"Let's go crazy" 歌詞の解説:プリンスのインタビューなどを元に | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...



さすが羽生選手、そしてジェフリー・バトル。今年の4月に急逝したロック界の鬼才、プリンスの大ヒット曲をショートプログラムに使ってきましたか。


いやー、すごいわ、このセンス。


しかし改めてこの曲の歌詞を読み、プリンスが亡くなった状況と併せて考えてみると、少々ゾワッとする部分もあります。

一つ一つの行に対訳をつけるのは野暮かな、と思うので、要約しながら、解説をつけていきたいと思います。なお、あくまで私が調べたものを元にして私が考えた解釈なので、その点はご了承ください。


*************


Dearly beloved
We are gathered here today
To get through this thing called "life"



この冒頭の部分では、司祭が教会に集まった人々に向けて呼びかけているような雰囲気ですが、喋っているのはおそらくプリンスでしょう。

オルガンの音も、最初の「Dearly beloved」という言葉も、ミサはミサでも葬儀の始まりを連想させます。


Electric word, life
It means forever and that's a mighty long time
But I'm here to tell you
There's something else
The afterworld

A world of never ending happiness
You can always see the sun, day or night



今日、我々がここに集まったのは「人生」、あるいは「命」というものをご一緒に乗り切るためです、と司祭=プリンスはおごそかに言い、この「人生」というのは全うするのに非常に長い時間がかかるものだけど、その後にはちゃんと「あの世」が待ち受けているのですよ、と聞いている者たちを安心させる。

そこでは昼も夜も太陽が輝いていて、それはそれはハッピーで素晴らしい場所なのだ、と。


So when you call up that shrink in Beverly Hills
You know the one, Dr. Everything'll-Be-Alright
Instead of asking him how much of your time is left
Ask him how much of your mind, baby



だからお医者さんに行ったら聞くべきなのは「先生、あとどのくらい生きられますか」じゃなくて「あとどのくらい頭がしっかりしていられますか」ということなのです、とプリンス司祭は言うのですが、ここで言うお医者さんは

(お金もちの住むことで有名な)ビバリーヒルズの(これもまたお金持ちの人がこぞってかかりたがる)精神科医

ということになっています。

ほれ、どんな時にでも「大丈夫、問題ありませんよ」と言って患者をなだめようとする、要するに信用ならない、ヤブ医者なんですね。


Cause in this life
Things are much harder than in the afterworld
In this life
You're on your own



ではなぜ頭がしっかりしていないといけないのか、と言うと、この世はあの世と違ってすごく世知辛いところだから。皆、ひとりぽっちで、誰も助けてくれないから。


と、ここまではまあまあ、分かりやすい内容なんですが、この次のところがなんかちょっと:

And if de-elevator tries to bring you down
Go crazy (Punch a higher floor!)

で、"DE-ELEVATOR" があなたを引きずり降ろそうとしたら、クレイジーになって、いっそう高い階のボタンを押してしまえ!


??


そこで参考になるのがプリンスが有名コメディアンのクリス・ロックに語ったことなんですね:







このインタビューの13分目を経過した辺りで、ロックが

「自分の場合は検閲を免れるために必死で工夫をする結果、より面白いジョークが出来上がったりするもんなんだけど、あなたはどうなんですか?」

といった質問をします。

するとプリンスは:

Some of my earlier work, if people wanna say that it's better, "Dearly Beloved", "Let's Go Crazy" was about God and Satan.
ぼくの昔の作品の方が良かった、っていう意見があるとすれば、その例として「Dearly Beloved」(で始まる)「レッツゴー・クレイジー」なんかは神とサタン、がテーマだったんだよね。


I had to change up those words, but the "de-elevator" was Satan.

でも歌詞を変えざるを得なかった。(あの曲に出てくる)「DE-ELEVATOR」はサタンのことだったんだ。


 I had to change those words up because you couldn't say "GOD" on the radio.
(あの当時)ラジオで(曲を流してもらおうと思ったら)「GOD」とか言っちゃだめだったから、歌詞を変えなくちゃならなかった。


And "Let's go crazy" was "GOD" to me. You know, "Stay happy, stay focused, and you can beat the de-elevator".
で、ぼくにとって「レッツゴークレイジー」はGODのことを意味してた。「ハッピーでいろ、それだけを考えろ、そしたらDE-ELEVATORに打ち勝つことができるから」っていうことで。



というわけで、プリンスは当時の検閲を迂回するために、非常にクリエイティブな言葉を思いついたわけなんですね。「エレーベーター」が人を上方に移動させる(ELEVATEする)ものだとすれば、「反・エレベーター=悪魔」は人を地獄へと引きずり下ろす(DE-ELEVATEする)もの。

そして高いフロアを目指せ、というのは神様に近づくことに専念しましょう、という意味のようですね。



では後半に行きます:


If you don't like
The world you're living in
Take a look around
At least you got friends

You see I called my old lady
For a friendly word
She picked up the phone
Dropped it on the floor
(Ah-s ah-s) is all I heard



と、お説教は続くのですが、

自分の境遇について文句を言う前に周りを見渡してごらんなさい、お友達がいるだけマシじゃないですか。ぼくなんか自分の彼女にちょっと優しい言葉をかけようと思って電話したら、出たのは良いけどすぐに受話器を落っことされて、聞こえてくるのは喘ぎ声だけ(=つまり誰か別の奴とお取込み中であった、ということ)。


プリンス司祭、えらくお気の毒な様子です。


Are we gonna let de-elevator bring us down?
Oh, no lets go!


でもだからと言ってde-elevatorにどん底に引きずり落されることなんかないでしょ?

Let's go crazy
Let's get nuts
Let's look for the purple banana
Until they put us in the truck, let's go!

We're all excited
But we don't know why
Maybe it's cause
We're all gonna die


↑ この部分はとにかく


クレイジーになっちゃえ、紫バナナを追い求め、死んで(トラックに)担がれて行ってしまうまで。みんなもうコーフンしちゃって、どうしてなんだか分からないけど、どうせ皆死ぬから、じゃないかな。



というヤケクソちっくな雰囲気が流れています。

紫のバナナって何よ、というような細かいところはこの際、追及しないでおきましょう。なんか幻の、不思議なもんなんじゃないでしょうか。



以下も同じく。

And when we do (When we do)
What's it all for (What's it all for)
You better live now
Before the grim reaper come knocking on your door



このGRIM REAPERは死神のことですね。怖ーい暗ーい、(人間の命をREAP=刈り取るための)鎌を持った死神さんです。なので、死んじゃったら元も子もない、今を楽しんで生きた方がいいでしょ、死神がやって来るまでは、とプリンスはアドバイスします。







まあ、以下も同じように続きます。

Tell me, are we gonna let de-elevator bring us down?
Oh, no let's go!

Let's go crazy
Let's get nuts
Look for the purple banana
Until they put us in the truck, let's go!

C'mon baby
Let's get nuts!
Yeah
(Crazy)

Let's go crazy!

Are we gonna let de-elevator bring us down?
Oh, no let's go!
Go (Go crazy)

I said let's go crazy (go crazy)
Let's go (Let's go! )
Go (Let's go! )



そしてここでまたヤブ医者さん登場:

Dr. Everything'll-Be-Alright
Will make everything go wrong
Pills and thrills and
daffodils will kill
Hang tough children

He's comin'
He's comin'
Comin'




Take me away!




「大丈夫、全部うまく行きますよ」先生が、全部台無しにしてしまう。薬やら強い刺激やらお花なんかでも死んじゃうんですよ。だからみなさん、しっかりね。


と最後にプリンス司祭が注意を喚起しています。


「DAFFODILS=水仙」 もここでなんで出てくるの、っていう話ですが、ここはおそらくプリンスが言葉の音を面白がって、ピル、スリル、ダッフォディル、キル、で韻を踏んでいるのじゃないかと思います。



ところでその後の:

さあ、来るぞ、来るぞ、来るぞ、

「って言ってるのは、だれが来るの?」って主人に聞いたら、

「そりゃあその怖いヤブ医者だろう?」

という返事でした。


だからそいつにつかまる前に


「俺をどっかに連れ去っていってくれーーー」


と最後にプリンスが叫んで懇願している。



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以上が歌詞の解釈・解説でした。



ところで


皆様ご存知の通り、プリンスの死因は薬物によるOVERDOSE、怖がっていたヤブ医者に処方された薬だったことでしょう。


そして、彼が見つかったのは


エレベーターの中でした。



ぞぞぞぞぞー