歌と訳詞♪:バルバラの『アブサン酒』 | penのフランス語日記

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「虎と小鳥のフランス日記」でフランス語を学習中のpenの日記。独学です。トリュフォーの映画を字幕なしで楽しむのが目標。フランス語とフランス全般の情報を楽しくご紹介。初心者むけの文法、語彙、ディクテなどの学習法、フランス映画、フレンチポップスの話題もあり。

こんにちは。penです。今週の物は「アブサン酒」という歌にしました。

ランボオとヴェルレーヌ


世紀末のパリで、芸術家たちに愛され、崇められ、数々の作品にインスピレーションを与えたお酒、アブサン。多くの芸術家がこのお酒を愛飲しましたが、詩人ランボオは浴びるように飲んでいたそうです。

バルバラのアブサンという曲には、ランボオとヴェルレーヌの名前がでてきます。

まず、聞いてください。3分44秒。
アブサンをテーマにした絵がたくさん出てきます。


昔のアブサンはアルコール度が強く、ニガヨモギがベースで苦いのですが、ほかにもたくさんの薬草が入っていて、なんともいえない香気があったそうです。

向精神薬のような作用があり、最初は楽しいのですが、度が過ぎると幻覚をおこし、不安になったり、精神を錯乱させたと言われています。

ゴッホが発作的に左耳を削ぎ落したのも、もともとあった精神の病がアブサンによってエスカレートしたという説があります。たくさん飲むと、けいれんがおきたりして、肉体も損なわれていきます。

今のアブサンはもっとマイルドなもので、風味もアニスでつけています。

では、歌詞を訳してみます。

L'absinthe
アブサン酒

Ils buvaient de l' absinthe,
Comme on boirait de l' eau,
L' un s' appelait Verlaine,
L' autre, c' était Rimbaud,
Pour faire des poèmes,
On ne boit pas de l' eau,
Toi, tu n' es pas Verlaine,
Toi, tu n' est pas Rimbaud,
Mais quand tu dis"je t' aime",
Oh mon dieu, que c' est beau,
Bien plus beau qu' un poème,
De Verlaine ou de Rimbaud,

二人はアブサンを飲んでいた
まるで私達が水を飲むように
一人はヴェルレーヌといった
もうひとりはランボオ
詩を書くためには
人は水は飲まない
あなた、あなたはヴェルレーヌじゃない
あなた、あなたはランボオじゃない
でも、あなたが「君を愛している」という時、
ああ、神さま、それは素敵なの
ヴェルレーヌやランボオの詩よりずっと素敵


Pourtant que j' aime entendre,
Encore et puis encore,
La chanson des amours,
Quand il pleut sur la ville,
La chanson des amours,
Quand il pleut dans mon coeur,
Et qu' on a l' âme grise,
Et que les violons pleurent,
Pourtant, je veux l' entendre,
Encore et puis encore,
Tu sais qu' elle m' enivre,
Comme le bateau ivre,
La chanson de ceux-là,
Qui s' aiment et qui en meurent,
Et si j' ai l' âme grise,
Tu sécheras mes pleurs,

それでも私は聞くのが好き
もう一回、そしてもう一回
愛の歌を
街に雨が降る時、
愛の歌を
私の心に雨が降る時
そして、人が灰色のこころを持つとき
そして、ヴァイオリンが悲しい音を奏でる時
それでも私は歌を聞きたいの
もう一回、そしてもう一回
歌は私を酔わせるのよ。
まるで酔っ払った船のように
この歌、
愛しあい、死にゆく
そして、私が灰色のこころを持つとき
あなたは私の涙をふいてくれるでしょう


Ils buvaient de l' absinthe,
Comme l' on boit de l' eau,
Mais l' un, c' était Verlaine,
L' autre, c' était Rimbaud,
Pour faire des poèmes,
On ne boit pas de l' eau,
Aujourd'hui, les"je t' aime",
S' écrivent en deux mots,
Finis, les longs poèmes,
La musique des mots,
Dont se grisait Verlaine,
Dont se saoulait Rimbaud,


二人はアブサンを飲んでいた
まるで私達が水を飲むように
一人はヴェルレーヌといった
もうひとりはランボオ
詩を書くためには
人は水は飲まない
きょう、「君を愛している」という言葉
二つの言葉を書いて
長い詩が終わる
言葉の音楽
それはヴェルレーヌを酔わせ
ランボオをうっとりさせた


Car je voudrais connaître,
Ces alcools dorés, qui leur grisaient le coeur,
Et qui saoulaient leur peine,
Oh, fais-les-moi connaître,
Ces alcools d' or, qui nous grisent le coeur,
Et coulent dans nos veines,
Et verse-m' en à boire,
Encore et puis encore,
Voilà que je m' enivre,
Je suis ton bateau ivre,
Avec toi, je dérive,
Et j' aime et j' en meurs,

だって私は知りたいのよ
すばらしいそのお酒、彼らの心を酔わせた
そして彼らの痛みをいやした
ああ、私に教えて
すばらしいそのお酒、私達の心を酔わせるの
そしえて血管の中を流れる
私に注いでちょうだい
もう一杯、そしてもう一杯
ほら、私も酔ったわ
私はあなたの酔っ払った船
あなたといっしょに、私は漂流するの
そして、私は愛し、そして死にゆく


Les vapeurs de l' absinthe,
M' embrument,
Je vois des fleurs qui grimpent,
Au velours des rideaux,
Quelle est donc cette plainte,
Lourde comme un sanglot,
Ce sont eux qui reviennent,
Encore et puis encore,
Au vent glacé d' hiver,
Entends-les qui se traînent,
Les pendus de Rimbaud,
Les noyés de Verlaine,
Que la mort a figés,
Aux eaux noires de la Seine,
J' ai mal de les entendre,
Encore et puis encore,
Oh, que ce bateau ivre,
Nous mène à la dérive,
Qu' il sombre au fond des eaux,
Et qu' avec toi, je meurs,

アブサンの放つものに
私はぼぉっとする
はい上がる花が見えるわ
ヴェルヴェットのカーテンの上を
うめき声は何て言ってるの?
嗚咽のように重いわ
戻ってきたのは彼ら
もう一杯、そしてもう一杯
冬の凍てつくような風の中
彼らがはいずるのを聞いてよ
ランボオのぶら下がった首
ヴェルレーヌの溺死体
凍りついた死を
セーヌ川の黒い水の上の
よく聞こえないわ
もう一杯、そしてもう一杯
ああ、それは酔っ払った船
私達は漂流しているの
船は底まで沈む
あなたと一緒に、私は死ぬの


On a bu de l' absinthe,
Comme on boirait de l' eau,
Et je t' aime, je t' aime,
Oh mon dieu, que c' est beau,
Bien plus beau qu' un poème,
De Verlaine ou de Rimbaud..

人はアブサンを飲んだ
まるで水を飲むように
そして、あなたを愛している、愛しているの
ああ、神さま、それは素敵なの
ヴェルレーヌやランボオの詩よりずっと素敵


☆単語メモ
enivrer ~を酔わせる
se griser 陶酔する
saouler=soûler 酔う
verser 注ぐ
ivre 酒に酔った
dériver 流される
vapeurs (複数で)のぼせ、いらいら
embrumer 霧で包む、ぼぉっとする
grimper よじ登る
sanglot すすり泣き
se traîner 這う
noyer 溺死する
aller [être] à la dérive 漂流する、成り行きにまかせる
sombrer 沈む



☆ヴェルレーヌの詩も織り込まれていますね。まあ、私の訳は参考程度にしてください。最初はふつうに飲んでいて、だんだん酔っ払って幻覚を見るというふうに解釈して訳しました。たとえば、
Les pendus de Rimbaud,
Les noyés de Verlaine
で首や死体が複数なのは二重,三重に見えてるのだと思います。


☆これはレオナルド・ディカプリオがランボオに扮したTotal Eclipseという映画のワンシーンです。カフェでみんながアブサンを飲んでいます。だいたいこんな感じだったんでしょうね。ただみんなフランス語をしゃべっていて、店はもう少し薄暗かったんじゃないかなぁと思いますが。
4分ほど



バルバラのこの曲はこういうジャケットのアルバムに入っています。1972年の『La Fleur D'Amour』(愛の華)という作品です。
バルバラ 愛の華


楽天とアマゾンをざっと見たところこのアルバムはなかったです。

こちらは『Barbara Chante Barbara』『N°2』『Ma Plus Belle Histoire D'Amour』『Le Soleil Noir』『Madame』『L'Aigle Noir』『La Fleur D'Amour』『Amours Incestueuses』『La Louve』『Seule』『Il Me Revient』+ボーナスCDを付けた全12枚組なので、この曲も入っています。
⇒ 【送料無料】【輸入盤】 Integrale Des Albums Studio [ Barbara ]


最後までお付き合いありがとうございました。
次回の「今週の物」の記事でまたお会いしましょう。

pen