先日MoMAに行った時に見たこの絵について少し語ります。 そう、有名なゴッホの星月夜です。1889年に描かれた作品です。 これはゴッホが耳切事件を起こした後にサン=レミの病院の療養所で描いたものです。亡くなる前の年に描いたものです。これは病院のお部屋から見えた景色でしょうが、彼の心に見えた景色でしょう。ゴーギャンともけんか別れになり、絶望的な気分になっていたからこれからどうやって生きていこうかと悩んでいたのでしょう。目の前にある景色に自分の心を加えて描いたものでしょう。印象派の画家たちはかつてのサロン展で認められていた絵画の題材「歴史」「宗教」「神話」から離れて、「今」「今自分たちの前にあるもの」「自分たちが見ているもの」を描くようになりました。それは当時を生きていた人たちの生活や景色を描くということです。そしてゴッホのような後期印象派(ポスト印象派)はさらに自分の目に見えていない心をテーマにして描くようになっていったのです。
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ゴッホは糸杉をエジプトのオベリスクのようだとも言いました。まっすぐに天に向かって伸びるオベリクスに心を奪われたといいます。ただ糸杉はよく墓地に植えられている植物だったそうで、ちょっと不気味な感じもします。「死」を意味するとも言われていたそうです。この時のゴッホの気持ちは不安がいっぱいで「死」に引かれていきそうだったのかもしれません。そしてうねるような雲は彼の不安な気持ちを表していると言われています。そして左から右へうねるように流れてくるかのように描かれているのは天の川とも言われています。なるほど、そう言われるとそう見えるし、、。ただこの景色は病室から見えた景色だから手前にある教会や家々はゴッホが想像で加えたものだと言われているそうです。宗教家でもあったことから信仰心は濃かったのでしょうかゴッホは教会も描いています。そして家々には暖かい家庭があるとの思いでもあったのでしょうか?
ゴッホ特有のいわゆる厚塗り絵の具の手法にも力強さをたくさん感じます。絵の具が乾くのを待たずにどんどん重ねて塗っていった絵の具の中には外で色をつけていた証拠とも言える木のクズとかほこりなども発見されているそうです。
こうやってこの星月夜を解釈するととっても心が痛い思いに追い込まれるような気がします。11個のお星さまの数にも何か意味があったのでしょうか?それとも本当に11個の星が光っていた夜だったのでしょうか?
もう一度この絵をゆっくりと見に行こうと思います。
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