がある強者達がトレーニングを兼ね登る山なんだな。
この人、まだ僕が7合目ぐらいをヒィヒィ言いながら登ってる時、また涼しい顔して山頂から折り返して来てたし。
結局この人が初めで、その後そんな、もののふ達数人に抜かれまくる一日になった。


登り始めて約1時間と30分、「笹ノ平分岐」に着く。


おい、あと7時間て・・・・
ココロ折れる「笹ノ平分岐」です。
嘆いていてもしょうがないんで先を急ぎます。


そんな中、やっと木々の隙間から特徴的な「オベリスク」が見えてきた。
南アルプスは森林限界が高いのか登ってもなかなか視界が開けないのが少々イヤだ。




「刃渡り」と呼ばれるとこまで来た。
ハマショーの「EDGE OF THE KNIFE」を口ずさみ渡る。
両サイドは切れ落ちているけどそんなにプレッシャーは感じない。
それにしてもいい天気!


「刀利天狗」というとこまで来た。
こういった古くからの石碑や石仏が随所に見られ、昔から修行のため、信仰のため沢山の人に登られた道なんだなと、そして自分も修験者になった気分になる。




やっと「五合目小屋跡地」まで来た。
正面に駒ケ岳らしきものが見えてきた。
まだまだ遠い!
それにゲキ登りじゃん!

そしてここから先はハシゴ・クサリが続く、激登りゾーンに突入する。


まぁ、注意深く進んで行けばなんてこと無いゾーンですが、ハシゴもクサリも無かった昔は大変な場所だったんでしょう。



「七丈第二小屋」到着。
ここで水を補給する。
この日は荷物を軽くするため背中に1.5リットルのアクエリアスしか積んでこなかった。
ここまでで飲み干していたため、もし水が出てなかったらどうしようと不安だったけど、
よかった、南アルプス天然水が100円で飲み放題でした。

小屋の上にはテント場があります。
鳳凰山とその向こうに富士山が見える見晴らしの良いテン場。



ここで泊まって富士山の向こうから昇るであろう朝日を見てみたいと思う反面、
ここまでテン泊装備を背負って登るのはちょっとカンベンしてほしいから、まぁやらないでしょう。

そしてここから先は背の高い樹林帯も終わり、やっとハイマツ系の低木になってきて視界がグンッと開けてくる。

そうそう、こうでなきゃイヤなんすよ、山は。
疲れきっていた心と体に喝が入り少し元気になった。



「八合目御来迎場」到着

御来迎とは?
「人が死ぬ際に一心に念仏を唱えると、阿弥陀仏や菩薩が迎えにやって来ること」らしい。
まさしく、ここまでの辛く苦しく長い激急登山道は、一心に念仏を唱えるがごとくなものだった。
そしてやっとその苦行が報われようとしている。

「ようここまで来なさった」と、菩薩様が目の前に現れ極楽の門が開かれるような場所「八合目御来迎場」
う~ん、この登山道、いわゆる臨死体験みたいなものなのかな?
死後の世界の疑似体験・・・

さぁ、天国(山頂)まではもうすぐだ!(とはいえ、まだ1時間ぐらいかかるんですけど・・・)

二本の剣が突き刺さってる岩。
誰がいつ何のために刺したのかわからないけど、なんかカッコイイ。
その前でポーズを決める僕も、カッコよさ2割増し(笑)


しかし山頂が見えてもなかなか近づいてこない。
一歩づつ、一歩づつ・・・・・

実際は、あとで画像データから時間拾ったら、ここから山頂まで15分ぐらいだったけど、
いやはや、めちゃくちゃ長かったイメージです。一時間ぐらいの感覚。
相対性理論?



そして、登り始めてから6時間半経過後、「甲斐駒ケ岳・黒戸尾根」クリア!
やったぜ!

山頂は北沢峠から登ってくる登山客でにぎわっていました。


前回登った時はガスって真っ白だった山頂だったけれど、
今回は何もかも開けっぴろげた眺望でまさしく極楽浄土!



山頂の祠に手を合わせ、



南アルプスで南アルプス天然水をゴクゴク飲み、



「天空の剣」を天に掲げた後は、


下山開始です。

「甲斐駒ケ岳・黒戸尾根」日帰りプラン、ある意味、ここからが地獄の始まりですね。
来た道を戻る、ただそれだけの話しですが、日本三大急登は日本三大急下りなわけで・・・




あれだけ晴れていた山は、下り始めたら急速にガスってきた。
最初は調子よく下って行ったが、七丈小屋を過ぎたあたりからヒザがキシキシ痛み始めた。
少し下っては休みを繰り返しペースダウン。
五合目小屋跡あたりの登り返しの時、いきなりふくらはぎが攣った。
グッ・・
バランス崩して倒れこむ。
足首をゆっくり伸ばして曲げて、ふくらはぎの筋肉をマッサージ。
まだ行程は半分だ。
少し長めの休憩をしてまた歩き出す。
ヒザが痛い、腰が痛い、股関節も痛み出した。
暗くなる前に下山できるのか?
登ることが死ぬまで、死んでからの疑似体験ならば、下山は生まれるまでの疑似体験なのか?
生まれるって大変だ。
命を大切に。

そんな事考えながらヒィヒィ言って下山している僕の横をサァーっと涼しい顔して追い越していくトレラン兄さん。
「お疲れ様でっす~♪」
そうね、あなた達にはただのトレーニングだよね。



結局下山には五時間もかかってしまった。
いやはや、精も根も尽き果てましたよ。
でも、やり切った感、満足感、達成感、充実感はなんか凄かったです。


「甲斐駒ケ岳・黒戸尾根日帰りプラン」
「臨死体験」と「生まれかわり体験」が出来るお得なプランです。
とにかく、苦しくつらいそして長ぁ~い坂を登り切っての山頂は、解脱感ハンパないです!
人生に悩んでるそこのアナタ、チャレンジしてみたら何か変わるかもしれませんよ。

ただこの後一週間ぐらい、強烈な筋肉痛に悩まされましたがね・・。