新緑の宇治 | 水谷修・京都府議会議員(宇治・久御山)です。

新緑の宇治

新緑の宇治は、最も素晴らしい時期の宇治と言える。
$おおきに 宇治市議会議員の水谷修です。-宇治橋

この新緑の宇治を見事なまでな表現力で書いた文章がある。
宇治出身のプロレタリア作家ー中西伊之助がかいた小説「あがた祭り」の出だしの文章だ。
昨年も紹介したが、また紹介したい。

ーー小説「あがた祭り」(中西伊之助著)の出だしの一節ーーー

 山城の宇治は、山と水と、千年前の古典の夢の中に息づいてゐるやうな町である。
 たれでも、一度あの宇治の町へはいつて、豊太閤が煎茶の水を掬んだと云う宇治橋のほとりに佇んだものは、一生あの空と、空の下の山と、その山と山との間から迸り出てゐる宇治川の水と、葦の間に立つてゐる千年の古塔と、それから鳳凰堂の鳳凰の姿とを忘れかねるであらう。山城の宇治は、それなりで、一つの美しい盆景であると云つてもいゝ。そして盆景と云ふやうな不自然な感じを與へぬことは、ここに断るまでもない。
 五月になると、宇治は青葉で一ぱいになる。空も、山も、水も、みんな緑青一色に塗りつぶされてしまふ。だが、その單調を破つて鳳凰堂の屋根に翼をひろげてゐる端麗な鳳凰の姿が、濃い黛色に泛きあがつてゐる。色褪せた朱塗の堂の柱には、藤の花がからみつき、ふくらんだ木蓮が、堂後の薄暗い藪蔭に、海老茶色の夢を見ている。
 すると、宇治川の早瀬には、柴舟の間を、若鮎が腹を光らせて走るし、向ふ岸の興聖寺の長い白壁の裾では皐月が眞紅になる。
 頼政の自刄した扇の芝は、草餅を作るよもぎを摘む女の子の姿が、松の間からながめられるし、喜撰山や、兎道稚子の御陵あたりからは、茶摘歌が、眠たそうに漂つて来る。そして青豌豆の實がすつかり熟して、豆飯がうまいころになると、宇治にはあがた祭りが來る。
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