スケートカナダREPORTその10:羽生結弦のフリー演技と男子表彰式 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

さて、男子フリーのレポートの続きです。

結弦くんの演技について、家に戻ってから録画してあったテレビ放送を元に再現します。

解説はまたまたトレイシーさんとロッドさん。

彼らが言うには、パトリック・チャンの場合、カナダの代表としてオリンピックに出ることはもはや決まりきったことなので、そういう意味でのプレッシャーはゼロ。

GPシリーズはパトリックにとって「調整」の機会でしかない。

ところが日本の男子勢にとっては全ての大会がオリンピック選手選考の対象となり得る。その重圧を背負っての戦いはさぞつらいだろう、ということでした。

さて、いよいよロミオとジュリエットの音楽が鳴り始めます。

「この選手はオリンピックチャンピオンになるための要素を全て兼ね備えている」

とロッドが言うと

「『経験』以外の全て、ね」

とトレイシーが言い直します。

4Sで転倒すると

「入っていく時のスピードが足りなかったわね。さあ、次はもっとスピードを上げて。スピードは彼の持ち味なんだから」

などと、4Tへの入り方を解説者というよりはコーチに戻ったような口調で言うトレイシー。

トリプルアクセルでパンクすると、

「どうやら日本選手にかかっている重圧が影響しているんじゃないかな」

とロッドがつぶやく。

中盤あたりでは

「なんだか固くなって顔色も冴えないわね」


トレイシー母さんは心配そう。

それから最後までは二人ともほとんど言葉を発さず

演技が終わり

「彼が素質十分、ということは分かったね。ただ、今晩はちょっと届かなかった」


とロッドが言うと

「でも、彼は諦めなかったわ!最後の方のトリプル・ジャンプはとっても質が高かった!」

とトレイシーはちょっと誇らしげに言います。

(まあ、私の思い込みもあるかも知れませんが、どうもそう聞こえるのです。)

そしてスコアが出て、暫定一位。

結弦くんがキスクラからリンク裏へと引き上げてきます。

テレビ局の取材に応えた後、日本や海外のメディアがひしめくミックスゾーンへ。

ここで質問に答える前に織田選手の演技とスコアをチェック。

織田選手よりも自分が上位に残ったということが判明し、初めてちょっと安堵の色が。

奇しくも鈴木選手と同様に3位から(少なくとも)2位へと上昇しました。

それからカナダ人の記者とエレメンツを確認(動画はCBCのクオンさんがツイッターで提供):


次はまたモニターでパトリックの演技をチェック(同じくクオンさんが画像提供)。

この時の彼の真剣なまなざしは日本のテレビカメラにも捉えられていたようですね。

皆さん、ライブで、あるいは動画でご覧になったと聞いています。



演技が終わり、パトリックの優勝が決定します。

この後、主にカナダの記者の質問に答えることになりますが、私がその通訳をさせてもらいました。

パトリックの演技を観た感想は?

「上手い、ですね」


これまでは後半で失速するケースが多かったけど、今日は反対にどんどん、調子が上がって行っているような感じがした。

「とっても嬉しいお話ですね。体力をつけるように頑張ってきたのでその成果が表れたのかと」


というような答えでした。

その他にもトリプルアクセルについては調子が良い悪いという以前の問題で、飛ばなきゃいけないジャンプなんで、ということでした。

そして表彰式へと促されるのですが、この時の姿もCBCのクオンさんがキャッチしています。


ここから結弦くんはセレモニーに備えるため、リンク裏へと戻ります。

そこで

「おめでとう~~」

と走り寄って来た織田くんと大はしゃぎで健闘をたたえ合え、嬉々としてメダルをもらいに行きました。

メダル授与、国歌斉唱。

と、ここでハプニングが!

これは日本で報道されたのか知りませんが、結弦くんは表彰台を降りるととたんに、

メダルが金具から外れて落っこちてしまった

のです。

慌てて拾い、付け直したそうです。

そしてメダリスト全員で会場を周回。

写真撮影。

慌てて記者会見へと向かいます。

会見場に着くと結弦くんが一番乗り。

「こんなところで一着でも仕方ないけど」

と笑いながら席に着きます。


記者会見の様子は一部、スケートカナダのHPで公開されています。

自分では演技に対する妥当なスコアをもらったと思っている、という結弦くんの冷静な分析が印象に残りました。

織田くんとの爽やかなやり取りや、パトリックの演技に対する率直な感想。

そういうものを見てアスリートの潔さが伝わってきました。

周囲が何を言おうと、実際戦っているアスリートにしてみれば正々堂々と、その時どきのありったけの力を出して戦ったあとは、お互い讃え合うことしか思いつかないのではないか、という感想です。

選手の皆さん、お疲れ様でした。

おかげさまで素晴らしい経験をさせていただきました。

以上、スケートカナダのレポートを終わります。