忘れる前に:「パリの散歩道」に関するジェフリー・バトルの言葉(スケカナより) | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

OPEN KWONG DORE PODCAST のHPに12月9日付でアップされていたジェフリーバトルのインタビューを聴きました。


このシリーズは必ずしもスケート関係者のインタビューを集めているわけではなく、色んな分野の人がフィーチャーされています。

しかしこれまでにカート・ブラウニング、サンドラ・ベジック、マリナ・ズエヴァ、ジェイミー・サレーなどが出ていて、PJクオン女史(CBCのフィギュアスケート番組でソーシャルメディアを担当)の人脈の影響が出ているのも確かです。

そして最新のインタビューではジェフリー・バトルが自分の選手生活を振り返ってたくさんのエピソードを披露しているほか、振付師としての仕事の醍醐味、インタビュアーになって印象に残っている場面、最後には自分をひとことで表すなら?と聞かれていたりします。

なかなか聴きごたえのあるインタビューでした。

さて、このインタビューでジェフリーは羽生結弦くんに関してコメントしていなのですが(パトリックに関しては色々言ってます)、私はこれを聞いていて彼がスケートカナダで日本人記者にインタビューされていた時のことを思い出しました。

そこでそろそろ私も当時のことを忘れかけているので覚書をしておきたいと思い、この記事をアップしています。

「スケートカナダREPORTその2」の中でも、ジェフリーが結弦くんのSP「パリの散歩道」について聞かれ、キーワードを幾つか挙げたことをご紹介しました。

ジェフリーはあのギター曲を選んだ時に、自分が結弦くんを見て「こういう所を引き出したい」「こういうテーマを描きたい」と思ったそうです。

それが何かと言うと

"Young boy maturing into an adult"
「少年が大人へと成長していく過程」:結弦くんはまだまだ若いけれど、それがじょじょに大人の男に成熟していくところ。

その中での結弦くんのキャラを言葉で表すとすると?と聞かれ、ジェフリーが最初に挙げたのが

"Wild child"
結弦くんはジェフリーにとって「ワイルド」なのだそうです。

じゃあ、ワイルド・チャイルドって「野生児」

ということかと言えばそうではなくて、ニュアンスとしては

なかなか一筋縄ではいかない、
抑えようとしても抑えられないエネルギーで一杯の男の子、

って感じでしょうか。

(そういえばどこか別のインタビューでもジェフリーはあのSPのことを「controlled wildness」と言ってましたね。この場合はそのハチャメチャなところをあえて抑えて、ギリギリのところで魅せる、と言いたいのかも知れません。)

そしてもう一つ、表したかったのが

 "Heartbreaker"

としての結弦くんのキャラ。

直訳すると「人の心を打ち砕く奴」ってことですが、要するにあの失恋マークの心臓が真っ二つに割れる絵があるじゃないですか。あのことですね。

「(知ってか知らないでか)人の心を弄んじゃう罪作りな奴」くらいでいかがでしょう。

(ジェフリーの目の付け所が鋭い。)

昨年に続いて2シーズン同じプログラムを使う、というのは振り付けや技に馴染んでいるという点では良いのですが、「新鮮味」を保つのがとても難しいとジェフリーは言ってました。

観客にとっても、ジャッジにとっても、そしてもちろん選手自身にとっても、マンネリになるからでしょうね。

そこを結弦くんは非常に上手に楽しんで自分のものにして、毎回、観る側との「やり取り」を大事にするからフレッシュに保てているのだ、ということでした。

あのプログラムを結弦くんのために作るときのプロセスがジェフリーは楽しかったそうです。

シーズンの始めに、はじめて振り付けをする時、選手は二つのタイプに分かれる、と。

ひとつは

「俺、こんなとこに居たくねーんだよ、もういいからさっさと教えてくれよ」

っていうような態度が明らかな選手。

もうひとつは、

振付師と一緒になってプログラムを作り上げよう

と、その創作過程に積極的に取り組む選手。

もちろん、結弦くんは後者の方で、ジェフリーが振りを見せると真似をするだけでなく、「こうしてみたらどうかな?」と自分からも提案をしたそうです。この状況をジェフリーは

「He was willing to play with it (= the program)」(彼はプログラムと戯れてくれる、工夫してくれる姿勢を見せた)

と表現していました。

こういう選手は振付師にとってすごくやり易いのだそうです。

その結果、あの素晴らしいプログラムが出来上がったのだ、と。

加えて、結弦くんは根っからのショーマン(performer) なので、観客を巻き込んであのプログラムを盛り上げているのが良いとジェフリーは言ってました。

観客を指さしたり、挑発したり、あれは自分ではなく、ユヅルが入れた振りだ、とも。

本人がそういう(観る側との相互作用 = interaction を重視する)姿勢だから二年目になっても、楽しめるプログラムなのだという事でした。

では去年とは何も変えていないのかと言えばそうではない。今年、目指しているのはより「洗練 (refine) された」「クリーン」なプログラム。

スピンのあとで(頭を振るなど)余分な動きを入れたがためにバランスを崩さないように、とか、
「奔放さ」(abandon)をもって演じるのと「乱雑」messyに滑るのは違う、とか、
ジャンプに入る前のステップでは「決めてやるぜ」みたいな自信の見える(dominant)な感じでやってほしいとか、

そのような細かい点を注意して仕上げていってほしい、ということでした。

そして最後に、今後も結弦くんの振り付けをするのか、と聞かれて、ジェフリーは

ぼくは自分から売り込むタイプじゃないから、選手の方から依頼されるのを待っている。もちろん、ユヅルがコラボをしたいというのであれば喜んで、という感じのことを言ってました。

なお、ピンクで表した単語は確かにジェフリーが使ったものだと憶えていますが、他は記憶に頼っているので一言一句テープ起こしをしたもの、とは思わないでくださいね。

ご参考までに、ということで書いてみました。