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2009-06-29 06:35:50

「蒼い炎」追記。

テーマ:原稿

こちらのお話は、最高位戦日本プロ麻雀協会B2リーグ所属の、佐藤聖誠プロのことを書きました。


http://blog.livedoor.jp/hibikim/archives/1215664.html

本人もこちらで紹介してくれています。


彼は本当に真摯なプレイヤーで、ネット麻雀の世界にも詳しい有望な若手です。


http://fukuchi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-49c6.html
7月5日(日)に、福地さんと対談配信するようですね。


http://blog.livedoor.jp/saikoui/archives/51522372.html

現在B2リーグでは2位です。

このまま頑張って欲しいですね。

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2009-06-12 02:01:31

56「蒼い炎」

テーマ:近代麻雀掲載「東大を出たけれど」

麻雀プロとして生きて行くために、彼は上京してきた。
痩躯の、穏やかな若者である。

彼は、温厚さの中に、静かな情熱を湛えていた。

地元で大学に通いながらメンバー業に就いていたが、麻雀への熱意を抑え切れず、故郷を飛び出してプロの門を叩いた。

勿論麻雀プロの生活は、平易な道ではない。

が、彼には一つ支えがあった。
どんな出会いがあったのか――、身寄りのない彼を拾ったのは、東京の雀荘で知り合った女性だった。
彼は彼女の部屋から勤めの店に通い、休日にはプロ活動に専念した。

彼女の存在が、彼の唯一の拠り所になっていた。

彼自身は、極めて真面目な子だった。

平素から細かい牌理を取り上げ、妥協することなく打牌の優劣を考えていた。

よく牌姿を店に持って来ては、打牌選択と変化の方向性を同僚と論じていた。

四萬五萬五萬六萬六萬六萬三筒三筒三筒七筒二索三索四索七索


「この形で七筒七索を切るなら、どちらにしますか?」

「さあ・・場況で安い方の色を残すかな」


至極浅薄な返答をした私に――、やや不満そうな表情で彼は言った。


「この形は、5がくっついた場合の仮聴で、優劣があるんですよ」


四萬五萬六萬六萬六萬三筒三筒三筒五筒七筒二索三索四索



四萬五萬六萬六萬六萬三筒三筒三筒二索三索四索五索七索


「――ほら。共に仮聴を取ったとして、両面以上の変化を見れば、索子の形の方がいいでしょう?」

確かに、筒子の望ましい変化が四筒五筒七筒八筒の4種に対して、索子は一索二索三索四索五索七索八索の7種である。
勿論これは瑣末な問題で、勝敗の要因に、深く関わるものではないかもしれない。

麻雀の本質は、押し引きとか場況とか、もっと大雑把な部分にある。
実際の和了り易さだけ見れば――、私が思慮なく答えたように、場の色の強さで決着することも多いだろう。
それでも彼は、そういった繊細な部分にこだわりを持って、プロの道を究めようとしている。
例えるなら、静かに煌く、蒼い炎を感じさせる子だった。

ところが、支えとしていた彼女の方は、やや奔放な性格だった。

気紛れに男友達に飛び火して遊び歩いては、よく彼を不安にさせていた。
ある日彼は、所属するプロ団体のリーグ戦で大敗を喫する。

挫折を抱えて帰宅した彼が眼にしたのは、彼女の部屋のベッドで眠る、彼女と、見知らぬ男性だった。
ありふれた話といえば、そうかもしれない。

ただ、人一倍繊細な彼が、その光景にどれだけ傷ついたのかは、想像に難くない。
彼は、二人を起こして罵倒することなどなく、静かに荷物をまとめ、部屋を出て行った。

彼を拾ったのも、彼女の気紛れのうちだったのだろう――。

そう悟って、消えかかった蒼い炎を必死に守った。

彼はこの春、念願のリーグ昇級を果たす。

まだまだ麻雀プロとしての道程は始まったばかりだが、周囲の評価も高く、将来を嘱望されている。

繊細であることは、弱みであり、強みだ。

蒼い情熱は確かに、彼を燃やし続けている。

2009-06-05 21:09:57

東大を出たけれど3巻。

テーマ:原稿

というわけで本日発売いたしました。

東大を出たけれど3巻です。

掲載されているお話について簡単に紹介を・・・


「フリテンの店」
今働いている雀荘の近所の飲食店のお話ですね。
私の心配をよそに、現在も元気に営業しております(^-^)


「海底」
知人のメンバー時代の経験をお話にしました。
感謝。


「対処の打牌」
雀荘に長くいる人は、こういう方は何人も見てきたのではないでしょうか。


「アルカイックスマイル」
モデルは知人です。
彼女の体験と日記が元になっています。


「不器用な子」
名前は三木プロのをそのまま拝借しました。
本当に弟から心配して電話がかかってきたそうです。


「出前持ち」
このモデルの方は、事実過労で亡くなってしまいました・・・。
流石に後日談としては悲しすぎるので漫画にはしませんでした。
ご冥福をお祈りいたします。


「会話」
大学時代の麻雀仲間の話です。
類は友をと申しますが、
実際私の周りにはこんな連中ばかりでしたね。


「黙テン」
これが事実上の最終回です。
2巻の最後は敢えて強烈に暗い話で締めたのですが、
3巻は、恋愛を絡めて、読後感はもう少ししんみりとさせようと思いました。


という感じになっています。

まあムダヅモのように爆発的に売れたら再開もあるかもしれませんが、
おそらく厳しいでしょうね・・・

それでも、私の拙いお話にここまでお付き合い頂いた読者の方々には
心から感謝しております。


本当にありがとうございました。


雀荘メンバーの悲哀や葛藤について、
少しでも皆様の共感を得られたら幸いです。

それでは皆様、またどこかでお会いできることを祈っております。

2009-05-22 20:24:57

ごあいさつ。

テーマ:原稿

東風戦メンバー戦記

今日は竹書房で
「東大を出たけれど」3巻
の全体校正をして来ました。

6月5日に発売いたします。

一応6月1日の近代麻雀本誌に単行本の最終話を掲載いたしまして

漫画「東大を出たけれど」はおしまいです。

初めての漫画原作でしたが、こうして3巻まで出させてもらえたのは、
ひとえに読者の皆様、作画の井田ヒロトさん、担当の編集さんのおかげです。

この場を借りて御礼申し上げます。

正直もっと続けられたらそうしたかったのですが、
なかなかうまくいかないものですね・・・

ともあれ、一つの仕事を終えたということで。

これを区切りに、また頑張っていこうと思います。

最後になりましたが、
amebloの皆様、メンバーの仕事や雀荘でのドラマに興味をお持ちでしたら、
単行本の方、お手に取ってご覧いただけたら嬉しいです。
読んだことのある方もそうでない方も、
どうぞよろしくお願いします。

2009-03-15 03:41:50

55「代走」

テーマ:近代麻雀掲載「東大を出たけれど」

十年前、メンバーに就いた最初の日、初めての代走をした。

当時の店長が、新米の私に練習で打たせたのである。
西家で西バッタの聴牌をした。

昔は代走の心得というものがそれなりにあって、鳴くな、打つな、リーチをするな、と言われていた。
緊張に体を強張らせながらダマにしていた。

親が西をツモ切って、私は震える声で和了りを宣言した。


「ロ、ロ、ロンです――」


すると親が顔をしかめ、喚き散らした。


「なんだその言い方は――。ポンロンだな。チョンボ!」


動揺する私を店長は優しく制し、いいよいいよ、と笑って罰符を支払った。


若い私は冤罪にうなだれたが、発声が拙くてトラブルを起こしたのは事実だ。
店長が教えてくれたのは――、代走を頼んだ人間は、どのような結果になろうとも黙するべきだということである。
店長も、自身が代走の難しさを分かっているからこそ、私の負担にならぬよう、軽く流してくれたのだろう。
ただそれを、全ての客が理解してくれるものだろうか?

先日、常連の代走に入ったときのこと。
ドラが中で、序盤に対面がカン七筒を引っ掛けていた。


裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏 七筒横六筒八筒 ドラ中

そして道中、対面が手出しで一萬を切る。


タンヤオを否定する、傷である――。

中以外の役牌は場に枯れていた。

その後、少考して打七索二索をポンして、もう1枚手出しの七索――。


裏裏裏裏裏裏裏 二索二索二索横 七筒横六筒八筒 ドラ中

河はこのようになっている。


一筒北七萬三筒五索

九萬五筒一萬七索白

一索七索



代走の私の手牌はこの形。


二萬三萬七筒八筒四索五索六索六索六索九索九索九索中 ドラ中



対面は、中八索の片和了りバッタで間違いないだろう。

そこへ、私の上家が、八索を河へ放ってきた。


「――!」
同巡私は不要牌を引いてきたが――、ドラの中を切るなら今しかない。
しかし、代走でこの手牌から生牌のドラを手放すこと、それがどのような結果になろうとも、

それを甘受するよう客に強いることが当たり前なのだろうか。

結局私は、中を握り潰して降りた。
流局して開けられた対面の手牌が、予想と寸分違わずとも、むしろそれは悲しい符合でしかなかった。


二萬三萬四萬八索八索中中 二索二索二索横 七筒横六筒八筒 ドラ中


戻ってきた客は、無論何も問うことなくノーテン罰符を支払った。

昨今は、代走にも特に規制を設けない所が多い。

代走の仕掛けや和了りに対して、周囲も寛容になってきた風潮はある。
それでも万人に対し、代走の自由を主張することは難しい。

放銃すれば、頼んだ客も不満だろうし、和了ったとしても他の3人はいい顔をしないものだ。

誰もが店長のように思ってくれるわけもない。


代走の制約は過去の悪しき風習かもしれないが――、

下らない文句を一手に受けないように、出しゃばったことをしないのも一つの方策なのだ。

客の意識を改革するより、その方が安易なのだから。
自嘲気味に言えば――、それも代走の自由じゃないか。
店長僕は、間違っていますか――。

2009-02-23 20:30:40

54「アルカイック・スマイル」

テーマ:近代麻雀掲載「東大を出たけれど」

仕方のないことだが――、店で女の子を何人か雇っていたときは、多少なりとも男女関係のトラブルはあった。
中でも彼女は、その美しい容姿と悪戯っぽい性格のためか、男の噂も尽きなかった。


「そのうち痛い目に遭っちゃえばいいのに」


付き合っている彼氏が変わったりすると、彼女はよく、他の女の子からそんな風になぶられた。
店のメンバーだったり客だったり、確かに彼女もお盛んな方だったかもしれない。
それでも、彼女自身は素直で、奔放に生きているだけの子だったと思う。

誰かを傷つけようとか、自分が得したいとか、そういう歪んだ悪意は持ち合わせていなかった。

ただ周囲の男たちが色めき立って、彼女にまとわりついていただけだ。
彼女は笑顔を絶やさない性質だったし、諍いや揉め事を望む子でもなかった。

「痛い目、ってなんだろうね――」


彼女は私の方を見て、ただ穏やかに笑った。


「強姦とか?あるよ。堕胎?それもある」


普段の笑顔のまま、涼しげに彼女が呟いた。


「適当に麻雀やって、適当に男の子とも遊んで生きてるからね。そりゃあ皺寄せもあるよ――」
 
オーラス、彼女は和了りトップでこの形だった。


二萬二萬三萬五萬七萬八萬八萬八萬二筒三筒四筒中中

河に萬子は一様に安いが、リャンカンを埋める四萬六萬も場に2枚ずつ走っている。
そこへ脇から中が飛び出す。


「――ポン」


彼女が透き通る声を放つ。そして暫しの少考をした。


二萬二萬三萬五萬七萬八萬八萬八萬二筒三筒四筒 中中中(ポン)


三萬でカン六萬に受けるか、打七萬でカン四萬に受けるか。

ただ、共に2枚走っているカンチャンではいずれも厳しい。
三萬なら二萬のポンで三面張へ変化する。

七萬ならツモ二萬かツモ五萬で両面以上になる。どちらで聴牌を取るべきなのか――。
私の心配をよそに、彼女がそのしなやかな指で卓上に滑らせた牌は、五萬であった。


二萬二萬三萬七萬八萬八萬八萬二筒三筒四筒 中中中(ポン)

同卓の男たちは、終始急かされるように強打を繰り返していた。

彼らなら、がつがつと聴牌に固執し、勘よく、選んだカンチャンを引き寄せることもあるかもしれない。
彼女は、独りで穏やかな水面を泳ぐように、ゆったりと聴牌を外したのだ。

そうして上家の叩き切った九萬をチーして、対面の投げた一萬で出和了りをした。
彼女だけ、違う空気の中で麻雀を打っているようだった。

彼女はその後、客の子供を妊娠して、結婚をする。

それからその客は、彼女の金を持ち逃げして行方をくらました。
 
赤ん坊を抱えた彼女と、1回だけセットを打ったことがある。

彼女に悲愴な雰囲気など微塵も無く、以前と同じように暖かな笑みで、赤ん坊をあやしながら牌をつまんでいた。
彼女とその子供の周りだけ――、やはり悠然と、時間が流れているようだった。

2009-02-03 06:06:31

カンチャン待ち麻雀人生相談。

テーマ:仕事

初心者のための麻雀講座
黄金牌を巡る物語

http://www2.odn.ne.jp/~cbm15900/



こちらで福地誠さんの担当されている

カンチャン待ち麻雀人生相談 というページに質問を提供させて頂きました。


福地誠さんは私が昔いた雀荘の客で・・・

東大の先輩でもあり、その店のメンバーの先輩でもありました。


第18夜「親方と福地誠」 でも登場していますね。


福地誠blog


福地さんなくしては今の私はありません。

尊敬する先輩です。

2009-01-26 02:12:57

「鳴き」追記。

テーマ:原稿

こちらで紹介したエリートサラリーマンは、

後に最高位戦所属プロになった浅埜一朗氏です。


今は天鳳プレマッチ に出場されていますね。


この副露技術を駆使して、好勝負を展開していってくれると思います。

2009-01-26 01:58:42

53「鳴き」

テーマ:近代麻雀掲載「東大を出たけれど」

割と私は仕掛けが多い方だと思う。

両面からでも頻繁に鳴くし、時には露骨な一発消しもする。
「両面鳴くは男の恥よ」と、年輩の客に揶揄されることもあった。
特にメンバーとしての麻雀だと、食い散らかすスタイルは忌み嫌われる場合が多いだろう。

東風戦で働くようになって、多少客層も仕掛けに寛容になってきたが――、

門前麻雀が美徳のように讃えられる古い風潮には、いい加減嫌気が差していた。

近頃訪れるようになったそのサラリーマンは、Aさんといった。
平素の落ち着いた物腰にはどことなく自信が満ち溢れ、会社でも精力的な働き手であることは容易に想像がついた。
同志と言っては失礼かもしれないが、Aさんも手数は多い打ち手だった。 


「仕事でもね、じっとしてないで動く方だから。麻雀も鳴きは重要だよ」


私は力強い賛同者を得たような気がして、Aさんの麻雀に興味を持つようになった。

オーラス、親番のAさんは5800を和了ればトップという位置だった。
序盤からAさんはこの形。


三萬四萬二筒三筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒五索赤六索六索 ドラ六索


二萬五萬一筒四筒の平和イーシャンテンである。

四筒からなら仕掛けて5800の聴牌を取れるが、まず門前で片は付くだろう。
ところが中盤を過ぎても、Aさんの手は全く動かない。

他家が着々と手を進める中、それでもAさんはじりじりと好牌を待つしかなかった。
そこへ上家が六筒を切ってきた。


「チー」
間髪入れず、Aさんが七筒八筒を晒し、打二筒とする。


三萬四萬三筒三筒四筒五筒六筒五索赤六索六索  六筒横七筒八筒 ドラ六索

感嘆の一手だった。

この形なら、どこからでも仕掛けて条件を満たす聴牌が組める。

勿論、門前での和了りが不可能なわけではない。ただ聴牌する牌を待ち続けることが愚鈍だとは言わない。
しかし――、より聴牌しやすい形がどちらかは明白だ。

次巡上家からドラの六索を食い取ったAさんが、静かに五索赤を放す。


三萬四萬三筒三筒四筒五筒六筒六索六索六索  六筒横七筒八筒 ドラ六索

和了りは時間の問題だった。

闇雲に面子を作るだけの鳴きと、和了りに向かうための鳴きとの違いは天地の差がある。
私は――、平素の生き方と同じく、怠惰なだけだった。

これからの展望や将来を見据えた行動には億劫で、ただ眼前にある楽な選択を拾って生きてきた。

「座っていれば1億の仕事があるんだけど、自ら動けば3億の仕事がある。やっぱり後者を選んだよ。リスクはあっても、自分で行動したいんだ――」


Aさんは爽やかに仕事の話をした。

無論そこにはエリートサラリーマンとしての嫌味の欠片もなく、懸命に奔走する男の姿勢があった。

夢譚のようなAさんの話を、私は上の空で聞いていた。
私は、生き方も麻雀も軽薄で――、

Aさんに抱きたくもない劣等感が湧き上がるのを、ただ抑えるより仕方なかった。

2009-01-02 12:14:29

52「ひとりの大会」

テーマ:近代麻雀掲載「東大を出たけれど」

恩師の主催する麻雀大会に、彼女と一緒に出ることになっていた。
当時私は日々の雑務に追われていたため、ほとんど彼女のことは構ってやれずにいた。

彼女のために思うように時間を作れなかった、自分なりの対処だった。
麻雀好きの彼女も喜ぶかと、その日だけは一月も前から予定を空けていた。

ところが当日、彼女は大会に現れなかった。携帯も、繋がらない。
麻雀大会というのは、確定している参加者で人数を調整して行われるものだ。

当日突然のキャンセルが出ては、大会の運営自体困難になる。


「お前がちゃんと連れて来ないと駄目だろう?何やってるんだ」


恩師が責めるのも尤もだ。

私は参加者皆に謝罪し、代わりの知り合いを探した。

幸い程なくして手隙の友人が見つかり、遅れながらも大会は開催された。
それにしても、彼女は何をしているのだろうか――。
 
ラス前に、下家が仕掛けを入れていた。


裏裏裏裏裏裏裏 三筒横二筒四筒 發發横發 ドラ發



チーしての最終手出しが、五索である。

下家の河は索子の下が安く、聴牌ならば、待ちは五索の跨ぎかカン八索といったところ。

微差でトップ目の私は、以下の形。


二萬三萬四萬五筒六筒七筒三索三索四索四索五索六索七索七索 ドラ發


このとき脇が場に2枚目となる四索を通していた。

四索が全て見え、下家の本命は、やはりカン八索――。
やや迷ったが、打三索とする。

二萬三萬四萬五筒六筒七筒三索四索四索五索六索七索七索 ドラ發

現物を抜くぐらいなら、この形で和了りにかけよう。

下家の現張りだし、待ちは悪くない。

この半荘をトップで終えれば、優勝も見える。
しかし私の待ちが場に零れないまま、先に八索を掴んでしまう。


二萬三萬四萬五筒六筒七筒三索四索四索五索六索七索七索 ツモ八索ドラ發


ただ、私なりに対処はしていた。

この聴牌形なら、さらに打三索八索を使い切って両面聴牌が組める。


二萬三萬四萬五筒六筒七筒四索四索五索六索七索七索八索 ドラ發


――大会の後日、彼女と会った。


「母親が急に入院しちゃってね――。ずっと病院にいたから」


「そう。ちゃんと電話しなよ」


彼女はごめんごめんと微笑った。


彼女がその日他の男性の部屋にいたことを、知るのはもう少し後の話。

私の受け変えた六索九索は河に放たれず、終盤に脇が八索を打ち込んでしまう。

私の瑣末な対処など、実を結びはしなかった。

大会は結局、平凡な成績で終わった。

自分なりに、最悪の事態を避けるための賢しい工夫を図ったところで、所詮無邪気な自己満足に過ぎない。

大会なんて、彼女にとってはどうでもよかったのだろう。
私は一人大会に出て、周囲に謝罪をし、一所懸命麻雀を打っていた。

その間彼女が他所で情事に及んでいようと、ただそれは抗いようのない事実なだけだ。
今となっては、八索を止めたことも、彼女の嘘も――、取るに足らない、私一人の記憶の澱でしかない。

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