先月、トロント近辺に住んでいる(日本の)大学のOB・OGたちと野球観戦に行って来ました。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、トロントにはBLUE JAYSというメジャーリーグのチームがあって、現在、American East ディビジョンでヤンキースと首位争いを展開しています。1992年、1993年にはワールドシリーズを二年連続で制した輝かしい歴史を持っているものの、それ以降はプレイオフにさえ出場できていない。低迷を続けていたところ、今シーズンはいきなり7月頃から怒涛のラインナップ強化をしたおかげで一気に首位争いに加わるところまで躍進しました。
まあそれはこの際、ちょっとおいといて、とにかく7月の暑い日に球場に出向いたわけです。
観戦中は席がホームプレート側と言えど、一番高ーい所であったのも手伝って、我々のグループはさんざん、試合に関係のない話をして、ビールを飲んで、楽しんでいました。
ふとフィールドを見ると、選手たちが豆粒サイズでプレイしています。
わー、ちっちゃいなー
と思い、選手たちとの「距離」を実感したのでした。
折りしもジェイズの選手がホームランを打ち、大歓声が起こります。打った選手はベースを一周し、歓喜するチームメイトたちにホーム近辺、そしてダッグアウトで迎えられる。
外野側の大型スクリーンに目をやると、その模様が大きく映し出され、初めてヒーローの顔がアップで明らかになりました。
また一方で打たれた相手チームの投手が悲愴な顔になり、うなだれる様子もアップになります。
これを見て、一気に選手たちに対する心理的な距離が縮まりました。
あったり前の事なのですが、彼らは一球、一打にありったけの気持ちを込めて、戦っているのだな、ということに改めて気づいた瞬間でした。
遠くから見ているだけではつい忘れてしまうようなこと。
加えて言えば、我々観客が見ているプレイと、彼らが実際、フィールドに立って見ているプレイとではとてもではないけれど埋められない違いあるのだろうな、とも思いました。
たとえテレビカメラで選手たちの表情が大写しになり、彼らと心を一つにしているつもりでも、我々はその場にいる彼らが体感していることの全てを共有できるわけではない。
観客席よりもすっと高い気温、土埃の匂い、
唸るような観衆の声に混じり
敵や味方選手たちからひっきりなしにかかる言葉
緊張のあまり張り裂けそうな胸の鼓動、苦しくなる呼吸、目に入る汗
投手であれば投げた時の肩のきしみ、打たれた時に凍る背筋
バッターであれば打った後の心地よい手のしびれ、押し寄せる歓喜
ファンがいくら想像しても、本物には届かない。
大舞台であればあるほど、戦うアスリートは孤独なのだ。
(なお、スケート・ファンの方は上の赤文字部分を「観客席よりもずっと低い気温…」という具合に置き換えて行ってみてください。なかなか気分が盛り上がります。)
そんなことを考えていると、ちょうど良い動画が見つかりましたのでご紹介したいと思います。
Maclean's Magazineの特集で著名なカナダ人をそれぞれの職場・活躍の場で撮影したものですが、途中からカメラはどうやらその人自身の眉間に取り付けられているようなのです。
題して
「(~~さんのように)~~したらこんな気持ち」
みたいな感じかな?
最初にご紹介するのは彼女自身、アスリートではないけれど、カート・ブラウニングさんの奥様で、プリマ・バレリーナのソニア・ロドリゲスさん
動画はこちらでどうぞ。
最初は練習場で靴を着けるところから。
入念にバーで柔軟しながら体を温めて。。。
ピルエットの体勢に入る。
ここからが見もので、目線はソニアのものと一致するように、彼女の頭部にカメラが付けられています。
それこそ目が回るようなスピードで周囲の光景は回転して、焦点は合わず、両手が何度も前で合わさっては離れます。
ほー、なるほど、やってる方からするとこんな感じなんだな。
そしてフィギュア・スケートの動画もあります。
「世界チャンピオンとスケートしたらこんな気分」
この動画はペア選手のメーガン・デュアメル&エリック・ラドフォード組が登場します。
動画はこちら。
まずは靴を着けて二人がリンクに入る所から。
勢いよく滑り出します。
この動画のために、さすがにジャンプやリフトとなると危険性が伴うため、ペアならではのもう一つの技、デス・スパイラルが採用されたようです。
まずはエリックの角度から、
メーガンが徐々に体を横に倒しながら、回転します。
今度はメーガンの観点から
見えるのはただただ回転するリンクの天井とライト
その間、エリックの見ているのは
メーガンのこんな姿。
強烈な遠心力に抵抗しながら、片手だけでつながっているのだ、ということが良く分かります。
アスリートの目に映るものは
我々の想像をはるかに超えているのですね。
ただただ、リスペクトあるのみ。