2014年スケートカナダでお会いした方々:ベヴァリー・スミスさんとキャロル・レインさん | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

何度も繰り返してすみませんが、今年のスケートカナダはメディアセンターがとても穏やかで、色んな方とお話しする時間がありました。

センターでつかさどる作業の種類や数は変わらないのですが、なんせ日本からのメディアの数が去年とは比較にならないほど少なく、選手やコーチへのインタビューのリクエストは全くありませんでした。

その分、得たご縁もありました。

この大会のちょっと前から急に日本のスケートファンの間でお馴染みになったBEVERLEY SMITHさんです。

出発時にトロントの空港で搭乗アナウンスがあった時、ふと横を見たらスミスさんらしき方がいて、思わずアプローチしてしまいました。スミスさんのブログにコメントを書いたことから憶えててくださって、話が盛り上がりました。

ケロウナまでは別々の席だったのであまり会話はなかったのですが、到着したところでスミスさんを迎えに来ていたスケートカナダの車に便乗させていただき、大助かり。

そこから毎日、メディアセンターで顔を合わせることになりました。

常々思っていたことなのですが、こんなに日本のスケーターたちが世界のトップレベルにいるというのに、英語メディアでの扱いがとても少ない。もちろん大会での成績や記者会見のレポートはあるし、演技の解説なども(CBCやユーロスポーツをはじめとして)盛んです。でもたとえば羽生選手や町田選手、そして浅田選手や高橋選手を直接取材して特集した記事、なんて見たことがありません。

それはどうしてか?

私の憶測に過ぎませんが、原因は以下の物が考えられます。

有名選手の場合、そもそも大会中に接近しようにも日本のメディアに阻まれてなかなかかなわない。

日本語での取材を傍から聞こうとしても、通訳が手配できなければ全くお手上げ。

また、個別インタビューをリクエストしても英語でインタビューに答える自信がなくて選手の方が断る、ということもあるかも知れません。

とにかく英語メディアの方々に入る情報量が決定的に少なく、とってももったいない、という気がします。

今大会では日本からのメディアが少なかったため、日本選手への取材もゆったりしたペースでした。ミックスゾーンで質問に答えている横で、私が日本語で聞いたことを英語で(かいつまんで、ですが)スミスさんたちに伝えたりする余裕がありました。

そしてメディアセンターでの記者会見が終わったあと、スミスさんに頼まれて無良選手のお父様に取材が成立し、貴重なお話が聞けました。

その結果がスケートカナダのHPに掲載されたこの記事です(名前は出ていませんがスミスさんが書いたものです)。無良選手に関する部分だけ転載・翻訳します:


KELOWNA, B.C. A seismic shift happened in men’s figure skating yesterday at the Skate Canada International Grand Prix.
スケートカナダ・インターナショナル大会で昨日、男子フィギュア界に激震が走った。

A transformed Takahito Mura of Japan came out in the men’s final, and threw down such a
powerful gauntlet that surely, Olympic champion Yuzuru Hanyu must be watching.

大変身を遂げた日本代表のタカヒト・ムラが男子競技の最終日に登場し、強烈な挑戦状を叩きつけた。オリンピック・チャンピオンのユヅル・ハニュウにもそれはきっと届いただろう。

Mura broke down in tears in the kiss and cry (that’s what that corral is for) after his marks popped up: 173.24 for the free – a mark he thought he’d never attain – and 255.81 overall. Then he had to wait for two-time European champion Javier Fernandez of Spain to skate, but Fernandez left marks on the table, looking as if he was playing to catch up.
点数が出ると、(あの囲いのようなものの裏にあった)キス&クライでムラは感極まって涙を流した。フリーでは173.24―これは自分でもとうてい到達できないだろうと思っていた点数だそうだが―、トータルでは255.81。次に滑るヨーロッパ選手権二連覇中のスペイン代表ハビエル・フェルナンデスの結果を待たなくてはならなかったが、フェルナンデスは点数を取りこぼし、ずっと(ムラの)後を追いかけているように見えた。

And Mura won. By almost 11 points.
そして終わってみるとムラの勝利だった。11点近くもの差をつけて。

With Daisuke Takahashi retired, Japan still has its Hanyus and its mighty Tatsuki Machidas, but now count Mura in the mix. Japanese nationals will be as hard fought as ever.
ダイスケ・タカハシが引退した今、日本にはまだハニュウや強力なマチダなどの類がいるが、そこにムラも加わったと言わざるを得ない。全日本選手権はいっそう熾烈な戦いとなるだろう。

Mura had always looked like a bit of a hammer-thrower in the past to be sure, thundering through his jumps with power and thud. But he came out in the free skate dressed elegantly, as the Phantom of the Opera – a completely different look for him altogether. And he’d worked during last summer with Ilia Kulik, who helped him with the technique on his jumps and also with basic skating skills. And who had sweeter technique than Kulik, who would land his jumps with unparalleled softness of the knee? Mura is landing his jumps with a new softness of the knee.

これまでのムラはハンマー投げを思わせるような選手で、豪快なスピードとパワーでジャンプを跳び、着地する時も地を揺るがせるような印象だった。だが今回のフリーではエレガントな衣装で登場し、オペラ座の怪人を演じた。全く違うイメージである。夏の間はイリア・クーリックと練習をしたそうで、ジャンプのテクニックや基本のスケーティング・スキルを磨いたと聞く。そう言えば、クーリックほど優雅な技術の持ち主はいただろうか?彼の着地時の膝の柔らかさは類を見なかった。そしてムラは新たにその膝の柔らかさを身につけたのである。

His father/coach Takashi Mura (who skated singles and pairs at the world level in the early 1980s) said his son now rotates his jumps more completely, allowing him to land more correctly with the knee.
父親であり、コーチでもあるタカシ・ムラは自身も1980年代にはシングルおよびペア選手として世界レベルの大会に出ていたそうだが、息子のジャンプに関してより回転が増し、膝をちゃんと使った着地ができるようになったと評している。

“I really thought it would take more time to reach 170 [for the free],” Mura said after his performance. “I was really very surprised. It’s the result of a lot of hard work.  I have learned that hard work will translate into high scores.”
「(フリーで)170点を出せるにはまだまだ時間がかかると思っていた」とムラは演技後に言った。「本当に驚いた。でも練習の結果が出たと思った。しっかり練習をすれば点数につながることが分かった」

Now he knows that there are folk who will expect more of him. “There will be a lot of pressure for the next competition,” he said. Father Mura says he cannot rest on his laurels, there is more work to be done, and the Japanese nationals will sort out the Japanese men.
これから自分にかかる期待も増すと知っている。「次の大会にはもっとプレッシャーがかかる」と彼は言う。父親も、まだまだ安心できない、課題は残っている、と言う。日本男子にとって、全ては全日本選手権で決まるのだから。

And it’s not just about the jumps for Mura. “It has taken me a long time to get to this point,” he said. “It took me a long time to figure out how to express myself and what Takahito Mura is about.” He admitted that Phantom of the Opera may have been overdone in the past, but although it was difficult to find his own Phantom, he has.

ムラにとって、もはやジャンプが全てではない。「ここまで来るのにとても時間がかかった。自分をどう表現したら良いのか、どうやったら自分らしさが出せるのか、が分かるまでに時間がかかった」と、彼は言う。オペラ座の怪人はすでにやり尽くされた感があると本人も認めている。だが自分なりのファントムを見つけるのが難しかったとはいえ、彼はそれを成し遂げた。







この他、CBCの解説者でもあるキャロル・レインさんにもお会いしました。

キャロルさんは今大会、アイスダンスのフリーで大躍進を遂げ、見事2位に入ったパイパー・ギレス@ポール・ポワリエ組のコーチとしていらしてました。





教え子の活躍にとっても興奮してらして、大ご機嫌。






ご覧のとおり、とってもお洒落で可憐なお方です。

CBCの解説が日本のスケートファンの間でも人気があることを伝え、町田選手のスケアメでのSPを私が聞き取り・翻訳した記事もお見せしました。


事情を聞くとやはりブレンダさんは異動させられたのだけれど(朝のニュースを読んでいるそうです)スケートの解説だけは続けられるように取り計らいがあったそうです。

良かったー。

ちなみに、皆さまがご心配していらした「カートのマシンガントークをコントロールできるのはブレンダさんだけなのに」という点をお伝えすると爆笑されていました。

キャロルさんのツイッターもよろしく。(この写真 ↓ は私がお撮りしました)